判断と命題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 09:51 UTC 版)
判断とは、何らかの認識可能なこと、すなわち知識の対象である。誰かが実際に何かを知っていれば、その何かは自明である。従って、「雨が降っている」は判断であり、実際に雨が降っていることを知っている人にとって、その言葉は自明である。この場合、その言葉を聞いた人が窓の外を見たり、外に出てみれば、自明となる「証拠」が簡単に得られる。しかし数理論理学では、証拠は直接観測不可能なことが多く、むしろより基本的な自明な判断から導き出される(演繹される)。演繹の過程は証明を構成する。言い換えれば、判断はその証明を知る人にとっては自明となる。 論理における最も重要な判断は「A は真である」という形式となる。この A は任意の「命題」を表す式で置換される。真かどうかの判断には、より基本的な判断「A は命題である」が必須となる。他にも様々な判断が研究されている。例えば、「A は偽である」(論理学)、「A は時刻 t では真である」(時相論理)、「A は真でなければならない」あるいは「A は真でありうる」(様相論理学)、「プログラム M の型は τ である」(プログラミング言語と型理論)、「A は利用可能な資源から達成できる」(線型論理)などである。以下では、「A は命題である」を "A prop"、「A は真である」を "A true" と表す。 判断 "A prop" は、A の妥当な証明の構造を定義し、そこから命題の構造が定義される。このため、このような判断に対する推論規則を「構成規則; formation rules」とも呼ぶ。ここで、A と B という2つの命題があり(すなわち、"A prop" と "B prop" は自明)、それらを結合した A かつ B という命題(形式的に記せば " A ∧ B {\displaystyle A\wedge B} ")を生成するとする。これを推論規則の形式で書くと次のようになる。 A prop B prop A ∧ B prop ∧ F {\displaystyle {\frac {A{\hbox{ prop}}\qquad B{\hbox{ prop}}}{A\wedge B{\hbox{ prop}}}}\ \wedge _{F}} この推論規則は図式的(schematic)である。A と B は任意の式に置き換えることができる。この推論規則の一般形式は次の通り。 J 1 J 2 ⋯ J n J name {\displaystyle {\frac {J_{1}\qquad J_{2}\qquad \cdots \qquad J_{n}}{J}}\ {\hbox{name}}} ここで、それぞれの J i {\displaystyle J_{i}} が判断であり、推論規則名が "name" となる。線の上にある各判断は前提(premises)と呼ばれ、線の下にある判断は結論(conclusions)と呼ばれる。その他の典型的な論理命題として、論理和 ( A ∨ B {\displaystyle A\vee B} )、否定 ( ¬ A {\displaystyle \neg A} )、含意 ( A ⊃ B {\displaystyle A\supset B} ) があり、論理定数として真 ( ⊤ {\displaystyle \top } ) と偽 ( ⊥ {\displaystyle \bot } ) がある。これらの構成規則は次の通りである。 A prop B prop A ∨ B prop ∨ F A prop B prop A ⊃ B prop ⊃ F {\displaystyle {\frac {A{\hbox{ prop}}\qquad B{\hbox{ prop}}}{A\vee B{\hbox{ prop}}}}\ \vee _{F}\qquad {\frac {A{\hbox{ prop}}\qquad B{\hbox{ prop}}}{A\supset B{\hbox{ prop}}}}\ \supset _{F}} ⊤ prop ⊤ F ⊥ prop ⊥ F A prop ¬ A prop ¬ F {\displaystyle {\frac {\hbox{ }}{\top {\hbox{ prop}}}}\ \top _{F}\qquad {\frac {\hbox{ }}{\bot {\hbox{ prop}}}}\ \bot _{F}\qquad {\frac {A{\hbox{ prop}}}{\neg A{\hbox{ prop}}}}\ \neg _{F}}
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