実用化に向けた取り組み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 00:38 UTC 版)
「空気マグネシウム電池」の記事における「実用化に向けた取り組み」の解説
2012年12月11日、東北大学未来科学技術共同研究センター(小濱泰昭ら)と古河電池、産業技術総合研究所などのグループがマグネシウム電池搭載の3輪電気自動車(EV)の走行実験を福島県のいわき市-仙台市間、走行距離は約100キロで行い、平均時速50 - 55キロで走行し完走した。ただ、このときの走行はリチウムイオン電池で行われており、マグネシウム電池はリチウムイオン電池を充電しただけであるとの一部報道もあるが事実は不明である。 2013年12月20日、東京工業大学の矢部孝らのグループが開発したフィルム状のマグネシウムをロール状に巻き、テープレコーダーのような仕掛けで少しずつ送り出して塩水と持続的に反応させ、塩水を交換しなくても長時間使える電池を用いて、この電池を動力とする車の走行試験に成功。従来のマグネシウム電池には大量の塩水を数時間おきに交換する必要があるなどの問題があったが、開発されたフィルム型マグネシウム電池はその部分が解決され、スマホ用充電池として使った場合、「1カ月間は充電せずに使用できる」と発表されている。 2014年2月、古河電池が凸版印刷と共同開発した「非常用マグネシウム空気電池 MgBOX」を東京で開催された「第5回国際二次電池展(スマートエネルギーWeek2014)」に出展し、実際に照明を点灯させるデモを公開。容器に注水するだけで最大5日間動作し、300Whの電力量を取り出すことができる。水は純水だけでなく海水や水道水などでも可能で、必要量は2リットル。5ボルトの出力があり、スマートフォンに直接給電が可能な仕様。 2014年3月、ニコンが東北大学の小濱泰昭らと共同で、同社が開発した直径3mの鏡を利用した、太陽熱によってマグネシウムを還元する実証実験を宮崎県の旧リニア実験線で開始。 2014年6月10日、東工大の矢部孝が会長を務めるベンチャー企業、「エネルギー創成循環」が名刺よりも一回りほど小さなマグネシウムシートを差し込むと電気が発生する小型電池を開発したと発表。シート1枚でスマートフォン約1日分の充電が可能で、近い将来1個1ドル程度で販売する予定。 2014年7月11日、京都大学の内本喜晴らのグループが、電池の電極を浸す液体と新素材のプラス極を開発。マイナス極にマグネシウムを組み合わせ、1キログラムあたり約250ワット時の容量を実現したと英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。高性能のリチウムイオン電池の同約200ワット時を上回り、材料費も約1割に抑えられるという。 2014年7月29日、日本バルカー工業が空気マグネシウム電池の発電能力が3倍になる正極材を開発したと発表。 2014年8月29日、古河電池が凸版印刷と共同開発した水や海水を投入すると発電する大容量の非常用マグネシウム空気電池「マグボックス」の発売を発表。最大電気量は300ワット時で、発電時間は最大5日間。 2015年7月、矢部孝が会長を務めるベンチャー企業「エネルギー創成循環」が、スマートフォン用の「マグネシウム電池」の試作機を公開。 2015年12月10日、古河電池と凸版印刷は体積を1/2にし家庭用に用途を広げた「マグボックススリム」を発売した。 2015年12月18日、矢部孝が中国江蘇省啓東市にマグネシウム電池生産のための会社「啓東市金美新能源有限公司」を設立。近い将来工場を完成させ、スマートフォンやドローン用のマグネシウム電池の大量生産を始めると発表。 2017年1月27日、矢部孝らのグループは、出力100Wから数kWのマグネシウム燃料電池を発表した。1ユニットは5.4kWhで、複数台連結して小型発電機並みの出力を実現した。また、燃料を交換することで、何度でも使用でき、まさに将来、リチウムイオン電池に取って代わる燃料電池自動車も射程内になってきた。
※この「実用化に向けた取り組み」の解説は、「空気マグネシウム電池」の解説の一部です。
「実用化に向けた取り組み」を含む「空気マグネシウム電池」の記事については、「空気マグネシウム電池」の概要を参照ください。
- 実用化に向けた取り組みのページへのリンク