注水
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 06:30 UTC 版)
「ウィンズケール原子炉火災事故」の記事における「注水」の解説
10月11日金曜日の朝、火災は最悪の状態にあり、11トンのウランは光り輝いていた。温度は極端に高くなっており(1つの熱電対は1300℃を記録した)、損傷を負った原子炉周囲の炉心シュラウドは崩壊という深刻な危機に陥った。この危機に直面して、運転員達はついに水を使用することを決めた。水をかけると、溶融した酸化金属が水と接触し、水の分子から酸素を剥ぎ取って遊離した水素が残り、送風された空気と混合して水素爆発を起こし、熱で弱くなっている炉心シュラウドを破裂させる危険があった。 しかし他に選択肢がなかったために、運転員はあえて計画を進めることにした。 約12本の消火ホースが原子炉の燃料供給側まで引き回され、足場のパイプに掛けられた。ノズルの先端を切断し、火災の中心部より約1m上の燃料チャンネルに挿しこんで水を注ぎ込んだ。トゥーイは再び原子炉建屋の屋上に駆け上がって放水を指示し、水圧を増やすにつれ水素が反応する兆候を示さないか点検用のハッチの所で注意深く音を聞いた。しかしながら注水だけでは消火に失敗し、更なる措置を取ることが必要になった。 そこで、トム・トゥーイは自分と消防隊長を除いて原子炉建屋の外に出るように命じ、原子炉を冷却していた送風ファンを止めた。トゥーイはその後何度も屋上まで登り下りし、燃料取出側から立ち上る炎が次第に消えていくのを報告した。 火を観察している間に、彼は燃料取出側を見やすくするために留め金を外していた点検用のハッチが、吸い込まれて早く閉まることに気付いた。これは炎があらゆる所から空気を吸い込もうとしていたためだと彼は報告している。炎は燃焼を続けるために煙突からも空気を吸い込もうとしていたに違いないと彼はインタビューで述べた。 ついに彼は点検用のハッチを開けて、火が次第に消えかけているところを確認することができた。「最初は炎上していたが、炎が減少し、赤い光は消え始めた」と彼は説明し「私は鎮火したことに納得がいくまで何度も建屋の屋上に登って確認した。私は確かに燃料回収側に立っていたんだ。まあ、たぶん」続けて彼は言った「停止した原子炉の炉心をまともに目視すれば、相当の放射線を受けただろう。」 原子炉が完全に冷温になるまで、さらに24時間の放水が続けられた。 1号炉は事故以来、封印されたままで、依然として約15トンのウラン燃料が残っている。残った燃料を取り出そうとすると、放水の時に生成された自然発火性物質の水素化ウランの存在ゆえに再燃する可能性もあると考えられていた。その後の廃炉プロセスの一環として実施された調査では、この可能性は無いとしている。計画では原子炉は2037年よりも前に最終的に廃炉となることはない。
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