実用化と実績
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 03:00 UTC 版)
「アクティブサスペンション」の記事における「実用化と実績」の解説
1983年にロータス・92で初めて実戦に投入されたが、このマシン以後しばらくアクティブサスペンションを使用するチームはなく、ロータス自体もマシン搭載を一度断念した。 その後、1987年にロータス・99Tで再び実戦採用された。また、ウィリアムズがシーズン途中のイタリアGPからFW11Bに搭載した。ロータスのシステムはF1部門ではないロータス・カーズ本体の管理にあり、レースに特化したものではなく、乗用車用に開発された複雑なものだった。一方、ウィリアムズのシステムはロータスのものに比べレース用に特化したシンプルな設計であり、当初は商標の問題から「リアクティブライド」と呼んだ。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}ロータスは、その方式から我々こそが完全なアクティブサスペンションだと言った。[要出典] ロータス方式 ロータスのアクティブサスペンションは当時のコンピューターの演算速度やアクチュエータ能力では、絶え間ない姿勢変化に対応しきれなかった。また、重量増とシステムを駆動することによるエンジンパワーのロスを克服するほどのメリットもなく、走行中油圧がゼロになってマシンが底突きし、コントロール不能に陥るなどの致命的なトラブルも度々発生したため、1年限りで取りやめになった。 しかし、当時ロータスのシステム開発責任者であったピーター・ライトによると、ロータス式アクティブサスペンションが大きな成功を収めなかった理由はシステムの複雑さにあったのではなく、コンベンショナルなサスペンションに合わせて作られたF1タイヤのばね特性やダンピング特性がアクティブサスペンション制御に不向きであったことを挙げている。当時のF1タイヤサプライヤであったグッドイヤーにアクティブサスペンションに合わせた専用タイヤの開発を依頼したが断られてしまったと述懐している。 ウイリアムズ方式 ウイリアムズのシステムの基本は、サーキットの走行ライン上のデコボコや縁石を全て事前に調べ上げ、それをなぞるようなサスペンションの動きをあらかじめプログラミングしておき、決められた場所で決められた通りに動かすだけというものであった。当時はGPSを使った位置検出が出来なかったため、走行距離でコース上の位置を推定した。毎周スタート/フィニッシュラインで推定誤差の累積はリセットされる。コースアウト等で距離と位置の関係がずれてしまった場合に備え、次の周回まで一時的にアクティブ作動をキャンセルすることもできた。 すなわち、「路面は常に変化する」公道ではなく「周回のライン取りが同一ならば挙動は変わらない」というサーキットを走行するレースに特化したものであったのだ。路面入力を検知してから高速演算高速作動でサスペンションを動かすというロータス式の本来のアクティブサスペンションとは全く発想を異にするシンプルかつ開発容易なシステムであり、F1におけるアクティブサスペンション普及の基礎を作った。車高をコーナーとストレートで変化させることで空力抵抗とダウンフォースを両立させるセッティングの幅が広がる可能性はあったが、レギュレーション違反である「可動の空力装置」と見なされる危険が高かったため、燃料積載量や路面凹凸による影響をキャンセルする車高一定維持装置として使用された。 ロータス同様、当初はシステム重量やアクチュエータの信頼性に悩まされたため、1987年限りで一旦採用を取りやめたが、1991年、これらを解決して最終戦で再び投入し、翌1992年にFW14Bで本格採用されると、圧倒的な速さでダブルタイトルを獲得した。 ウィリアムズの成功により、1993年にはほとんどのマシンがウイリアムズ方式をベースにしたアクティブサスペンションやライドハイトコントロール(最低地上高制御)など何らかの姿勢制御装置を採用した。コース上の位置の推定精度を向上するために4輪全ての車輪速を検出する一方、精度悪化の要因となる走行ラインのバラつき、加速時後輪空転や制動時前輪ロックを排除することが必要不可欠であったため、パワーステアリング、トラクションコントロールやアンチロックブレーキも合わせて装備された。但し、当時はこれらをドライバーズ・エイド(運転補助)システム、あるいはタイヤ寿命向上策としての採用と捉える向きが多かった。 また、ドライバーのスイッチ操作であればストレートやコーナーで車高を変化させてもレギュレーション違反では無いという解釈により、1993年にはベネトンチームが四輪操舵システムと共に採用していた。
※この「実用化と実績」の解説は、「アクティブサスペンション」の解説の一部です。
「実用化と実績」を含む「アクティブサスペンション」の記事については、「アクティブサスペンション」の概要を参照ください。
- 実用化と実績のページへのリンク