安居院流の成立とは? わかりやすく解説

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安居院流の成立

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/02/28 03:51 UTC 版)

唱導」の記事における「安居院流の成立」の解説

上述のとおり、唱導技法確立平安末期すなわち院政期文化時代求められ平治の乱惨殺され信西の子天台宗の僧であった澄憲1126年-1203年)は、その名手として知られた。「富楼那尊者再誕」「説法の上手」と称され澄憲は、父同様学識深く、その唱導能弁で、しかも清朗美声よるものだったため、多く人びと惹きつけ、多数聴衆感涙さそったといわれる九条兼実日記玉葉』や軍記物『源平盛衰記』などには、澄憲承安4年1174年)の干魃の際に祈雨果たした効験により勧賞預かったことが記されており、この干魃に際して同様の効験により醍醐寺東寺教王護国寺)の僧も勧賞されている。澄憲勧賞について、当時朝廷内部にはその是非を問う向きもあったが、結果的には、龍神をさえ感応させたとして、唱導読経修法ならんで効験あるものと公認されたのであった澄憲安元3年1177年)に法印叙せられ「澄憲法印」と称せられたが、のちに京都上京安居院延暦寺竹林院里坊)に退去し法体のまま妻帯した。この妻帯世の非難浴びたが、澄憲はみずからの信念を得意の弁舌主張し、「女人不浄」を唱える僧徒らに反駁、もって説教一筋の生活に勤めることを世に示した澄憲唱導は、台密古来法華経主義弥陀本願思想に讃同する浄土信仰によりながら、造寺造仏功徳肯定し諸行往生説いたうえで一向専修阿弥陀如来への帰依説くものであった考えられる浄土宗開祖法然源空聖覚の信仰・宗教活動決定的な影響あたえた澄憲の子の聖覚(1167年-1235年)も「舌端玉を吐く」と称されるほどの唱導の名人で、また、法然高弟としても有名である。説話多用して身振り手振りよく庶民訴え唱導が、浄土門の教線拡張の手段として軌道に乗ったのは、聖覚が法然帰依したことを機縁としている。『選択本願念仏集』において従来伽藍仏教決別し持戒さえも否定してしまった法然は、乱世のなかで動揺するしかない無知文盲民衆こそ最大救済対象唱えそれゆえ称名念仏だけではなく聴くことによって庶民のこころを直接動かし思想形成をはかる唱導意義重視した。こうして説教日常化進み説教自体にも節やリズム付けるという歌謡性が加えられのである法然弟子浄土真宗開祖となった親鸞兄弟子の聖覚を厚く尊敬したひとりであった。親鸞自身、その思想根底に「聞法」「聞即信」をおく宗教家であり、真宗においても唱導はとくに重視された。親鸞関東配流以降、聖覚の著した唯信鈔』を熟読するよう弟子たち求め、自らも註釈書(『唯信鈔文意』)を著述している。『唯信鈔』が法然思想そのまま伝える書として崇敬されたのである親鸞は、民衆の間に布教する技術を聖覚から学んだともいわれている。本願寺第三世の覚如集めた親鸞言行録口伝鈔』にも浄土門思想取り上げて民衆喝采浴びた聖覚のことが記載されている。聖覚は、父澄憲とくらべ民衆にいっそう傾斜し表白体も徐々に形式やわらげ文芸的要素濃くして専修念仏立場鮮明にした。聖覚が安居院住し、「安居院法印」と呼ばれたことから彼の家系安居院流(あぐいんりゅう)として浄土系唱導本宗地位をしめた。 『源氏物語』などによれば澄憲登場以前は、願文諷誦文などを唱導ではなく文章博士など漢文学造詣の深い学者がつくる例が多かったことが知られており、その作例平安中期の『本朝文粋』などに収載されている。これに対し澄憲祈雨効験認められたことを契機として説法一道とすべく「説法道」を提唱し自作した説法詞」の記録とそのテキスト化を推進したであった澄憲著作としては、『源氏表白文』『法滅の記』『唱導鈔』『澄憲作文集』『澄憲作文大体』『澄憲表白集』『言泉集(ごんせんしゅう)』などが知られるこうした作業は聖覚に引き継がれ今日ものこる「安居院唱導」のテキスト説法資料)の伝承始まった平安鎌倉期にあって唱導説教を得意とした僧が澄憲・聖覚以外にも多数存在したことは各種史料で明らかであるが、にもかかわらず、かれらの系統のみが後世絶大な影響あたえたのは、このような事由によっている。なお、文章家唱道者の漢文表現には少なからざる相違のあることも指摘されている。 聖覚の弟子の信承が撰した『法則集』は、安居院唱導ルールブック称すべきものであり、導師の上堂や着座はじまり、香炉持ち方や磬(打楽器一種)の演奏法法会種類応じた語句選び方、発声法儀式の進行次第神分表白願文発願四弘誓願、風誦文教化歌謡)、説法つづいて別願廻向、総廻向、降座。最後に布教)などあらゆる作法記しており、なおかつ唱導心構えについても教授する周到な著作である。

※この「安居院流の成立」の解説は、「唱導」の解説の一部です。
「安居院流の成立」を含む「唱導」の記事については、「唱導」の概要を参照ください。

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