唱導とは? わかりやすく解説

唱導

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/02/28 03:51 UTC 版)

唱導(しょうどう)は、仏法を説いて衆生を導く語りものであり、数ある日本話芸にとって、その源流のひとつでもある[1][2]日本史上では、とくに中世において大きな展開を遂げた[1][2]。唱導はまた「唱道」とも表記し、「演説」「説法」「説教」「法説」「法談」「講義」など様々に呼称される[1][3]。本来的には、唱導ないし説経とは仏教経典を講じ教義を説くことであって、それ自体は文学でも芸能でもなかったが、文字の読み書きのできない庶民への教化という契機から音韻抑揚をともなうようになったものである[4]。それはまた、比喩因縁など文学方面の関心を強めることにもつながり、これを「唱導文学」と称する[4]




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注釈

  1. ^ メロディーや抑揚をともないつつ教義や理念を語って伝道したり、を讃え、聖典を読誦したりという取り組みは、キリスト教イスラーム教ヒンドゥー教など世界の主要宗教でも広くに認められる。
  2. ^ 「祇夜(偈頌)」は仏教の教説を韻文にした部分であり、「伽陀」は韻文として独立させたものである。釈(2011)p.10
  3. ^ 『枕草子』第三十三段「説経の講師は」に、「説経の講師は顔よき。講師の顔をつとまもらへたるこそ、その説くことのたふとさもおぼゆれ」(説経唱導の講師は顔のよい人(が良い)。講師の顔をじっとみつめ続けていてこそ、その説くところもより尊く感じられるものである)とある。
  4. ^ 法然門下で唱導を能くした僧としては、ほかに遵西住蓮らがいる。遵西・住蓮が建永元年(1206年)に鹿ケ谷草庵でひらいた念仏会は、後鳥羽上皇による念仏停止と法然・親鸞の流罪をふくむ「承元の法難」の原因のひとつとなった。
  5. ^ 『法然上人行状画図』に、法然自身のことばとして「聖覚法印わが心をしれり」の文が記されている。
  6. ^ 安東大隆は、唱道者の漢文が日本語風で漢文としては破格の部分があるものの、勢いや迫力のうえで文章道に通じた学者のものを上まわることを指摘している。安東(1981)pp.14-15
  7. ^ 中巻末巻の涅槃講表白に「正安4年」(1302年)の記載があるため、脱稿は永仁以後とも考えられている。『普通唱導集』はまた、鎌倉時代におこなわれていた古式の将棋(「大将棋」)が登場する最初の史料でもあり、猿楽能の起源などについても示唆の多い史料となっている。
  8. ^ 折口信夫は、旧来の保護者であった公家の没落が著しい時期に、唱導文学は「漂遊者の文学」「巡游伶人の文学」の側面を色濃く有しながら「仏教文学」また「宣教の為の方便の文学」として広範囲に興起したと説明している(折口 1995aおよび1995b)
  9. ^ 『澄憲表白集』に収載された一節に、

    壮人老少不定なりとも皆別れぬ。
    老ゆけば生者も必ず滅して残らず。
    諸行無常。是生滅法。
    祇園頗梨の鐘、耳に盈てり。

    があり、その内容や調子が『平家物語』に近似するという見解が複数の学者により示されている。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 釈(2011)pp.9-14
  2. ^ a b 吉川(1990)p.40
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 五来(1988)pp.484-485
  4. ^ a b 荒木「解説・解題」(1973)pp.313-317
  5. ^ a b c d e f g 黒田(1979)pp.238-242
  6. ^ a b c d e f g h i 大島 薫. “日本において編纂された説法資料に関する考察 (PDF)”. 2014年2月3日閲覧。(2006年4月20日、韓国仏教学会発表資料)
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o ディーバー仁美. “交感の宗教性 - 節談説教について”. 2014年2月3日閲覧。(大正大学修士論文)
  8. ^ 櫛田(1952)pp.188-195
  9. ^ 関山(1973)pp.56-57
  10. ^ 聖典の試訳:『唯信鈔文意』研究会”. 親鸞仏教センター. 2014年2月3日閲覧。
  11. ^ 野間・沖浦(1985)p.253
  12. ^ a b 安東(1981)pp.12-20
  13. ^ 折口信夫 (1995a). “唱導文学 - 序説として”. 折口信夫全集 4. 中央公論社. 2014年2月3日閲覧。
  14. ^ 折口信夫 (1995b). “唱導文芸序説”. 折口信夫全集 4. 中央公論社. 2014年2月3日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g 入矢(1988)p.485


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