問答
★1a.無言の問答。
『今昔物語集』巻4-25 提婆菩薩が龍樹菩薩を訪れた時、龍樹菩薩は小箱に水を入れて与え、提婆菩薩は水に針を入れて返した。龍樹菩薩は、「我が智恵は小箱の水のごとくなれども、汝が万里の智恵の景をこの小箱に浮かべよ」と求めたのである。それに対して提婆菩薩は、「我が針ほどの小智をもって、汝が大海のごとき智恵の底を究めたい」と答えたのだった〔*『宇治拾遺物語』巻12-2に類話〕。
*『古事記』上巻の、トヨタマビメの侍女が器に水を入れて与え、ホヲリが水に玉をはき入れて返す場面に似ている→〔玉(珠)〕8。
『無門関』(慧開)6「世尊拈花」 世尊が霊鷲山で説法した時、1本の花を持って弟子たちに示した。弟子たちは皆黙っていたが、迦葉(かしょう)尊者だけが破顔微笑した。世尊は「我が無相微妙の法を、言葉や文字以外の伝え方で迦葉にゆだねよう」と言った。
★1b.身振り手振りによる問答。
『カター・サリット・サーガラ』「『ブリハット・カター』因縁譚」 ガンジス河の真中に5本の指を握った手があるのを、贋ナンダ王(*→〔火葬〕3)が見る。宰相ヴァラルチが2本の指を示すと、手は消えた。宰相は、「あの手は、『5人が協力すれば何事も成就する』と言おうとしたのです。私は、『2人でも心を1つにすれば不可能はない』ことを示しました」と、贋ナンダ王に説明した。
『こんにゃく問答』(落語) こんにゃく屋が寺の和尚になり代わり、無言のまま手ぶりで禅僧と問答をする。禅僧が仏教の哲理を問う手ぶりをするのを、こんにゃく屋はこんにゃくの大きさと値段を聞かれたものと誤解し、「こんなに大きい」とか、「3百文だ」とかの手ぶりをする。禅僧はまた、その手ぶりが深遠な哲理を示すもの、と勝手に解釈して恐れ入り退散する。
『ナスレッディン・ホジャ物語』「ホジャの問答」 異国の博士が、杖で地面に円を描き、大地が丸いことを示す。それを見たホジャは、「こいつはパイを食べたがっているな。それなら2人で分けよう」と考え、円を2つに区切る。博士は「これは赤道と南北両半球をあらわしたのだ」と解釈し、感心する。博士は、それ以後のホジャの身振り手振りも、すべて深い学識のあらわれと思い込み、感服して帰って行く。
『パンタグリュエル物語』第二之書(ラブレー)第18章~20章 イギリスの学者トーマストが、パンタグリュエルと智恵比べをすべくパリを訪れ、「人語の及ばぬ難問を討論するゆえ、身振り手振りのみで問答をしよう」と挑む。パンタグリュエルに代わり、弟子パニュルジュが受けて立ち、さまざまな身振り手振りの応酬が続く。見物人たちは訳がわからないが、やがてトーマストは降参し、パニュルジュの智恵をたたえて帰る。
★2.智恵くらべの問答。
『列王紀』上・第10章 シェバ(=シバ)の女王はソロモン王の名声を聞き、難問をもってソロモンを試みようと訪れた。シェバの女王のすべての問いにソロモンは答え、説明できないことは1つもなかった〔*問答の具体的な内容は記されていない。『コーラン』27「蟻」22~45では、スライマーン(=ソロモン)が、サバア(=シェバ)の女王を館へ案内する。館は深い淵のように見えたので、女王は思わず裾をまくり上げて両脚を露出した。スライマーンは、「これは水晶を張りつめた館なのじゃ」と説明した〕。
『西行と小僧』(昔話) 旅の西行が、わらび取りの子供たちに、「子供らよ、わらび(=火)を取りて手を焼くな」と声をかけて、からかった。すると1人の子供が、「法師さん、檜(ひのき)笠着て頭(ず)を焼くな」と言い返した(長野県小県郡)。
『列子』「湯問」第5 孔子が東へ旅し、2人の小児の論争を聞く。1人が「太陽は日の出の時大きく、真昼には小さいから、朝、地上に近い」と言い、もう1人が「朝は涼しく昼は暑いから、太陽は昼、地上に近い」と言う。孔子はどちらが正しいか判断できず、小児たちに笑われる。
★4.生者と死者との問答。
『雨月物語』巻之1「白峯」 西行が、讃岐白峯の崇徳院の御陵に一夜詣でる。崇徳院の死霊が現れ、「我は生前より魔道に志し、平治の乱も我がなした業である。まもなく天下に大乱を起こすであろう」と告げる。西行は仁・義にもとづく王道論を説いて、崇徳院の誤りを正そうとし、2人は激しく論を闘わせる。やがて崇徳院の姿は消え、夜が明ける。
問答と同じ種類の言葉
品詞の分類
名詞およびサ変動詞(質問) | 反問 推問 問答 押問答 押し問答 |
名詞およびサ変動詞(問う) | 設問 責問 問答 聘問 糺問 |
Weblioに収録されているすべての辞書から問答を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
全ての辞書から問答 を検索
- >> 「問答」を含む用語の索引
- 問答のページへのリンク