歌問答
★1.Aが歌の上の句または下の句を提示し、Bがそれに合う句をつける。
『撰集抄』巻5-11 西行が旅の途中、江口の里(=大阪市東淀川区あたり)を通りかかった。時雨に遭って雨宿りしていると、その家の主である尼が、雨漏りを防ごうと、板を持って走り回っていた。西行は、「賤(しづ)がふせ屋を 葺(ふ)きぞわづらふ」と口ずさむ。尼は板を投げ捨てて、「月はもれ 時雨たまれと 思ふには(=月の光は屋根の隙間から入って来てほしい、雨は漏らないでほしい、と思うので、葺き方が難しいのです)」と後を付けた〔*『雨月』(能)に類話〕。
『箕被(みかづき)』(狂言) 連歌に夢中で家に寄りつかぬ夫に、妻が愛想をつかし、暇(いとま)のしるしに箕1つをもらい、頭にかぶって出て行く。夫が「いまだ見ぬ 二十日の宵の みかづき(箕被・三日月)は」と詠みかけると、妻は「今宵ぞ出づる み(箕・身)こそつらけれ」と返す。驚いた夫は、「それほど上手なら今後は他出せず家にいて、夫婦で連歌を楽しもう」と、妻を呼び戻す。
★2.死者と生者の歌問答。
『古事談』巻2-28 奥州八十嶋の野中で、小野小町の髑髏が「秋風の 吹くにつけても 穴目穴目」と、和歌の上の句を詠じた。在原業平が小町を憐れみ、「小野とはいはじ 薄(すすき)生ひけり」と、下の句をつけた。
『耳袋』巻之4「霊獣も其才不足事」 稚児が、和歌の上の句を得つつ、下の句を案じ得ずに死んだ。その執心が残り、夜の宮城野に、「月は露 露は草葉に 宿借りて」と詠ずる声がする。師僧が「それこそこれよ 宮城野の原」と下の句をつけて鉄如意を投げつけると、以後怪事は止んだ。
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