各回の推移
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/27 05:10 UTC 版)
「荒川仁人 対 オマール・フィゲロア戦」の記事における「各回の推移」の解説
1回 フィゲロアが長いリーチを生かし、より重いボディーブロー、アッパーカットで猛攻を仕掛ける。荒川はフックを浴び、足元がふらつき気味になる。フィゲロアは初回からパワー全開で、手数104のうち、60発をヒットさせた。荒川は手数78のうち17発しか当てることができなかった。 2回 序盤、荒川がフィゲロアをロープに押し込んでいく。フィゲロアの右フックが頭の上をかすめ、バランスを崩したところに連打で追撃されると、荒川は膝を落としてダウンを喫した。しかし荒川は前進を止めず、フィゲロアのパンチの威力を軽減するために距離を詰め、自らのパンチを出し続けた。フィゲロアはスイッチしながらボディーを狙った。荒川はラウンドを戦い終えたが、早い回でのKO決着が予想される展開となった。 ショウタイム『チャンピオンシップ・ボクシング』非公式採点表採点者:アル・バーンスタイン 採点者:ポール・マリナッジ荒川対フィゲロア荒川対フィゲロアRSTS回TSRSRSTS回TSRS9 9 110 10 9 9 110 10 9 18 220 10 8 17 220 10 9 27 330 10 10 27 329 9 10 37 439 9 10 37 438 9 9 46 549 10 9 46 548 10 8 54 659 10 8 54 658 10 10 64 768 9 10 64 767 9 9 73 878 10 9 73 877 10 計111–116計計111–115計減点:WBCルールでは荒川にマイナス1点(3回) 結果:フィゲロアの判定勝ち 8回までの各ラウンドと12回終了時点のデータ。バーンスタイン、マリナッジともに、9回から12回までの合計は38–38で両者イーブン。 3回 荒川はボディー攻撃で自分の距離を保ちながら、この回もフィゲロアをロープに押し込んでいく。荒川の連打を受けてフィゲロアが猛反撃。フィゲロアはクリーンヒットを受ける度に攻撃に拍車をかけていく。フィゲロアは上を狙い、ラウンド終盤は攻勢。偶然のバッティングでフィゲロアが鼻梁をカットし、負傷しなかった方から減点するというWBCルールにより荒川は1ポイントを失った。米国のスペイン語局ウニビシオンの公式ウェブサイトは、荒川は神風の権化のようだったと譬えている。 4回 両者ともに持っている限りのあらゆるパンチを出し、フィゲロアは再び荒川にダメージを与えたが、荒川も気勢を保っている。荒川は顔を血で染めたフィゲロアをロープに詰めたが、両者ともに下がらず打ち合い、観客の歓声を受けた。フィゲロアの手数66に対し、荒川は110発のパンチを放ち、BWAA(全米ボクシング記者協会)のマイケル・ウッズは「傑出したラウンド」と記している。 5回 荒川は執拗にこつこつとパンチを重ね、フィゲロアも有効なパンチで応戦。荒川は鋭い右を被弾したが半歩も下がることはなく、アクションに満ちた、拮抗したラウンドとなった。フィゲロアは流血したまま攻撃を続けた。荒川もプレッシャーをかけ続け、試合後半でのノックアウトを狙う。フィゲロアはボディーブローや左右フックを返すが、荒川は疲労を蓄積させながらも決定打は許さない。 6回 ラウンド終盤、フィゲロアは右フックからの連打で荒川をぐらつかせる。ロープがあったためにマットに触れることはなかったが、荒川はダウンカウントをとられた。BWAAのジェイク・ドノバンはこのタイミングでのダウン裁定を妥当なものと見ておらず、荒川が8秒を与えられたことでフィゲロアはKO決着のベストショットを逸したと書いている。荒川は体勢を立て直すとひたすら前進し、反撃を続けた。強打の威力はなかったが、荒川はクリーンヒットではフィゲロアを上回った。 7回 フィゲロアは鼻梁から血を流しながら左にスイッチした後、またオーソドックススタイルに戻る。荒川は失速気味であったが手を出し続け、絶え間ない動きでフィゲロアの勢いを削いでいく。荒川は意識がはっきりしている限り後退することなく、桁外れのスタミナを見せた。 8回 荒川は目の腫れで失速。フィゲロアの攻撃にも勢いはない。フィゲロアが2、3度右を当て、再び荒川をふらつかせた。荒川は時には猛攻に耐えつつ、自分の打撃に集中。再び接近戦に活路を見出すが、レフェリーストップとなる可能性もあった。上述のウニビシオンは、荒川の左目は腫れ上がり、フィゲロアのパンチを受け続けてまだ立っていることが奇跡的なほどであったが、エネルギーよりも気力でラウンドを終えたとレポートしている。荒川はローブローで2度目の警告を受けた。終盤、テレビ中継で解説を務めていた現役ボクサーのポール・マリナッジは、試合を止めるべきかどうかという疑問を口にし、視聴者も同じ疑問を抱き始めていた。 9回 荒川はいくらか回復を見せたが、最後にクリーンヒットをもらった。両者とも足を止めて打ち合い、動いているのは手だけという状態であった。この辺りまで、フィゲロアはそれほど疲れた様子は見せなかった。荒川は手を休めないが、腫れ上がった左目に強打を受ける度にチャンスを減らしていく。その腫れのために、フィゲロアの右は感覚でよける以外に察知できなくなっていた。 10回 荒川は塞がった視界で前に出続け、この回も接近戦となった。9回終了後、フィゲロアはトレーナーのホエル・ディアスに両手がおかしいと訴え、それ以降は被弾が多くなった。荒川は感覚的にフィゲロアの打撃を回避していた。 11回 荒川が連打で反撃。フィゲロアはまだ両手を使っていたが、ロープに詰まって被弾。両者がパンチを交錯させると観衆は轟音のようなどよめきをあげた。フィゲロアは失速してロープに腰を落とし、カウンターを狙っている様子だったが、その間、多数のパンチを受けた。上述のドノバンは、荒川の闘争本能はフィゲロアの手の負傷を察知したに違いない、荒川はどのラウンドにも厳しい被弾を重ねた後で力を振り絞ってフィゲロアにダメージを与え、流れを変えてみせたと書いている。このラウンドは荒川が支配。8回以降は荒川の安全のために試合停止を求める声が多かったが、それは最後の3ラウンドで様々なソーシャルメディアを通じて称賛に変わっていった。 12回 両者ともに燃料切れの状態だったが打撃戦は続いた。数ラウンド前から試合続行を危ぶまれていた荒川がフィゲロアをロープに追い込む。ロープ際で攻防を繰り広げる両者を見てテレビ解説のマウロ・レナロはまるで初回のようだと言い、最後に次のように叫んで試合終了までの解説を終えた。 [In a sport that has produced many memorable battles, here in San Antonio,] you can add another chapter to boxing's beautiful and brutal legacy. Omar Figueroa, Nihito Arakawa... thank you!([記憶に残る数多の戦いを生み出してきた競技において、ここサンアントニオで、]ボクシングの美しく残酷な遺産に新しい1章が加わることになる。オマール・フィゲロア、荒川仁人、……ありがとう!) — Mauro Ranallo、Countdown Live: Canelo vs. Angulo - SHOWTIME Boxing これと同時に試合終了のゴングが鳴ると、それまでに立ち上がっていた観客席のみならず、報道関係者席も総立ちとなって両者に拍手喝采を送った。
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