信号現示の種類と現示方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 09:45 UTC 版)
「日本の鉄道信号」の記事における「信号現示の種類と現示方式」の解説
日本の鉄道においては現示方式により、1閉塞区間を運転条件とする「二位式」と2閉塞区間以上を運転条件とする「三位式」の2つの種類があり、二位式の場合は「緑色」と「赤色」の二色を基本的な現示とし、三位式は「緑色」と「橙黄(とうおう)色」と「赤色」の三色を基本的な現示とした色灯式信号機を採用している。道路信号に似ているように見えるが、点灯の順番が逆(緑→赤→黄→緑)であったり、点灯している色の組み合わせ(信号現示)によってその先の閉塞区間の制限速度を表示することが道路上の信号との最大の違いである。速度制限標識などで、その区間の信号現示の制限速度以下に制限速度が定められている場合は低い方に従う。 色灯式信号機は灯球が2つ以上の多灯形が主流だが、かつては単灯形も存在していた。単灯形は「サーチライト信号機」と呼ばれ、赤・黄・緑のSA形と赤・緑のSB形が存在した。色ガラスを変えることによって現示を変えた。現在は廃止されている。 多灯形は2 - 6つの電球(=二-六灯式)を使用している。電球には、フィラメントとLEDの2種類がある。前者の方は、フィラメントが二重に取付けられており、それぞれ寿命は5000時間と9000時間である。鉄道用の信号機や標識に用いられるレンズは電球との組み合わせで光学的に確認距離の増大を図れ、さらに透過する色光は色度が厳重に規定されたものを使用する。さらに、信号機に用いられるレンズは焦点距離を短くして光度を増大させ、太陽光線の入射による疑似点灯を防止するために外側に有色、内側に無色のレンズを組み合わせて使用されている。後者の方は、LEDの寿命は設計上約10万時間で、消費電力量は1/3となり、電球式より長くメンテナンスの手間や費用の観点からメリットが大きい。ただし、降雪地帯では電球式と比べ熱の発生が小さいため、レンズに電流を流すことで雪が付着して信号機が見えなくなることを防ぐ。1個のユニット(電球)あたりLED素子が228個(黄・赤)または144個(緑)取り付けられており、入力電圧の適正化を目的にトランスがセットされている。 二灯式には橙黄と赤の組み合わせもあり、これは進行信号を現示する必要がない路線終着駅手前の場内信号機や待避線進入用の場内信号機など、注意信号の制限速度以下の減速を必要とする場所に設置されている。また、養老鉄道養老線など、路線最高速度が注意信号の制限速度 (65 km/h) とほぼ同等の場合、閉塞信号として利用されることもある。灯球にLEDを使った四灯式には、五灯式と同じ5現示を現示できるものも存在する。一部の進行信号・減速信号を現示しない信号機では緑色灯が、また、注意信号を現示しない三灯式(本来二灯式を使用するが、二灯式の信号を用いない線区がある)では橙黄色が省略されることがある。その場合、空きの場所には灯球1個分のスペースが設けられている。二灯を同時に点灯させる現示の際には視認性を確保するため、灯火間を二灯以上離すのが原則となっており、高速進行信号は灯球を三灯離している。 信号機には現示を背景から分離し見やすくするため、後ろに背板を取り付けており、その形状は場内・出発・閉塞信号機は丸形、#従属信号機である遠方・通過信号機は角形である。ただし信号が複数設置され干渉する場合や、背板を設置すると建築限界を支障する場合、干渉・支障がある部分を切り取った形状となっている背板を設置する。さらに信号機が日光を背にする場所においては信号機とは別に背板の後ろに当たるところに遮光用の構造物を設置するが、逆に地下線やトンネル内など、背景が暗く、そもそも背板の必要性が無い場所においては背板が省略され灯具のみが設置される。また、豪雪地帯では灯具に雪避けの囲いが設けられることがある。 各信号現示の制限速度は鉄道事業者や路線により異なる。 現示名概要高速進行現示 高速進行現示(GG現示)は緑色灯を2灯現示し、130 km/hを超える速度での進行を指示する。京成成田スカイアクセス線で採用されており、「スカイライナー」で現示する。1997年に開通した北越急行ほくほく線で初めて導入されたが、当初は130 km/hをこえ140 km/hまでであった。その後、1998年12月から150 km/hに、2002年3月からは160 km/hに引き上げられたが、2015年3月の北陸新幹線開業に伴い特急「はくたか」が廃止され、ほくほく線における高速進行現示は無くなった。一方、京成成田スカイアクセス線では2010年から採用されている。これは大手私鉄としては初めてかつ唯一の採用である。 高速信号現示には六灯式と五灯式があり、3灯の間隔を空けて緑2つを点灯させる「高速進行」が制限なし(路線最高速度160 km/h)、緑1つの「進行」が制限130 km/hを示す。 北越急行では自動列車停止装置であるATS-P形のトランスポンダ車上子、京成は列車選別装置の車上子からの信号を地上側で受信(北越急行では3閉塞手前)して、130 km/h以上での進行が可能な場合に進行現示から高速進行現示に切り替えている。 進行現示 進行現示(G現示)は緑色灯を1灯現示し、その現示箇所を越えて規定の最高速度で進行できる。ほくほく線と京成成田スカイアクセス線では130km/h以下での進行を指示する。車内信号機を使用して運転する場合は、信号現示の速度以下で進行することができる。 抑速現示 G現示の下位、YG現示の上位に設けられる。抑速現示(YGF現示)はフリッカー信号とも言われ、緑色灯と橙黄色灯の減速信号の現示を1分間に80回明滅させて、105 km/h以下への減速を指示する。1995年に京浜急行電鉄京急本線・品川駅 - 横浜駅間の最高速度を105 km/hから120 km/hに引き上げる際、閉塞区間を信号機の移設・増設、閉塞数を変更せずにブレーキ距離を確保するために導入された。これにより、抑速現示による速度制限を受けている状態では従前の進行現示と同等の距離で停止でき、最高速度の向上が可能となった。また、2010年開業の京成成田スカイアクセス線にも導入されたが、これに先立ち、全区間共用区間となる北総鉄道北総線にも2009年に先行導入されている。 減速現示 減速現示(YG現示)は、G現示の下位、Y現示の上位に当たる現示で、緑色灯と橙黄色灯を現示し、次の信号機に注意信号または警戒信号の現示があることを予期する。国鉄では65 km/hまたは75 km/hでの進行を指示していた。 注意現示 注意現示(Y現示)は橙黄色を1灯点灯させ、次の信号機に停止信号もしくは警戒信号の現示または停止位置があることを予期する。国鉄では45 km/hまたは55 km/hでの進行を指示していた。 警戒現示 警戒現示(YY現示)は橙黄色を2灯現示し、次の信号機に停止信号の現示または停止位置があることおよび、閉塞区間が短く過走余裕距離が短いなど停止信号の冒進が許されない場合に現示する。進行を指示する速度は25 km/hであるが、速度照査機能を有する列車は停止できる範囲でこれに代わる速度を現示することができる。 停止現示 停止現示(R現示)は赤色灯を1灯現示し、その信号機を超えて進行してはならないことを指示する。ただし、信号機故障などにより運転指令からの指示があれば停止現示を超えて運転することができる。(無閉塞運転を参照)また、信号機に併設の誘導信号機や入換信号機の現示があれば、停止現示を超えて運転することができる。 5灯式の高速進行現示(北越急行ほくほく線) 6灯式の高速進行現示(京成成田スカイアクセス線) 抑速信号現示
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