世界的な評価
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当時の日本人男子最速記録である6戦目での世界王座獲得、世界最速8戦目での飛び級での2階級制覇達成といった記録もさることながら、日本人世界王者は『日本国内でしか戦わない』がゆえに海外での知名度・評価が低かったが、YouTubeなどの動画サイトの登場で井上の試合動画がアップロードされて世界中の人々が視聴できるようになったことで、世界のボクシング関係者からも高く評価されるようになった。 特に2014年12月30日に行われたオマール・ナルバエス戦は、例年アメリカのボクシング界は年末は不活発のため年末の日本での世界戦を待たずして早々と年間MVPを選出してしまう専門家が多かったが、2014年に関しては「今年の年間賞の制定は年末まで待つべき」と指摘する関係者が米国内にも存在するなど開催前から注目されており、フライ級世界王座を16連続防衛、WBO世界スーパーフライ級王座を11連続防衛中のナルバエスを一方的に打ちのめしてKO勝ちで2階級制覇を達成し、その試合が動画サイトにアップロードされたことで、井上はプロ転向後はまだ一度も海外で試合をしたことがないにも関わらず世界のボクシング関係者とファンからの知名度と評価が急上昇した。 マニー・パッキャオ、フロイド・メイウェザー・ジュニア、ゲンナジー・ゴロフキンといった世界の超スーパースター達を抑えて井上尚弥が、ボクシング・シーン・ドットコム、セコンド・アウト・ドットコム、ファイトニュース・ドットコムといった世界的な大手ボクシング専門ニュースサイトからも2014年の年間MVPに日本人史上初めて選出された。 所属する大橋ジムの大橋秀行会長は「井上尚弥にはラスベガス進出、5階級制覇、具志堅用高さんの日本記録を超える世界王座14連続防衛、メジャー4団体統一、ボクサー初の国民栄誉賞を取らせる」と公言している。 世界4階級制覇王者でリング誌を含む世界中のボクシング専門サイトでパウンド・フォー・パウンド最強王者に選出されていたローマン・ゴンサレスとの夢の頂上対決が期待されていた。井上本人もプロデビュー当初から「ロマゴンと対戦したい」という発言を繰り返し続けており、「アジア人のマニー・パッキャオがアメリカや世界のスーパースターになれたのは同階級にファン・マヌエル・マルケス、マルコ・アントニオ・バレラ、エリック・モラレスら既に北米でスターだったライバルとの対戦があったから。僕にとってのロマゴンもそういう存在だと思う」と語っていた。井上は減量苦もあってフライ級に落とすことは出来ないため、「やるならスーパーフライ級で。ロマゴンと対戦できるのであれば2017年内まではスーパーフライ級に留まる。それ以上は待てないので2018年からはバンタム級以上に階級を上げる」と度々コメントしており、2016年9月にゴンサレスがスーパーフライ級に上げて4階級制覇を達成したことで一時は対戦が現実味を帯びていた。しかしその後、ゴンサレスがキャリア初黒星を喫して王座陥落し、井上自身もバンタム級に転級したため、ゴンサレスとの対戦については事実上立ち消えとなった。 中量級~重量級が主体で軽量級は不人気なアメリカにおいては、1990年代の軽量級の絶対王者リカルド・ロペスでさえも、その強さゆえにライバル不在なこともあり、前座に甘んじることが多かったが、ゴンサレスが本格的にアメリカ進出を始めるのと時を同じくして井上もナルバエスに勝って名前を知られるようになったことで、日本だけでなくアメリカを含む世界のファンや関係者からも対戦が期待されていた。 バンタム級への転向が実現した場合には山中慎介(帝拳、元WBC世界バンタム級王者)との対決も期待されていたものの、山中は2017年8月15日にルイス・ネリ(メキシコ)に敗れて王座を陥落してしまった。但し、井上自身は「山中さんの今後(の去就)次第」としながらも、「ネリに挑戦することも考えの中にある」として対戦意欲があることを明らかにしていた。しかし一方で、2019年11月23日(日本時間で24日)に米ラスベガスで行われる予定であったエマヌエル・ロドリゲスとのWBC世界バンタム級王座挑戦者決定戦の前日計量で、ネリが2018年3月1日に山中との再戦以来となる2度目の体重超過により試合がキャンセルとなったことに対して自身のTwitterで「ネリどうしようもねぇな、、また計量失格。こんな奴にゴタゴタ言われたくない。ボクシング界から追放でいい」とつづっている 。 バンタム級転向後、ジェイミー・マクドネル、ファン・カルロス・パヤノ、エマヌエル・ロドリゲスといった世界王者経験者3人を合計わずか441秒で倒しており、初回1分52秒で敗れたマクドネルは「最初の一撃で衝撃を受けた。彼のパワーは本物。」、初回1分10秒でキャリア初のKO負けを喫したパヤノは「全てにおいて圧倒的に異次元。倒せる人間はいない。」、井上が出場したWBSS主催者のカッレ・ザウアーラントは「イノウエがパウンド・フォー・パウンド(PFP)のキング。」「最も世界を震撼させたボクサー。」、リング誌編集長ダグ・フィッシャーは「PFP最強のパンチャー。」と評した。 ボクシング界で最も権威あるアメリカの雑誌「ザ・リング」において、2019年2月号、9月号で日本人選手で初めて表紙に起用された。 WBSS優勝後、井上と複数年契約した米興行大手トップランクCEOボブ・アラムは「ボクシング史上最高の偉人」と絶賛。 「ファイトマネーは戦うモチベーションの1つを占めている。」と語っている。軽量級としては破格のファイトマネーを稼ぐボクサーであり、WBSS準決勝では、基本給と勝利給を合わせて約80万ドル(約8768万円)、WBSS決勝では主催者のカッレ・ザウアーラントによると100万ドル(約1億800万円)以上の優勝賞金を獲得している。また、ラスベガスデビュー戦のジェイソン・モロニー戦、続く2戦目のマイケル・ダスマリナス戦、日本国内で行われたアラン・ディパエン戦ともファイトマネーが100万ドルを超え、ドネアとの2戦目では約2億1000万円となった。 トップランク社と契約したことにより、海外メディアでは「ハイテク(精密機械)」の異名を持ち、パウンド・フォー・パウンド最強と評される世界最速の3階級制覇王者ワシル・ロマチェンコとのPFPトップ同士の世紀の一戦も期待されている。これは井上がWBSS優勝後、階級をスーパーバンタム級に転向する可能性があること、ロマチェンコがスーパーフェザー級が適正と公言していることから注目が集まっている。過去に「ゆくゆくは行けてもフェザー級」と語った井上だが、自身がゲスト解説を務めたエロール・スペンス・ジュニア vs ミゲル・アンヘル・ガルシア戦で、ガルシアがスペンスに大差判定負けした際、「階級の壁がある。適正階級がいかに大事かよく分かる。ガルシアが普通の選手になっていた。あれじゃ階級を上げても意味がない」と述べ、WBSS優勝後の記者会見でも「しばらくはバンタムに留まる。いずれ適正と思えば階級は上げる。(ロマチェンコ戦についての質問に)自分のパフォーマンスが発揮出来る階級であればやりたいが、適正階級でなければ望んでいない。」と階級上げについてはあくまで適正と判断した際変更する意向を示した。 2021年8月, 米スポーツ専門メディア『Bleacher Report』は「2000年以降の最強のボクサー10傑」と銘打ったボクシングの格付け企画を実施。そのなかで、井上尚弥 を選出した。 元ヘビー級三団体統一王者のマイク・タイソンは、自身のポッドキャスト番組で井上について「彼はとんでもない奴だ。お前はヤバい奴を見ることになるぞ。彼はマニー・パッキャオ以上だ。それか同じくらい良い」「彼は凶悪だ。モンスターなんだ。簡単にやっつける」と語っている。
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