ルドルフの数とは? わかりやすく解説

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円周率

(ルドルフの数 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/17 17:54 UTC 版)

円周率(えんしゅうりつ、: Pi: Kreiszahl: 圓周率)とは、直径に対する円周の長さの比率のことをいい[1]数学定数の一つである。通常、円周率はギリシア文字である π[注 1]で表される。円の直径から円周の長さや円の面積を求めるときに用いる[1]。また、数学をはじめ、物理学工学といった科学の様々な理論の計算式にも出現し、最も重要な数学定数とも言われる[5]

円周率は無理数であり、超越数でもある。

円周率の計算において功績のあったルドルフ・ファン・クーレンに因み、ルドルフ数とも呼ばれる。ルドルフは小数点以下35桁まで計算した[6]。小数点以下35桁までの値は次の通りである。

ギリシャ文字の π は円周率に代表される。

基礎

表記と呼び方

円周率を表すギリシア文字 π は、ギリシア語でいずれも周辺・円周・周を意味する περίμετρος[7][8](ペリメトロス)あるいは περιφέρεια[9](ペリペレイア)の頭文字から取られた[注 2]。文字 πウィリアム・オートレッド1631年に著した著書において半円周の長さを表す文字として用い、アイザック・バローは論文において半径 R の円周の長さとして用いた[10]ウィリアム・ジョーンズ (1706) やレオンハルト・オイラーらにより(現代と同じく)円周の直径に対する比率を表す記号として用いられ、それが広まった[7][10]日本では「パイ」と発音する[8]

π を指す言葉には、日本・中国・韓国における「円周率(圓周率)」、ドイツの「Kreiszahl」(Kreis は円(周)、Zahl は数の意)の他、それを計算した人物の名前を取った「アルキメデス数」(: Archimedes' constant)、「ルドルフ数」(: Ludolph's constant: Ludolphsche Zahl)などがある。一般にドイツ語を除くヨーロッパの諸言語には「円周率」に対応する単語はない[8][11]

なお、「π」の字体は、表示環境によってはキリル文字п に近い π などと表示されることがある。また、ギリシャ文字「π」は、円周率とは無関係に、素数計数関数や、基本群ホモトピー群、ある種の写像(射影など)を表すのに用いられることもある。

定義

ユークリッド平面上において、全ての円は相似なので、円周 C と直径 d の比率 C/d は一定 (π) である。
直径 1 の円の周長は π

平面幾何学において、円周率 π は、周長の直径に対する比率として定義される。すなわち、円の周長を C, 直径を d としたとき、

円に内接する正多角形による π の近似
円に内接・外接する正多角形による π の近似。アルキメデスによる計算。

古代

円周の直径に対する比率は円の大きさに依らず一定であり、それは 3 より少し大きい[注 3]ことは古代エジプトバビロニアインドギリシア幾何学者たちにはすでに知られていた。また、古代インドやギリシアの数学者たちの間では半径 r の円板の面積が πr2 であることも知られていた。さらに、アルキメデスは正96角形を用いて半径 rの体積が 4/3πr3 であることや、この球の表面積4πr2(その球の大円による切り口の面積の4倍)であることを導き出した。

円周率を小数で最初に記述したのは小数を発明した中国である。263年に魏の劉徽が3072角形を使用し3.14159と計算し、5世紀に祖沖之が十尺もの直径の円を使用して3.1415926<π<3.1415927 と求め、以後1000年間、全世界でこれ以上正確な計算はなされなかった。祖の計算が正確であったことは、1300年頃に趙友欽が16384辺の内接多角形により確かめた[13]

近代まで

14世紀インド数学者天文学者であるサンガマグラーマのマーダヴァは次の π級数表示を見いだしている(ライプニッツの公式):

円周率の小数部分の判明した桁数と時期の関係。このグラフの縦目盛りは対数スケールである。新たなアルゴリズムが開発され、コンピュータが利用できるようになると、判明した桁数は劇的に増加した。

20世紀以降、計算機の発達により、計算された円周率の桁数は飛躍的に増大した。1949年に、電子計算機ENIACを使い72時間かけて、円周率は2037桁まで計算された[33]。その後の数十年間、様々な計算機科学者や計算科学者など、あるいはコンピュータのアマチュアによって計算は進められ、1973年には100万桁を超えた。この進歩は、スーパーコンピュータの開発だけによるものではなく、効率の良いアルゴリズムが考案されたためである。そのうちの最も重要な発見の一つとして、1960年代高速フーリエ変換がある。これにより、多倍長の演算が高速に実行できるようになった。

2022年6月9日に、Googleの技術者、岩尾エマはるかGoogle Cloudで、チュドノフスキー級数を使い、157日23時間かけて100兆桁を計算したと発表[34]

2025年4月2日に、Linus Media Groupは円周率300兆桁を7ヶ月半掛けて計算した[35][36]

性質

無理性

π は無理数であるため、循環しない無限小数である。

π無理数である。つまり、2つの整数の商で表すことはできず、小数展開は循環しない。このことは1761年ヨハン・ハインリヒ・ランベルトが証明したが、厳密性に欠けた部分があった。その部分は1806年ルジャンドルによって補われた。

したがって、円周率のコンピュータによる計算や暗唱十進法表示での小数部分の各数字 (0, 1, …, 9) の出現頻度は、人々の興味の対象となる。

π は超越数であるため、コンパスと目盛の無い定規を有限回用いて円と等面積の正方形を作図することは不可能である。

超越性

さらに、π超越数である。つまり、有理数係数の代数方程式の解にはならない。これは1882年フェルディナント・フォン・リンデマンによって証明された(リンデマンの定理)。これより、整数から四則演算冪根をとる操作だけを有限回組み合わせてもけっして π の値は得られないことが分かる。

π が超越数であることから直ちに、古代ギリシアの三大作図問題の内の一つである「円積問題」(与えられた長さを半径とする円と等積の正方形を目盛の無い定規とコンパスを「有限回」用いて作図すること)は不可能なことが結論される。

ランダム性

2022年10月の時点で、π は小数点以下100兆桁まで計算されている[34]。そして、分かっている限りでは 0 から 9 までの数字がランダムに現れているようには見えるが、それが乱数列といえるかどうかははっきりとは分かっていない。たとえば π正規数であるかどうかも分かっていない。正規数であれば π10進表示において、各桁を順に取り出して得られる数列[37]

3, 1, 4, 1, 5, 9, 2, 6, 5, 3, 5, …

には、0 から 9 が均等に現れるはずだが分かっておらず、それどころか、0 から 9 がそれぞれ無数に現れるのかどうかすら分かっていない。もし仮に正規数でないとすれば、乱数列でもないということになる。

5兆桁までの数字の出現回数は以下の通りである。全てほぼ等しく(約0.0005%の違いに収まる)、最も多いのは 8 で、最も少ないのは 6 である。

0:4999億9897万6328回
1:4999億9996万6055回
2:5000億0070万5108回
3:5000億0015万1332回
4:5000億0026万8680回
5:4999億9949万4448回
6:4999億9893万6471回
7:5000億0000万4756回
8:5000億0121万8003回
9:5000億0027万8819回

連分数

分母を整数と分数の和で表すことを続けていった表示を連分数という。「整数」を最大にしていくと、分子を全て 1 にできる:

円の面積は、1辺が半径の正方形(灰色)の面積の π倍である。
長半径 a, 短半径 b の楕円の面積は πab に等しい。



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