キャンプハンセン移転案
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「普天間基地移設問題」の記事における「キャンプハンセン移転案」の解説
嘉手納統合案、グアム移転案、海上ヘリポート案のいずれにも否定的な軍事評論家の小川和久が主張した。小川は一時期鳩山ブレーンとも報じられ、自ら鳩山に提案したという。小川によれば最初に普天間移設が問題化した1996年頃から考えていた案であり、当時東海大学が発行した研究誌で計画概要を知ることが出来る。2005年には『地域政策』誌での対談などで披露し、2010年には『この1冊ですべてがわかる 普天間問題』として持論を出版している。 いずれも内容は中部訓練区域(CTA:Central Training Area)の西側をなすキャンプ・ハンセン内に普天間の機体を収容するための飛行場を新設するもの。県内に仮の駐機場所を設定し、一時的な退避を行えば普天間からの移動は1ヶ月で済むと主張している。なお、小川案では最終的に嘉手納飛行場も軍民共用化を目指すため、滑走路は3600mなどとも述べられている。小川はキャンプ・シュワブ沖の埋立にも反対しているが、理由として守屋が中央公論2010年1月号に寄稿した記事などを援用し、地元建設業者の利権と海の環境問題を挙げている。しかし、日米両国ともこの案を具体的な検討対象とはしていない。 なお、小川は自民党政権時代に国会に参考人招致され、安全保障関係のいくつかの委員会や防衛大学校での講義も行ったことがある。小川は県内移設自体は必要条件とみなし、日米安保に依存しない場合国防費が数倍に跳ね上がる旨を主張している。 なお、キャンプ・ハンセン移転案および類似した案として、嘉手納弾薬庫地区への移転案はSACO時代に検討対象となっているが当該項で記述した経緯によって棄却された。 なお、この時問題になったこととして、森林伐採による赤土流出や水資源の問題がある。例えば、嘉手納弾薬庫地区の場合、嘉手納弾薬庫用地の一部を返還して建設された倉敷ダムがあり、1995年に完成したばかりであった。その後中部にはやや北側に「沖縄東部河川総合開発事業」として多目的ダムが2箇所建設され、建設に当って演習場の返還がなされている。漢那ダムについては水面は米軍との共同使用地域である旨協定された。『ダム技術』誌などによれば両ダム自体の建設に当って環境への配慮が盛り込まれている。 倉敷ダム:水面積4.7平方キロメートル(470ha)。 山城ダム:集水面積2.7平方キロメートル(270ha)。 漢那ダム:集水面積7.6平方キロメートル(760ha)。漢那福地川に計画。予備調査1973年開始。1993年完成。2002年83.9haを日本に返還。 億首ダム:集水面積14.6平方キロメートル(1460ha)。億首川に計画(金武ダムの再開発)。1993年計画に追加。2009年着工予定。 また、漢那ダム北東、キャンプ・ハンセンとキャン・シュワブの境界付近一帯には宜野座ダム、宜野座大川ダム、鍋川ダム、潟原ダムなどが点在し、中部演習区域の多くがこれらの集水域となっている。 一方金武(億首)ダム北西、キャンプ・ハンセン中部、金武町内には喜瀬武原ダムがある。反対に、本島西部側に流れる川に建設されたものとして、恩納村内、キャンプ・ハンセン西北部には戸袋川ダム、恩納ダムがある。小川の案である嘉手納並の延長の滑走路の建設はこの水源地帯にて実施する。 なお、アメリカ陸軍工兵隊の出先機関が利水目的で建設を行ったのに始まり、本土復帰後最も重要な社会資本として、30年以上に渡ってダム建設が行われ続けた。本土のような大河川が無い沖縄の水事情は元来悪く、1980年代に至っても渇水により給水制限に悩まされる例があったものの、2000年代に入って漸く断水だけは回避できる状態に達した。しかし、沖縄県は観光客の増加による振興策を掲げ、また出生率の高さから沖縄県では2030年代まで人口の増加基調が続くと予測されている。海水淡水化施設の整備も行われたが2006年の統計でも水需要の1%程度を賄う造水量でしかない。そのため、建設を担当する内閣府沖縄総合事務局は、沖縄では本土以上に水資源の確保に努力しなければならず、その手段は専らダムであると考えている旨が『ダム技術』誌にて述べられている。沖縄県企業局の考え方も内閣府と軌を一にしている。 日本の環境アセスメントの泰斗として知られる島津康男は、本案について戦略的環境アセスメントの制度上からは興味を示しているものの、森林地帯であるキャンプ・ハンセンへの移設というアイデアについては「著者には海上の埋立てを回避し、すべてを陸上にという前提があるが、自然環境保全・地元建設業の参入可能性を想定してか、不明のところあり」と述べ、嘉手納の軍民共用化についても那覇空港が拡張工事を行っていることを挙げて整合性を問題視している。
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