うんコレ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 00:38 UTC 版)
『うんコレ』は、日本うんこ学会の開発によるスマートフォン用のモバイルアプリケーション(ゲームアプリ)である。ユーザーに対して大腸癌に関心を持たせ、健康のバロメーターとしての大便に人々の意識を向けるために開発された。石井が医療監修を務め、総監修は木野瀬友人、プロデューサーは前田地生、声優の下和田ヒロキらが音響演出を担当、全スタッフが完全ボランティアで開発している。キャッチコピーは「うんこで救える命がある」。 大腸癌予防のために排便記録をつけることが重要だが、実際に本学会の会員で連日記録をつけて見たところ、トイレから出た後に改めて記録をするのは結構な手間がかかり、続けづらいことが判明した。一方、会員の多くがトイレの中でスマートフォンをいじっており、特にゲームをしている人が多かった。そこでゲームに排便記録を組合わせるという発想から生まれたのが、この『うんコレ』である。 内容は、トイレの向こう側にあるとされる世界「ウントピア」の平和を守るという設定で、腸内の悪玉菌や悪性腫瘍を敵に見立て、画面に表示されている敵をタップすることで攻撃するゲームである。ゲームとしては「クッキークリッカー」に通じるものである。 特徴は、ゲームを有利に進めるために、アイテム課金を要するゲームが多いところが、本ゲームでは課金の代りに、自分の排便結果をゲームに報告することで、敵キャラクターとの戦闘に有利になるアイテムを獲得できることにある。ゲームを有利に進めたいというモチベーションが、次第に自分の排便記録にすり替わり、やがて排便記録が残っていくという仕組みである。さらにゲーム内のキャラクターが、日々の排便の状態を質問し、プレイヤーの返答次第で大腸癌の可能性がある場合には、検診や受診を勧める仕組みになっている。40歳以上が検診を推奨されている年齢であるため、40歳未満かどうかによってこの警告の仕様が異なる。一般的なソーシャルゲームと同様に、毎日続けることで多くのボーナスを得るといった要素もある。 ゲームプレイヤーの味方となるキャラクターは大腸菌(腸内細菌)を中心とした細菌をモチーフとしており、この細菌も「萌え」を取り入れた美少女キャラクターとして擬人化されている。その理由は、石井が当初は大便自体をデフォルメしたキャラクターを考案していたところ、木野瀬や前田らメンバーが、大便そのものでは審査が通らない可能性が高い上、そもそもユーザーも大便を毎日見たいわけがないと指摘し、美少女キャラクターを提案したことによる。擬人化のデザインも、たとえば腸内細菌のバクテロイデス オレイシプレヌスをモチーフとしたキャラクター「B.オレイシプレヌス」はオリーブ・オイルの主成分であるオレイン酸を腸内で作ることからオリーブ・オイルやオリーブの実をあしらったデザインであったり、乳酸菌の「ラクトバチルス・ブレビス(en)」をモチーフとした「L.ブレビス」は植物性なので花がモチーフにしたりと、腸内細菌についての勉強もできるよう工夫されている。 また、ゲーム内の一場面が虚血性大腸炎の隠喩であったり、キャラクターの名前の由来が大腸癌の手術方法であるハルトマン手術であったりと、ゲームを遊びながらアイテムやキャラクターの由来を調べることで医療情報に触れ合えるよう、エンターテイメント第一でありながら、さり気ない形で医療の要素を散りばめられている。 初めて公開されたのは、2014年に開催されたインディーズゲーム展示イベント「デジゲー博2014」である。ここでプロトタイプによるデモンストレーションが披露され、大便や腸内細菌を擬人化してキャラクターとしたゲームとして、インターネット上で大いに話題を集めた。翌2015年の「闘会議2015」では、新キャラクターの追加やシステムの改良を行なったベータ版を出展。スクウェア・エニックスやセガといった数々の大手ゲーム製作会社が参加する中、一際異彩を放つとともに、多くのウェブメディアや雑誌に取り上げられ、注目を浴びた。次いで「闘会議2016」「闘会議2017」「闘会議2018」と、同イベントで4年連続で出展された。 同2016年と翌2017年には、「東京ゲームショウ」のブースでも出展された。2016年時には、同イベントで掲示していた広告がTwitter上で拡散されたことで大きな話題となった。本学会の背景に大腸癌検診の普及があることを知り、真摯な取組を応援する声も聞かれた。また前述の木野瀬友人によれば、2017年時は同イベントに出展したこと、雑誌に取材されたことなどで、大腸癌検診を知った人、興味を持った人が増えたと実感したという。 2017年には、日本国内最大のゲーム開発者向け技術交流会であるCEDECでも紹介された。同年、福岡市と福岡地域戦略推進協議会による福岡市実証実験フルサポート事業に採択されたことで、福岡市民が実際に「うんコレ」を使用し、消化器疾患に対する意識や行動がどのように変化するか検証する実験が行われた。 2018年には、正式リリースを目指してクラウドファンディングが実施されており、同年3月16日にその目標額を達成した。 2019年11月の「デジゲー博」にブースを出展し、最新バージョンを展示した。 2020年11月15日よりiOS / Android用アプリゲームとして正式サービスを開始した。
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