『随筆集』で書かれたテーマ
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「フランシス・ベーコン (哲学者)」の記事における「『随筆集』で書かれたテーマ」の解説
1597年に出版した『随筆集』では10のエッセイを書き込み、1612年と1625年に増補されている(それぞれエッセイを38、58に増やしている)。「学問について」のエッセイで始まるこの本はテーマを分析、実体験に基づいたと思われる内容が盛り込まれ、「学問について」は学問の役立つ物として喜び、飾り、能力があると書き、喜びに利用するのは私生活か閑居している時、飾りに利用するのに談話を例えにしている記述は政治生活から距離を置き、知の世界で遊ぼうとするベーコンの態度を反映していると思われる。一方、学問に多くの時間をかけ過ぎるのは怠慢とも書き、学問を能力を活かす場合は事務の判断力と処理に役立つと主張、学問の勉強が心の問題に対する処方であるとも記し、数学・哲学などを提案して自分の心に向いた勉強を勧めている。増補でエッセイの順番に変更があったのか、第三版では「学問について」は50番目に位置付けられている。 「友情について」では友情が知性にもたらす効果を記し、自分の考えを友人に話すことで整理出来たり言葉で言い表すことがどんな風に見えるかが分かると書いている。同時に、自分の喜びや悲しみを友人に打ち明けることで、共感に伴う心の喜びを倍加させたり悲しみが薄まる効果も書いている。トビー・マシューとの友情はベーコンにとって大切な物であり、『学問の進歩』をマシューへ送り相談と著作の批評を求め、自分が独善に陥らないように注意している。マシューとベーコンの友情は晩年にも続き、失脚して不遇のベーコンは辛い境遇をマシューへ打ち明け心の癒しにしていた。 他にも「反乱と騒動について」は分析と防止策を講じ、政府の柱(宗教・司法・忠言・財政)が揺さぶられることが反乱の原因になると分析(宗教の改新・課税・法律や風習の変更・一般的迫害など)、貿易や土地開墾など対策を施して貧困を防いだり、徒党を作らせず分裂させる手段を反乱防止策として書いている。「偉大な地位について」は高い地位を望む正当な理由として良いことを実現する力の獲得を挙げ、知と力の結合を求め続けていた一方、地位について「権威に伴う悪徳」として遅延・腐敗・粗暴・容易を取り上げ、それぞれの対策も記している(約束をきちんと守ることや確実な仕事の処理・直接間接問わず物の受け取りに注意しはっきりと周りに宣言する・叱責は重々しい物であっても傷つける物であってはならない・いい加減な依怙贔屓はしない)。「貴族階級について」は主権(国王)と民衆の間に立つ階級として捉え、民衆の思い上がりを受け止める国王の藩屏であるべきと論じ、「宗教の統一について」は人間社会の絆として重要視しながら異端と分裂を警戒、持論の中庸・寛容による説得を提案、「富について」では土地改良や勤勉・公平な取引・慎重な投機を勧めている。 だが金銭感覚の無い浪費家だったことが災いし、「出費について」では出費を身分に応じた分か収入の半分に抑える、出費が多い場合は他の支出を節約する、借金返済は無理せず少しずつ経費を切り詰めて返すなどの提案を書いたが、富は使うための物であるとも書いているベーコンが借金に苦しむ羽目になったのは父の死がきっかけになったが、贅沢・派手好きで多くの使用人を抱えたため浪費と借金が絶えなかった。1621年の失脚も借金がもたらしたと推定され、ベーコンが使用人を監督せず彼等を通して裁判当事者から贈物を受け取り、それについて詳しい確認を怠ったことが、議会から収賄罪で訴えられる結果となった。死後の遺産7000ポンドに対して2万ポンドの借金があったという。 造園にこだわりを持っていて、1625年に増補されたエッセイの「庭園について」では、王侯にふさわしい庭園として1月ごとに楽しめるそれぞれの旬の美しい花や果実の木をそろえることや、植物の香りが漂う甘美さを重要視して書いている。庭園にも細かい注文を記し芝生・小道・庭園の区切り方、庭園を囲むアーチの生垣の設定、噴水を2種類に分けて説明、その他様々な種類の植物や提案を書き連ねた庭園案を構想した。一方、エッセイで駄目出しもあり、飾り結び式花壇を取るに足らないと一蹴している。 エッセイで書いた構想をゴランベリー・ハウスで手掛け、1608年に作成した草案には庭園を正方形で作り、外周は小道と水路を通して外側に植物の木々を植える、庭園中央は湖を作りその中に7つの人工島を浮かべ、橋を渡した中央の島に館を建て、外周に浮かべる6つの島はそれぞれ違う特徴を持たせ、岩だけの島や花一面の島、香り漂う島などを構想していた。1656年にジョン・オーブリーがゴランベリー・ハウスを訪れた時を書き記し、一部は剥がれ落ちていたが、デザインに優れた歩道と湖の底に敷き詰めたベーコン厳選の色石、および人工島の館に目を奪われたことを記録している。
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