(-)-イソフルランとは? わかりやすく解説

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(R)‐(−)‐イソフルラン

分子式C3H2ClF5O
その他の名称(R)-(-)-イソフルラン、(R)-(-)-Isoflurane(-)-イソフルラン、(R)-2-Chloro-2-(difluoromethoxy)-1,1,1-trifluoroethane、(R)-イソフルラン、(R)-Isoflurane
体系名:(R)-2-クロロ-2-(ジフルオロメトキシ)-1,1,1-トリフルオロエタン


(S)‐(+)‐イソフルラン

分子式C3H2ClF5O
その他の名称(S)-(+)-イソフルラン、(S)-(+)-Isoflurane、(+)-イソフルラン、(S)-2-Chloro-2-(difluoromethoxy)-1,1,1-trifluoroethane、(S)-イソフルラン、(S)-Isoflurane
体系名:(S)-2-クロロ-2-(ジフルオロメトキシ)-1,1,1-トリフルオロエタン


イソフルラン

分子式C3H2ClF5O
その他の名称イソフルラン、化合物469IsofluraneCompound 469、2-Chloro-2-(difluoromethoxy)-1,1,1-trifluoroethane、(1-Chloro-2,2,2-trifluoroethyl) difluoromethyl ether、(1-Chloro-2,2,2-trifluoroethyl)difluoromethyl ether、1-Chloro-2,2,2-trifluoroethyl(difluoromethyl) ether、イソフルレン、ホラン、ホレン、Aerrane、Forane、Forene、3-Chloro-1,1,4,4,4-pentafluoro-2-oxabutane、Difluoromethyl(1-chloro-2,2,2-trifluoroethyl) ether、Isoflurene、エスカイン、Escain、フォーレン、1-Chloro-2,2,2-trifluoroethyldifluoromethyl ether
体系名:1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチル(ジフルオロメチル)エーテル、2-クロロ-2-(ジフルオロメトキシ)-1,1,1-トリフルオロエタン、(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチル)ジフルオロメチルエーテル、3-クロロ-1,1,4,4,4-ペンタフルオロ-2-オキサブタン、ジフルオロメチル(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル


イソフルラン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/22 10:20 UTC 版)

イソフルラン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Forane
データベースID
CAS番号
26675-46-7 
ATCコード N01AB06 (WHO)
PubChem CID: 3763
IUPHAR/BPS 2505
DrugBank DB00753 
ChemSpider 3631 
UNII CYS9AKD70P 
KEGG D00545  
ChEBI CHEBI:6015 
ChEMBL CHEMBL1256 
化学的データ
化学式 C3H2ClF5O
分子量 184.5 g/mol
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イソフルラン(Isoflurane)とはハロゲン化エーテル系の吸入麻酔薬の一つである。商品名フォーレン。常温では不燃性の液体であり、エンフルラン構造異性体である。光学活性中心を1つ持つが、光学分割はせずにラセミ体で用いられる。中枢神経の抑制、呼吸抑制、血圧低下、筋弛緩などの薬理作用があり、痙攣誘発作用は持たない。長時間投与でも肝毒性腎毒性を示さないため、肝疾患や腎疾患を持つ動物に対しても使用することができる[1][2]。ヒトでは肝・胆道疾患や腎機能障害を持つ患者には慎重投与とされている[3]。脳保護作用が強い。過去に悪性高熱を示した動物あるいは悪性高熱を好発する動物での使用は禁忌である[1][2]。吸入麻酔薬としてのカラーコードは、紫。製品容器や専用気化器には紫のラベルが貼られている。

ヒトではセボフルランデスフルラン、静脈注射薬のプロポフォールに取って代わられて来ているが、獣医学領域では今も頻用されている。

イソフルランは常に空気および/または純酸素と混合して用いられる。亜酸化窒素と併用される事も多い。その物性から、ハロタンに較べて効果発現が速い[4]が、呼吸器系への刺激性があるのでその利点は相殺される。通常チオペンタールまたはプロポフォールでの麻酔導入後の維持に用いられる。室温では液体であるが容易に蒸発する。

WHO必須医薬品モデル・リストに収載されている[5]

副作用

メトキシフルランにおける腎障害やハロタンによる肝障害といった特徴的な副作用は知られていないとされる[6]:1が、幼弱動物実験モデルにおいては、ケタミンとイソフルランを使用すると著明な神経変性が発生するとの懸念がある。神経変性のリスクは、ミダゾラム等のベンゾジアゼピン亜酸化窒素と併用すると上昇する[7]

重大な副作用に、悪性高熱(0.1%未満)、呼吸抑制(0.1~5%未満)、ショック、アナフィラキシー、肝炎、肝機能障害、QT延長、心室頻拍(torsades de pointesを含む)、心室細動完全房室ブロック、心停止 がある(頻度未記載は頻度不明)。

0.1~5%未満に、不整脈(徐脈、頻脈を含む)、血圧変動、ST低下、心電図異常、肝機能異常、AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、悪心、嘔吐、振戦、頭痛が発生する。

高齢者への投与

イソフルラン投与と術後認知機能障害英語版(POCD)の関連性が、特に高齢者において懸念されている[8]。ヒト培養細胞をイソフルランに曝露すると、アポトーシスの誘導とアミロイドβの蓄積と凝集が認められ、POCDの原因の一部となり得ると思われたが、全体像は不明である。研究はin vitro で実施されており、これらの知見を麻酔の安全性向上に結び付けるためには、さらなるin vivo の実験が必要である[9]。動物実験では、イソフルランで麻酔したアルツハイマーモデルマウスではアミロイド病変が増加し、認知機能障害を惹起することが示された[10]。マウスの記憶障害は、GABAAα5サブユニットの逆作動薬であるL-655,708英語版の前投与で防止可能であった[11]。ヒトのPOCDを防止できるか否かは不明である。

最新鋭の核磁気共鳴分光法を応用した生物物理学的研究で、吸入麻酔薬がアミロイドβの3つのアミノ酸残基(G29、A30、I31)と相互作用し、凝集を促進することが判明した。この領域は『一般に使用される吸入麻酔薬の一部が脳に損傷を与え、アルツハイマー病の発生を加速させる』可能性があるので重要であるとされる[12]

作用機序

他の多くの麻酔薬同様、作用機序は明確には判っていない[13]。イソフルランは疼痛閾値を上昇させ(鎮痛効果)、骨格筋を弛緩させる。ニューロンレベルにおいて、イソフルランは抑制性の受容体であるGABAA受容体を活性化し、興奮性の受容体であるニコチン性アセチルコリン受容体を抑制する一方で、NMDA型グルタミン酸受容体に対する作用はあまりないことが知られている[14]。イソフルランは、活性化カリウムチャネルでの伝導を阻害する。また細胞膜の流動性を増加させる事で、カルシウムATPアーゼ英語版を活性化する。これは、ATP合成酵素およびNADHデヒドロゲナーゼのDサブユニットに結合する。

特性

特性
1気圧での沸点 48.5 ℃
最小肺胞内濃度(MAC) 1.15
20℃における蒸気圧 31.7 kPa(238 mmHg
血液・ガス分配係数 1.4
油・ガス分配係数 98

環境負荷

イソフルランの大気中での平均寿命は3.2年である。その地球温暖化係数は510であり、年間排出量上限は880tである[15]

出典

  1. ^ a b Donald C. Plumb、佐藤宏他監訳『プラム 動物用医薬品ハンドブック 原書第3版』ワハ、2003年。 
  2. ^ a b 伊藤勝昭他『新獣医薬理学 第二版』近代出版、2004年。ISBN 4874021018 
  3. ^ フォーレン吸入麻酔液 添付文書” (2014年8月). 2016年5月28日閲覧。[リンク切れ]
  4. ^ Niedermeyer, Ernst; Silva, F. H. Lopes da (2005). Electroencephalography: Basic Principles, Clinical Applications, and Related Fields. Lippincott Williams & Wilkins. p. 1156. ISBN 978-0-7817-5126-1. https://books.google.co.jp/books?id=tndqYGPHQdEC&pg=PA1156&redir_esc=y&hl=ja 
  5. ^ WHO Model List of EssentialMedicines”. World Health Organization. p. 6 (October 2013). 22 April 2014閲覧。
  6. ^ フォーレン吸入麻酔液 インタビューフォーム” (PDF) (2013年10月). 2016年5月28日閲覧。
  7. ^ Mellon, RD.; Simone, AF.; Rappaport, BA. (Mar 2007). “Use of anesthetic agents in neonates and young children.”. Anesth Analg 104 (3): 509–20. doi:10.1213/01.ane.0000255729.96438.b0. PMID 17312200. http://www.anesthesia-analgesia.org/cgi/content/full/104/3/509. 
  8. ^ M. C. Lewis, I. Nevoa, M. A. Paniaguaa, A. Ben-Aric, E. Prettoa, S. Eisdorfera, E. Davidsona, I. Matotc, C. Eisdorfer (2007). “Uncomplicated general anesthesia in the elderly results in cognitive decline: Does cognitive decline predict morbidity and mortality?”. Medical Hypotheses 68 (3): 484–492. doi:10.1016/j.mehy.2006.08.030. PMID 17141964. 
  9. ^ Z. Xie, Y. Dong, U. Maeda, R. D. Moir, W. Xia, D. J. Culley, G. Crosby, R. E. Tanzi (2007). “The Inhalation Anesthetic Isoflurane Induces a Vicious Cycle of Apoptosis and Amyloid β-Protein Accumulation”. Journal of Neuroscience 27 (6): 1247–1254. doi:10.1523/JNEUROSCI.5320-06.2007. PMID 17287498. 
  10. ^ S. L. Bianchi, T. Tran, C. Liu, S. Lin, Y. Li, J. M. Keller, R. G. Eckenhoff, M. F. Eckenhoff (2007). “Brain and behavior changes in 12-month-old Tg2576 and nontransgenic mice exposed to anesthetics”. Neurobiology of Aging 28 (in press): 1002–10. doi:10.1016/j.neurobiolaging.2007.02.009. PMID 17346857. 
  11. ^ Saab, BJ; Maclean AJ; Kanisek M; Zurek AA; Martin LJ; Roder JC; Orser BA (November 2010). “Short-term memory impairment after isoflurane in mice is prevented by the α5 γ-aminobutyric acid type A receptor inverse agonist L-655,708.”. Anesthesiology 113 (5): 1061–71. doi:10.1097/ALN.0b013e3181f56228. PMID 20966663. 
  12. ^ Kuehn, BM. (Apr 2007). “Anesthesia-Alzheimer disease link probed”. JAMA 297 (16): 1760. doi:10.1001/jama.297.16.1760. PMID 17456811. 
  13. ^ How does anesthesia work?”. scientific american. 2016年5月28日閲覧。
  14. ^ 熊澤光生ら『標準麻酔学 第5版』医学書院、2006年、26頁。 ISBN 978-4260001960 
  15. ^ Martin K. Vollmer, Tae Siek Rhee, Matt Rigby, Doris Hofstetter, Matthias Hill, Fabian Schoenenberger, Stefan Reimann (2015). “Modern inhalation anesthetics: Potent greenhouse gases in the global atmosphere”. Geophysical Research Letters 42 (5): 1606. doi:10.1002/2014GL062785. 

外部リンク



イソフルラン(フォーレン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 08:58 UTC 版)

全身麻酔」の記事における「イソフルラン(フォーレン)」の解説

強烈なエーテル臭と気道刺激性から、緩徐導入は困難であるが、生体内代謝率低さから、肝・腎機能低下した患者麻酔などで好んで用いられた。調節性がセボフルランやデスフルランに劣るため、近年はあまり用いられない

※この「イソフルラン(フォーレン)」の解説は、「全身麻酔」の解説の一部です。
「イソフルラン(フォーレン)」を含む「全身麻酔」の記事については、「全身麻酔」の概要を参照ください。

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