静脈麻酔薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/27 22:21 UTC 版)
静脈麻酔薬(じょうみゃくますいやく)とは静脈から投与する麻酔薬のことである。本稿では薬理作用別に各薬剤を列挙して、さらに鎮静、鎮痛どちらの作用があるのかを紹介するにとどめる。詳細記事は各項目毎への参照で確認いただきたい。
分類
オピオイド
ベンゾジアゼピン系
- γ-アミノ酪酸 (GABA) の特異的受容体(GABAA受容体)に結合し、クロールチャネルを調節し、主に鎮静作用を示す。基本的に鎮静薬、睡眠薬であり鎮痛作用がない。経口剤が多く、静脈投与が可能な薬物としてはミダゾラム、レミマゾラムがある。ミダゾラムは抗痙攣薬としても用いられる。作用はフルマゼニルで拮抗される。
バルビツール酸系
-
詳細は「バルビツール酸系」を参照
- 上行性脳幹網様体に働き、中枢抑制作用を持つ薬物。細胞膜に作用しGABAがそのレセプター(GABAA受容体)との結合から離反するのを抑制し鎮静作用を示すと考えられている。超短時間作用型としてチオペンタール、チアミラールなどが古くから用いられてきた。抗痙攣薬としても用いられる。
チオペンタール
- 主に鎮静薬として用いられる。超短時間作用型のバルビツール酸系である。通常は20秒位で意識が消失し、5〜7分程度維持され、15分程度で覚醒する。鎮痛作用はなく、むしろ痛覚刺激に対して敏感になる。ヒスタミン遊離作用があり、気管支喘息患者で用いないほうがよい。
プロポフォール
-
詳細は「プロポフォール」を参照
- バルビツール酸系に代わって現在主流になっている静脈麻酔薬である。短時間作用型のフェノール誘導体であり導入覚醒が極めて早いのが特徴である。鎮静作用はあるが、鎮痛作用はない。静脈投与の場合、血管痛が生じることが多い。静脈麻酔薬の多くは蓄積性が問題となって麻酔維持には向かないが、本剤は数少ない麻酔維持に使用できる薬剤である。
ケタミン
-
詳細は「ケタミン」を参照
- NMDA受容体に結合しアンタゴニストとして作用する。視床皮質系を抑制、大脳辺縁系を賦活化することから解離性麻酔薬ともいう。交感神経を賦活すること、鎮静と鎮痛の両方の作用をもつことなど、他の静脈麻酔薬に比べて特異な点が多い。ベンゾジアゼピン系、バルビツール酸系、プロポフォールとは異なり、呼吸抑制が生じにくい。
脚注
参考文献
- 病態生理に基づく臨床薬理学 デービッドE.ゴーラン, アーメンH.タシジアン 編, 清野裕 日本語版監修. メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2006.11 ISBN 4895924610
関連項目
外部リンク
静脈麻酔薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 08:58 UTC 版)
チオペンタール(ラボナール)/チアミラール(イソゾール) バルビツール系静脈麻酔薬。アメリカでは2009年に生産中止。小児にも成人にも使用可能である。重度の喘息には禁忌と添付文書に記載されている。 プロポフォール(ディプリバン、プロポフォールマルイシ) 肝臓での代謝が早く、麻酔の導入にも維持にも好んで用いられるもっとも主流の全身麻酔薬である。疼痛効果がなく、フェンタニルなどの麻薬鎮痛薬や硬膜外麻酔などの局所麻酔と併用する。小児に対する麻酔目的での使用は禁忌ではないが、避けられる傾向にある。これは集中治療分野で、長期間鎮静のために投与された患者にPropofol Infusion Syndromeという重篤な病態が発生した報告があるためである。 ミダゾラム(ドルミカム) 短時間作用性のベンゾジアゼピン。循環抑制が軽く、重症患者の麻酔導入や、麻酔前投薬にも用いられる。 ケタミン(ケタラール) 解離性麻酔薬と呼ばれる。視床、大脳新皮質は抑制するが、大脳辺縁系を賦活する。血圧上昇、頻脈などを起こす。そのため、呼吸抑制による死亡は生じない。体性痛を非常によく抑え、熱傷の疼痛除去でも好んで用いられる。近年、日本では麻薬に指定され、法的な取り締まり対象となったが、薬理学的には麻薬(オピオイド)ではない。
※この「静脈麻酔薬」の解説は、「全身麻酔」の解説の一部です。
「静脈麻酔薬」を含む「全身麻酔」の記事については、「全身麻酔」の概要を参照ください。
「静脈麻酔薬」の例文・使い方・用例・文例
- 静脈麻酔薬
静脈麻酔薬と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
- 静脈麻酔薬のページへのリンク