エンフルランとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 製品 > 医薬品 > > 医薬品 > エンフルランの意味・解説 

エンフルラン

分子式C3H2ClF5O
その他の名称エトラン、エンフルラン、化合物347、メチルフルルエーテル、麻酔化合物No.347、Ethrane、Enflurane、NSC-115944、Compound 347、Methylflurether、Anesthetic compound No.347、2-Chloro-1-(difluoromethoxy)-1,1,2-trifluoroethane、Ohio-347、2-Chloro-1,1,2-trifluoroethyl(difluoromethyl) ether、エンフルレン
体系名:(1,1,2-トリフルオロ-2-クロロエチル)(ジフルオロメチル)エーテル、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル(ジフルオロメチル)エーテル、2-クロロ-1-(ジフルオロメトキシ)-1,1,2-トリフルオロエタン


エンフルラン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/15 00:10 UTC 版)

エンフルラン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
Drugs.com Micromedex Detailed Consumer Information
薬物動態データ
血漿タンパク結合 97%
データベースID
CAS番号
13838-16-9 
ATCコード N01AB04 (WHO)
PubChem CID: 3226
IUPHAR/BPS英語版 7175
DrugBank DB00228 
ChemSpider 3113 
UNII 91I69L5AY5 
KEGG D00543  
ChEBI CHEBI:4792 
ChEMBL CHEMBL1257 
化学的データ
化学式 C3H2ClF5O
分子量 184.49 g·mol−1
テンプレートを表示

エンフルラン(Enflurane、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル ジフルオロメチル エーテル)はハロゲン化エーテルの一種の揮発性麻酔薬である。1963年に開発され、1966年に初めて臨床使用された。1970年代から1980年代にかけて広く使用されたが[2]、現在では一般には使用されていない[3]。日本では経過措置期限2008年3月末を以って販売終了となった[4]

エンフルランはイソフルランの構造異性体である。室温では液体だが、容易に気化する。 吸入麻酔薬としてのカラーコードはオレンジ。製品容器[5]や専用気化器にはオレンジの色帯があった。

物理的性質

性質
1気圧における沸点 56.5 °C
最小肺胞内濃度 1.68
20 °Cにおける蒸気圧 22.9 kPa (172 mmHg)
血液/ガス分配係数 1.9
油/ガス分配係数 98

薬理学

揮発性麻酔薬の正確な作用機序は解明されていない英語版[6]。エンフルランはGABAA受容体[7][8][9][10]グリシン受容体英語版5-HT₃受容体英語版[11][12]正のアロステリック調節因子として、またAMPA型グルタミン酸受容体カイニン酸型グルタミン酸受容体NMDA型グルタミン酸受容体[12][13][14]およびニコチン性アセチルコリン受容体[11]の負のアロステリック調節因子として作用する。GABAA受容体を活性化し、興奮性の受容体であるニコチン性アセチルコリン受容体を抑制する一方で、NMDA型グルタミン酸受容体に対する作用はあまりないことが知られている[15]

副作用

臨床的に、エンフルランは用量依存的に心筋の収縮力英語版を低下させ、それに伴い心筋の酸素消費も減少する。吸入されたエンフルランは肝臓で酸化され、フッ化物イオンとジフルオロメトキシ-ジフルオロ酢酸を生成する。これは構造異性体であるイソフルランの代謝率よりも著しく高い(生体内代謝率はイソフルランが0.2%なのに対しエンフルランは2%[16])。

また、エンフルランはけいれん英語版閾値を下げるため、特にてんかん患者には使用すべきではない[17]。すべての強力な吸入麻酔薬と同様、悪性高熱症の既知の誘発因子である。

他の強力な吸入麻酔薬と同様に、妊婦の子宮を弛緩させ、分娩時や妊娠子宮に対する処置時の出血量増加に関連する。

麻酔薬としては廃れたメトキシフルランには腎毒性があり、急性腎不全を引き起こしたが、これは一般にフッ化物イオンの遊離によるものとされている。エンフルランも同様に代謝されるが、フッ化物の遊離による血漿中濃度は低く、エンフルランに関連する腎不全はほとんど見られないか、全く見られなかった[18]

労働安全衛生

米国の国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH)は、60分間の廃棄麻酔ガスへの曝露に対する推奨曝露限界(recommended exposure limit: REL)英語版を2 ppm(15.1 mg/m3)と設定している。エンフルランへの職業曝露の作用・症状には、眼刺激、中枢神経系抑制英語版鎮痛麻酔痙攣、および呼吸抑制がある[19]

参考文献

  1. ^ Anvisa (2023年3月31日). “RDC Nº 784 - Listas de Substâncias Entorpecentes, Psicotrópicas, Precursoras e Outras sob Controle Especial” [Collegiate Board Resolution No. 784 - Lists of Narcotic, Psychotropic, Precursor, and Other Substances under Special Control] (ポルトガル語). Diário Oficial da União英語版. 2023年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ2023年8月16日閲覧。
  2. ^ Electroencephalography: Basic Principles, Clinical Applications, and Related Fields. Lippincott Williams & Wilkins. (2005). p. 1156. ISBN 978-0-7817-5126-1. https://books.google.com/books?id=tndqYGPHQdEC&pg=PA1156 
  3. ^ Pharmacology and Physiology for Anesthesia. (2013). doi:10.1016/C2009-0-41712-4. ISBN 9781437716795 
  4. ^ 経過措置医薬品告示情報”. DATA iNDEX (2007年11月22日). 2016年5月27日閲覧。
  5. ^ 麻酔博物館 麻酔薬 ガス麻酔薬、静脈麻酔薬など”. 2024年11月22日閲覧。
  6. ^ How does anesthesia work?”. Scientific American (7 February 2005). 2024年11月22日閲覧。
  7. ^ “Effects of two volatile anesthetics and a volatile convulsant on the excitatory and inhibitory amino acid responses in dissociated CNS neurons of the rat”. Journal of Neurophysiology 66 (6): 2014–2021. (December 1991). doi:10.1152/jn.1991.66.6.2014. PMID 1667416. 
  8. ^ “Enhancement of gamma-aminobutyric acid-activated Cl- currents in cultured rat hippocampal neurones by three volatile anaesthetics”. The Journal of Physiology 449: 279–293. (April 1992). doi:10.1113/jphysiol.1992.sp019086. PMC 1176079. PMID 1326046. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1176079/. 
  9. ^ “The actions of ether, alcohol and alkane general anaesthetics on GABAA and glycine receptors and the effects of TM2 and TM3 mutations”. British Journal of Pharmacology 129 (4): 731–743. (February 2000). doi:10.1038/sj.bjp.0703087. PMC 1571881. PMID 10683198. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1571881/. 
  10. ^ “General anesthetics potentiate gamma-aminobutyric acid actions on gamma-aminobutyric acidA receptors expressed by Xenopus oocytes: lack of involvement of intracellular calcium”. The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 263 (2): 569–578. (November 1992). PMID 1331405. 
  11. ^ a b Neurochemistry of Consciousness: Neurotransmitters in Mind. John Benjamins Publishing. (2002). pp. 154–. ISBN 978-1-58811-124-1. https://books.google.com/books?id=3o2fCDDoSuUC&pg=PA154 
  12. ^ a b A Practice of Anesthesia for Infants and Children: Expert Consult - Online and Print. Elsevier Health Sciences. (2013). pp. 499–. ISBN 978-1-4377-2792-0. https://books.google.com/books?id=MAXTnQStL0cC&pg=PA499 
  13. ^ Clinical Anesthesia, 7e: Print + Ebook with Multimedia. Lippincott Williams & Wilkins. (7 February 2013). pp. 116–. ISBN 978-1-4698-3027-8. https://books.google.com/books?id=exygUxEuxnIC&pg=PA116 
  14. ^ “Enflurane inhibits NMDA, AMPA, and kainate-induced currents in Xenopus oocytes expressing mouse and human brain mRNA”. FASEB Journal 7 (5): 479–485. (March 1993). doi:10.1096/fasebj.7.5.7681790. PMID 7681790. 
  15. ^ 熊澤光生; 標準麻酔学 第5版(医学書院), 26頁
  16. ^ 熊澤光生; 標準麻酔学 第5版(医学書院), 39頁
  17. ^ Enflurane has established ictogenic properties?. (April 2004). doi:10.15363/thinklab.d224. オリジナルのOctober 18, 2016時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20161018215613/https://thinklab.com/discussion/prediction-in-epilepsy/224#6 October 17, 2016閲覧。. 
  18. ^ Clinical Anesthesiology (3rd ed.). New York: Lange Medical Books/McGraw-Hill. (September 2006). p. 142 
  19. ^ CDC - NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards - Enflurane”. www.cdc.gov. 2015年10月1日閲覧。

エンフルラン(エトレン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 03:59 UTC 版)

吸入麻酔薬」の記事における「エンフルラン(エトレン)」の解説

ハロタンとよく似た性質をもち、肝毒性克服した吸入麻酔薬である。イソフルラン、セボフルラン出現使用されなくなってきた。非脱分極筋弛緩薬増強作用だけでなく、単独でも他の揮発性麻酔薬比べて強い筋弛緩作用をもつ。

※この「エンフルラン(エトレン)」の解説は、「吸入麻酔薬」の解説の一部です。
「エンフルラン(エトレン)」を含む「吸入麻酔薬」の記事については、「吸入麻酔薬」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「エンフルラン」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



エンフルランと同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「エンフルラン」の関連用語

エンフルランのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



エンフルランのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
独立行政法人科学技術振興機構独立行政法人科学技術振興機構
All Rights Reserved, Copyright © Japan Science and Technology Agency
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのエンフルラン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの吸入麻酔薬 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS