船体 船体の概要

船体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 15:34 UTC 版)

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ヴァーサ(1627年)の船体の断面。
船体の各部

概説

船体というのは船の主な構造体のことであり、容器状の構造体のことである。・帆柱・エンジン蒸気機関などの動力部分や、軍艦での銃砲などの装備は「船体」には含まない。別の角度から言うと「これだけあれば水に浮くことができる、という部分」あるいは「浮力を担っている容器状の構造体」のこと。

船体はを押しのけることでアルキメデスの原理が働き、浮力を得る。

船が静止している状態では、船体には重力浮力の二つの力が加わる。船体が静止しているならば(あくまで、静止している場合だけで、実際に航行している時には起きにくい、あくまで理論上の状態だが)重力と浮力が等しい状態である。このとき、重力の中心である重心と浮力の中心は同一鉛直上にあるものの、位置は異なっている。

設計と機能間のバランス

船体を設計する上では、さまざまな機能や要求が考慮される。船体設計は(他の様々な設計同様に)「ただひとつの究極の設計」というのは無く、ひとつの機能面での性能を高めれば、代わりに他の機能が犠牲になりその性能が低くなる、というトレードオフの関係がしばしば成り立っているので、船舶の用途や将来の使用者の希望に応じて、機能間のバランスが調整されつつ 船体設計が行われる。

船体は復原性や操縦性能も考慮して設計する。を切って旋回している最中は、船体は遠心力を受け、外側に傾こうとする力が働くが、同時に船首、船側、船底付近の「斜めの面」に水の抵抗を受け、船の傾きを水平に戻そうとする力も働く[2]。船底や船側の多数の面の設計次第で、各速度での旋回時の船体の傾き具合が変わる。

(直進時)船首は水面を掻き分けて(切り裂いて)おり、波を発生させており、それによって抵抗が生じていると考えられており、それを造波抵抗と言う。造波抵抗が大きいような船体形状では燃費が悪くなる(原動機が同じ場合は最大速度が低くなる)。19世紀までは船首を細長く作る方向で工夫が重ねられたが、20世紀になりバルバス・バウが開発された。

材料、材質

船体の主たる材料は、代表的なものとしては、木材鋼板アルミニウムFRPなどがある。

人類が数万年前に用いたと想定されている 素朴なカヌーでは、たとえば(アシ)を大量に束ねて船体としたり、丸太ログ)を平らに何本も並べてで縛って筏にしたり、あるいはかなり太い丸太の中をノミでくりぬいてカヌー状の船体としたり、あるいは木製や竹製の枠をまず作っておいてそこに大きな動物の皮革を張って船体を作ったと考えられている。 (なお、葦や木材は、一般に、水より比重が小さいので、容器状にしなくても一応は水に浮く。)

木材

船体の材料に主に木材を用いた船を木造船(もくぞうせん)と言う。 古代から近代まで、船体の材料としては、主に木材が用いられてきた歴史がある。古代エジプトの船の船体も、15~17世紀ころの大航海時代帆船の船体も木製であった。現代でも、東南アジア、中国、朝鮮半島などで建造される小型~中型船の船体の材料は、材木が主流である。欧米などでも、現在でも、セーリングクルーザー乗りやモーターボート乗りなどの中には、伝統的な木造船の材質感(風合い)を好む人も相当数おり、(趣味人や、富裕層などで)材料に木材をあえて選んで船を建造させる人々もいる。欧米では現在でも材木でセーリングクルーザーや釣り船などを(日曜大工 感覚で)自作することを趣味にしている人々もいる。

木材で船体を作る方法はいくつかあるが、欧州式の木造船の場合は例えば、一例としては以下のような手順で組み立てる方法がある。

  • 船首から船尾までの竜骨(キール)(人体に喩えると、背骨に当たる部分)を作る。
  • 「船側フレーム」や「肋骨」と呼ばれる、竜骨に対して垂直方向に伸び曲線を描きつつ上方向に伸びる材木を組む(人体に喩えると、肋骨に当たるような部分の材木を組む)。
  • 「船側フレーム」の表面に、プランク(plank)と呼ばれる、船首-船尾 方向に長い横板を多数貼り付ける(プランキング)。

甲板デッキ)がある船では以下の作業も行う。

  • 甲板を支えることになる水平の構造材を組む。(建物の梁や屋根の構造体に当たるような材木を組む。)
  • 甲板のプランキングを行う。
鋼板

近代になり船舶の大型化とともに船体の材料として鋼板も用いられるようになった。なお鋼自体は強度があるが、巨大な船体を建造するためには鋼板を多数つなぎあわさなければならず、20世紀半ばすぎまで、鋼板どうしの接合方法としてリベットが用いられていたので、船体に巨大な力が働くと、リベットだけが ちぎれ飛んで(吹き飛んで)しまい、鋼板どうしの接合が無くなりバラバラになってしまい、船体がポキリと折れてしまったり、一部の鋼板がハガレて大量浸水してしまう、という事故が起きた。例えば巨大波に巻き込まれたり、艦船が魚雷攻撃などを受ける、などという場合に、リベット接合が原因であっけなく鋼板製の船体が破壊されてしまう、ということが起きたのである。リベット接合という弱点が解消されたのは20世紀後半になってのことであり、溶接技術が実用化し造船の現場に普及したことで、ようやく鋼板の本来の強度が十分に活きた船体の建造が可能になった。現代では大型船(「本船(ほんせん)」とも)は ほぼ全て、鋼板製である。

FRP

20世紀後半には繊維強化プラスチック(FRP)製の船体も増えた。特に日本では1966年昭和41年)ころから漁船のFRP化が推進された[3]プレジャーボートの類も1970年代にFRP化が進んだ。しかし、FRP船の普及に伴い、特有の問題も露見した。ひとつは、使用過程でFRPの樹脂部分に細かな亀裂が生ずることがあり、その亀裂から内部の繊維部分にまで水(海水河川など)が浸入し、繊維部分が水を含んだことで膨張し、樹脂部分の亀裂がさらに増えるという悪循環が起き、(FRP船体であっても、表面塗装をしっかり施し続けないと、細かい亀裂から次々と水が侵入し)繊維が水を含んだせいで船体の重量が増して浮力が減ってしまったり、(重くなって)操船性能や燃費が落ちたり、次々と増え続ける亀裂によって強度が相当に落ち、想定していた耐用年数よりもはるかに短い期間で廃船せざるを得なくなる場合もある。また、建造は容易なのだが、廃船時に、船体の解体や処分が容易では無いことも後になって判明した。

単胴と多胴

構造上、一つの船体のみをもつ通常の船舶のことを単胴船(たんどうせん)といい、船体を複数個平行に繋いだ船を多胴船(たどうせん)といい、以下のものが挙げられる。

多胴船の長所としては、同じ幅の単胴船に比べて喫水線が浅くても船体間のバランスが取れていれば船体が小型でも安定することが挙げられ、短所としては横幅がありすぎ停泊時に場所(水面)を占有しすぎることや、一般的に、運動性能が劣ることである。

セーリングクルーザーの双胴船の場合、ある程度の風や波までは単胴のものより復元力が大きくマスト(帆柱)が垂直に保たれがちなおかげで、風を推力に変える上でロスが少ないが、ひとたび風や波の力による傾きが復原点を超えてしまって転覆してしまうと、マストとセイルが水中、船体の真下に沈んだままになり、二度と自力では起こすことができなくなる、という難点もある。(通常の単胴のセーリングクルーザーは、たとえ転覆しても、ハッチさえしっかり閉じていれば、キール(竜骨)に内蔵した数百kg程度の重りのおかげで、(数分~数十分のうちに)ふとした波などのきっかけを得て船体がどちらかに傾き自然と正しい上下方向に戻り、生還できるのだが、双胴のセーリングクルーザーは一度転覆すると二度と自力では起き上がらず、そのまま遭難→乗組員全員死亡 となってしまう欠点がある。一時期、双胴のセーリングクルーザーが流行した時期があったが、その後、大洋を航行中の転覆・死亡事故が何度も続いた時期があり、「双胴のセーリングクルーザーは、近場はともかく、大洋で使うには危険すぎる」という知識が広まり、建造は下火になった。

船体の部位

船首
船首とは、船体において通常の航行時に進行方向の前方の部分である。
船尾
船尾とは、船体において船首の反対側の部分である。
右舷
右舷とは、船体において船尾から船首に向かって右側の側面(や端)であり、スターボードサイド(starboard side)とも言う。スターボード(starboard)とは、ステアリングボード(steering board)すなわち舵取り板のことであり、取り板を右舷船尾に装備していた時代から現代に由来した呼称である。
右舷側に舵を切ることを面舵という。
左舷
左舷とは、船体において船尾から船首に向かって左側の側面(や端)であり、ポートサイド(port side)とも言う。港に係留する際、舵取り板が装備された右舷側は陸付けに適さなかったことから、左舷側をもって係留したことに由来する。
左舷側に舵を切ることを取舵という。

  1. ^ a b Oxford Lexico, hull.[1].The main body of a ship or other vessel, including the bottom, sides, and deck but not the masts, superstructure, rigging, engines, and other fittings. .
  2. ^ パーソナルウォータクラフトを含む船底がV字型の小型艇は、スキー二輪車のコーナリングと同様に船体を内傾させて旋回する
  3. ^ 土屋孟、「こんなところに複合材料:歴史編―II.FRP漁船の開発史」 『日本複合材料学会誌』 2003年 29巻 4号 p.129-135, doi:10.6089/jscm.29.129, 日本複合材料学会
  4. ^ a b 泉江三著 『日本の戦艦 上』 グランプリ出版 2001年4月20日初版発行 ISBN 487687221X
  5. ^ 池田良穂著 「図解雑学 船のしくみ」 ナツメ社 2006年5月10日初版発行 ISBN 4-8163-4090-4
  6. ^ a b 池田宗雄著 「船舶知識のABC」 成山堂書店 第2版 ISBN 4-425-91040-0
  7. ^ 恵美洋彦著 「Illustrations of Hull Structures」 成山堂書店 2006年11月28日初版発行 ISBN 4-425-71381-8
  8. ^ 佐藤忠著 「セメント船を造ろう」 パワー社 2001年9月25日発行 ISBN 4-8277-2277-3
  9. ^ 吉識恒夫著 「造船技術の進展」 成山堂書店 2007年10月8日初版発行 ISBN 978-4-425-30321-2
  10. ^ 池田良穂著 『内航客船とカーフェリー』 成山堂書店 平成20年7月18日新訂初版発行 ISBN 9784425770724





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