特定非営利活動法人 概要

特定非営利活動法人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 21:22 UTC 版)

概要

「特定の公益的・非営利活動を行うこと」(内容は特定非営利活動促進法#法における定義を参照)を目的とする法人である。「非営利」とは、団体の構成員に収益を分配せず、主たる事業活動に充てることを意味し、商業活動を行うこと等の収益を得る行為を制限するものではない[注 1]

特定非営利活動促進法の制定時、非営利法人制度の一般法としては民法(改正前)が存在し、日本で非営利かつ公益の活動を行う団体は、民法第34条(当時)に規定された公益法人(社団法人財団法人)となる方法が存在した。しかし、同規定に基づいて法人格を取得する際に行政機関許可が必要であり、法人格取得後も主務官庁による指導を受けることがあるなど活動に制限が多く、市民による自由で自発的な活動に適した法人格が求められていた[6]

一般法である改正前民法第34条(旧公益法人制度)の改正に至らなかったため、特定非営利活動促進法は、その特別法として制定された。したがって、特定非営利活動法人は特別法公益法人である。なお特定非営利活動法人は社団法人(人の集まり)であって、同法に財団法人(財産の集まりが法人格を有するに至ったもの)型の法人はない[注 2]

同法では、旧公益法人に採用されていた主務官庁による許可主義ではなく、認証主義という形態を採用した(第10条)。認証主義は、既に宗教法人制度で採用されており、行政庁による内容への介入が最も行われにくいことを特徴とする。認証取消しによる解散(第31条第1項第7号)など所轄庁による指導監督の権限がなくなったわけではないが、主務官庁の指導による団体統治の代わりに、市民への情報公開による団体統治を志向している[注 3]。これにより非営利で公益的な活動をする団体が、従来よりも簡便に、自由に法人格を取得できることを目指した。

同法がNPO法制化運動の成果であったこと、同法の制定当時は非営利団体(NPO)(中でも特に行政庁の政策と異なる意見を有する団体)が簡便自由に活用できる法人格としては特定非営利活動法人しかなかったことから、同法をNPO法、特定非営利活動法人をNPO法人という通称で呼ぶことが定着し、その後の中間法人制度の制定、公益法人制度改革を経て、法制度としてはNPOが活用できる法人格が多様化した後もそのまま通称が残った。

特定非営利活動とは、一般に不特定かつ多数の者の利益(=公益)の増進に資する法人として公益法人が民法で既に定義されていたことから、特別法としての位置づけと整合性をとるため、特定非営利活動促進法別表に掲げる一定の分野(=特定非営利活動)に限定列挙されたものをいう。

特定非営利活動法人は、宗教的・政治的活動を主たる目的として行うことはできない(第45条第1項第4号イ(1))。また選挙活動を目的とした活動は行うことができない(同号イ(3))。ただしこれは、政治、宗教関係者が特定非営利活動法人に関わることを排除するものではなく、法人の理事に政治家(議員に限らず地方公共団体首長等も含む)や宗教家(僧侶や司祭等)が就任している実例も多い。

従来の公益法人に比べ、設立手続きが容易であるため、法施行直後から、法人格を取得する団体が急増し、2008年(平成20年)10月末現在3万5000を超える団体が認証されている。特に従前は任意団体として活動していた団体が法人格を取得するケースが目立つ(任意団体では銀行口座の開設や事務所の賃借などといった、各種取引契約などの主体になれないケースがあるが、NPO法人であれば法人名で契約が可能である[7])。

税制については、法人税は収益事業課税であり、さらに印紙税法において「営業者」と扱われないために受取書や領収書への印紙の貼付義務を持たないが、他には特に税制優遇はない。所轄庁(2012年平成24年)4月以前は国税庁長官)から認定を受け認定特定非営利活動法人になると特定公益増進法人と同様の寄附控除等の対象となり、法人内部でのみなし寄附も20%まで可能となる。

一般法である改正前民法第34条による公益法人制度が、2006年(平成18年)の公益法人制度改革により改革された。非営利目的の法人の設立は一般社団法人一般財団法人として準則主義で簡便に登記によりできるようになり、税制優遇についても民間人有識者による合議制機関により公益法人認定法の要件に合致していると認められれば高度の優遇を受けられる公益法人としての認定を受けられるようになった。NPO法制化運動が当初目指した法人制度により近い形が実現したことによって、特定非営利活動法人制度が法人法制度全体のなかで有する上記の意義・位置取りは変化してきている[注 4][注 5]

2018年現在、日本には5万1768の認証NPO法人が存在しており、およそ6割の団体が保健・医療・福祉の分野で活動している[8]。構成員の年齢層は幅広いが、60歳以上の構成員が職員では3割、ボランティアでは6割となっており、引退したシニア層が社会活動に参加する場合の受け皿のひとつとなっている[8]


注釈

  1. ^ すなわち、構成員に対して利益の還元をしてはならず、その目的の事業の更なる発展・強化を図るための資金へまわすことを目的としている。
  2. ^ 特定非営利活動促進法第2条第2項の定義参照。
  3. ^ 情報公開に関する規定として、第10条2項、第28条、第30条等がある。
  4. ^ 法改正後の根拠法及び一般法は民法第33条の第1項・第2項。
  5. ^ 詳しくは、特定非営利活動促進法のあとに中間法人法が制定され、非営利の団体が法人となる際に利用できる法制は公益法人制度改革の以前から既に複数化していたが、中間法人制度は公益法人制度改革に伴い一般社団法人制度に統合された。

出典

  1. ^ NPO法人の主な事務所の所在する地域の政令指定都市長、又は都道府県知事
  2. ^ 所轄庁一覧 | NPOホームページ”. www.npo-homepage.go.jp. 2024年1月12日閲覧。
  3. ^ 認証制度について | NPOホームページ”. www.npo-homepage.go.jp. 2024年1月12日閲覧。
  4. ^ 元職員が720万円を横領したNPO法人「神奈川子ども未来ファンド」に横浜市が不適正経理の是正勧告! ファンドの対応は? - はまれぽ.com 神奈川県の地域情報サイト”. はまれぽ.com (2024年1月13日). 2024年1月12日閲覧。
  5. ^ https://www.city.tsuchiura.lg.jp/data/doc/1395993381_doc_38_3.pdf
  6. ^ 森泉章『新・法人法入門』有斐閣、2004年、184頁
  7. ^ 内閣府・NPOホームページ「NPOを知ろう(NPOの基礎知識)」より
  8. ^ a b 佐藤眞一(編)『高齢者心理学』 北大路書房 2018年、ISBN 978-4-7628-3050-1 p.45.
  9. ^ https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/2020-kaisei-1.pdf
  10. ^ “NPO偽装、医療器メーカー脅した右翼幹部ら2人逮捕”. 読売新聞. (2004年10月3日) 
  11. ^ 市民への説明要請の実施について |東京都生活文化スポーツ局”. www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp. 2022年12月13日閲覧。
  12. ^ 神戸市:NPO法人に対する市民への説明要請の内容・結果”. www.city.kobe.lg.jp. 2022年12月13日閲覧。
  13. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2016年1月20日). “震災事業費横領に実刑判決 「被災者愚弄している」 岩手”. 産経ニュース. 2022年12月13日閲覧。
  14. ^ NPO法人 脱法売買 全国11法人売り出され、仲介業者も 口座乱造、詐欺に悪用 毎日新聞 2018年6月7日
  15. ^ 非営利法人「善意」の陰で:休眠NPO、看板悪用 東京、多重債務者集め詐欺/茨城、実態は違法風俗店”. 毎日新聞. 2022年12月13日閲覧。






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