江州弁 関連項目

江州弁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/09 08:23 UTC 版)

江州弁(ごうしゅうべん)は、滋賀県(旧近江国)で用いられる日本語の方言である。近江弁(おうみべん)、滋賀弁(しがべん)、近江ことば(おうみことば)などとも呼ばれる。方言学では滋賀県方言(しがけんほうげん)や滋賀方言(しがほうげん)というが、「滋賀方言」は「滋賀郡の方言」を指す場合もある。近畿方言(いわゆる関西弁)の一種であり、とりわけ京言葉と共通する要素が多いが[注 1]、地域ごとの違いもあり、特に湖北地方の方言(湖北弁)は特殊である。


注釈

  1. ^ #筧1982に「滋賀県方言は京都の言語文化圏に属し、京都と共通の特徴をもっていることは、今さら例をあげるまでもない。」とある。
  2. ^ #井之口1961に「大津の娘に、大津ことばと京ことばとの相違を聞いたら、『大津は京都の田舍弁ですよ』と答えてくれた。」とある。
  3. ^ 京都市内で働く滋賀県出身女性へのインタビュー(廣戸惇「特集・壁としての敬語 方言敬語から共通語へ」『言語生活』1982年4月号、筑摩書房)
    ―御郷里の言葉と京都のことばの違いは。
    そうですね。京都のことばが滋賀の言葉よりやわらかいですね。滋賀県の方が汚い。
    ―どんなところですか。
    急には思い出せませんけども、京都の人は、ソーエと言わはるところが、エは最後につけるでしょう。そういうところを滋賀県では言ウテハッタデなど、品が悪いのではと。
    ―語尾ですか。
    ええ、語尾。
  4. ^ キョートベンガシ キナク ナッガー ゴーシューベント ユーノカ。イ。ホーイニ イワレマス ネー⤵。(京都弁が少し汚くなったのがあ江州弁というのか。はい。そのように言われますねえ。)<老・男>」
    当地点地元の人のこの言が、よく当方言の話し調子一般を代弁してくれている。(#大橋2003
  5. ^ 「滋賀のことばは、京ことばに似ていますが、単刀直入に話し、行動的でことばが荒くて強い感じを受けます。しかし、そこに思いやりがあり、温かみがあります。(後略)」(#NHK2005、松居一代のコメント)
  6. ^ NHK『ふるさと日本のことば・滋賀県』内のインタビューで、滋賀県の方言について訊ねられた大津市民は次のように答えている。(#熊谷2003
    サーファー「滋賀県に方言なんて、ありまへんで」
    女子高校生「滋賀の方言なんて、ないな」
    漁師の一人「ひどう、かわりまへんで」
  7. ^ 琵琶湖博物館の区画を除き、#筧1982によった。
  8. ^ 『日本語方言辞典<別巻> ―全国方言会話集成―』(2002年、藤原与一、東京堂出版)によると、1955年の朽木村での方言調査でガ行鼻濁音が確認されている。
  9. ^ #服部1990によると、湖東地方3地点の60代以上の話者への調査で、以下の語で「○○」という発音も観察されたという。
    近江八幡市沖島の話者 - 「いごく(=動く)」
    彦根市河原・能登川町垣見の話者 - 「(金が)かかる」「(これに)限る」「(目に)余る」「頼む(強い依頼口調)」「(あれだけ働いたら金が)残る」「(お前が言うことは良う)わかる」「(わしはそう)思う」「(そんなことされたら)困る」(話者によっては一部のみ)
  10. ^ 「いとしげ無い」ということで「憎らしい」などの意で用いる地域も少なくない。
  11. ^ 外村繁の小説『澪標』に次のような一節がある。
    しかしその翌朝から、たつは母に叱られ通しである。まづ言葉遣ひが悪いといつて叱られる。
    「目上のお方に、『来やはつた』とはなんや。『来なさつた』とか、『お出でやした』とか言ふもんや」
  12. ^ 現在関西一円で使われる「こーへん」は共通語の「来ない」に影響された新方言とされるが、それとは別に湖北では高齢層でも「こーへん」を用いる。
  13. ^ 「あがて」に近い発音。
  14. ^ 言い間違い。
  15. ^ 詠嘆の語幹用法。
  16. ^ 「どー」に近い発音。
  17. ^ 「ひた」に近い発音。
  18. ^ 「わひ」に近い発音。
  19. ^ 「暑て暑て」の「つ」が無声化している。
  20. ^ a b c d e 軽く見下す気持ちが込められている
  21. ^ a b 軽い敬意が込められている

出典

  1. ^ a b c d e #井之口・福山1952
  2. ^ a b c #筧1982
  3. ^ 司馬遼太郎『街道をゆく』「近江散歩
  4. ^ 図録▽方言に対する感じ方(都道府県比較)、社会実情データ図録、2009年2月16日収録、2010年12月7日閲覧。
  5. ^ #井之口1961、153-154頁。
  6. ^ #筧1962
  7. ^ 琵琶湖博物館「2009年度 フィールドレポーター 第2回調査 “近江ことば いまむかし” 調査票」2010年3月1日閲覧。
  8. ^ #増井2000、11-13頁。
  9. ^ #筧1982、63-64頁。
  10. ^ #筧1982、64頁。
  11. ^ a b #服部1990
  12. ^ 生田早苗「近畿アクセント圏辺境地区の諸アクセントについて」『国語アクセント論叢』1951年(井上史雄ほか編『日本列島方言叢書13 近畿方言考1(近畿一般)』ゆまに書房、1996年に収録。)
  13. ^ #平沢1986
  14. ^ #中山1994
  15. ^ 長浜市の広報誌「広報きゃんせ長浜」、長浜市で開催されるイベントきゃんせ土曜市ごんせ朝市、米原市にある滋賀県立きゃんせの森など。
  16. ^ #増井2000、279頁。
  17. ^ #増井2000、99頁。
  18. ^ 『日本言語地図』第4集第182図、国立国語研究所、1970年
  19. ^ 『日本言語地図』第4集第183図、国立国語研究所、1970年
  20. ^ #筧1962、213-216頁。
  21. ^ #増井2000、158頁。
  22. ^ 「ライオンの旅」キャンペーン 滋賀県画像 - 白泉社、2010年11月28日閲覧。
  23. ^ 2月10日(火)滋賀県長浜市に新規オープン「モンデクール長浜」開店のお知らせ”. 平和堂 (2005年2月). 2022年2月5日閲覧。
  24. ^ 『日本言語地図』第1集第19図、国立国語研究所、1966年
  25. ^ #木村1994
  26. ^ #井之口1961、149頁。
  27. ^ #井之口1961、147頁。
  28. ^ #藤谷1986、132頁。
  29. ^ 大阪大学大学院文学研究科 岡島昭浩「雑文・雑考「させて戴く」」1996年7月4日配信、2010年2月2日閲覧。
  30. ^ YOMIURI ONLINE「モニ太のデジタル辞典 つこうた(つこうた)」2008年1月17日配信、2010年2月2日閲覧。
  31. ^ 日刊サイゾー「繰り返される「つこうた」データ流出はなぜ止まらないのか」2009年3月12日配信、2010年2月2日閲覧。
  32. ^ 篠崎晃一・毎日新聞社『出身地が分かる! 気づかない方言』2008年、毎日新聞社。
  33. ^ 『日本言語地図』第1集第49図、国立国語研究所、1966年
  34. ^ 『日本言語地図』第1集第50図、国立国語研究所、1966年
  35. ^ 『日本言語地図』第2集第61図、国立国語研究所、1967年
  36. ^ 滋賀夕刊新聞「竹生島舞台のエンタメ小説」、2012年7月31日配信、2013年6月7日閲覧。
  37. ^ 滋賀夕刊新聞「舞台は長浜、高校生のひと夏を描く」、2012年10月12日配信、2013年6月7日閲覧。
  38. ^ 滋賀夕刊新聞「長浜出身のレゲエDJ」、2008年9月8日配信、2013年6月7日閲覧。
  39. ^ 外村繁 澪標青空文庫、2013年10月15日作成、2016年5月31日閲覧。
  40. ^ 三省堂ワードワイズ・ウェブ「地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺 - 第34回「知ったかぶりカイツブリ」」2001年10月25日配信、2010年2月2日閲覧。
  41. ^ a b 日本放送協会『全国方言資料第4巻 近畿編』日本放送出版協会、1966年。
  42. ^ #藤谷1975
  43. ^ 増井金典『甲賀町方言語彙・用例(甲賀町方言小辞典)』、1987年。
  44. ^ 宮治弘明「<録音器>各地の若者の会話(3) 男生徒の家で(滋賀県)」、『言語生活』1986年3月号、筑摩書房
  45. ^ #大橋2003
  46. ^ 『滋賀百年』毎日新聞社、1968年、76頁





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