東京地下鉄
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歴史
東京の地下鉄の歴史は、1927年(昭和2年)に東京地下鉄道株式会社が、早川徳次により浅草駅 - 上野駅間(現在の銀座線の一部)を開業したことによって始まった。その後、新橋駅までの延伸と1938年(昭和13年)に部分開業した東京高速鉄道の新橋駅 - 渋谷駅間との1939年(昭和14年)の相互直通運転開始を経て、日中戦争下の政府による交通事業の統制(陸上交通事業調整法)によって東京市内の乗合バスと軌道は東京市へ、地下鉄両社は1941年(昭和16年)9月1日に新たに設立された帝都高速度交通営団に引き継がれた。
営団とは戦争遂行のための統制管理目的の組織である。帝都高速度交通営団は住宅営団、食糧営団などとともにその営団の一つであり、その運営は帝都高速度交通営団法に規定されている。日本は日中戦争から太平洋戦争へ突入して敗北。終戦後、GHQの指令によって、他のほとんどの営団は解体されたが、帝都高速度交通営団はその運営が戦争目的ではないと認められ存続された。このため、新線建設の資金調達に関しては財政投融資が活用され、公団に近い形で運営が行われてきた。また公共企業体ながら日本民営鉄道協会(民鉄協)に加盟した。
戦後は、日本国有鉄道(国鉄分割民営化以降は日本国有鉄道清算事業団、のちに日本政府)と東京都が出資する特殊法人という位置付けにあったが、1986年(昭和61年)6月10日の臨時行政改革推進審議会の答申で、営団地下鉄民営化の基本方針が打ち出された。その後も1995年(平成7年)2月24日と2001年(平成13年)12月19日の閣議決定を経て、2002年(平成14年)12月18日に東京地下鉄株式会社法が公布され、2004年(平成16年)4月1日に東京地下鉄株式会社となった。株式会社化後も、出資比率は引き続き政府53.4%と東京都46.6%となっており、2008年(平成20年)6月14日の副都心線開業後に株式を上場して、完全民営化を目指すとしている。
1995年(平成7年)3月20日、オウム真理教による無差別テロ事件である地下鉄サリン事件が発生した。当日は営団地下鉄全線で一時運休、中でも化学兵器にも使われる致死性有毒物質サリンを散布された日比谷線は終日運休した。霞ケ関駅などの事件現場となった駅は、3-6日間営業を中止した。
東京地下鉄発足と同時に「お客様センター」を開設するとともに、利用客の質問に対応する「サービスマネージャー」を主要駅に配置[2]。翌2005年12月から表参道駅を皮切りに商業施設「エチカ」の展開を始め[2]、収益力とサービスの向上を図っている。
車内の自動放送も変更され、新たに英語による案内放送が開始された。さらに、新しい案内サインシステムの導入を進めている(詳細は「サインシステム」の節を参照)。
また、フリーペーパーにも力を入れており、外部の編集・発行分を含めて自社系列の定期刊行フリーペーパーを7誌発行して各駅の専用ラックにて配布しているほか(筆頭は広報紙『メトロニュース』。民営化に伴うリニューアルで『TOKYO METRO NEWS』。『メトロニュース』当時は現業部門の裏話なども掲載していた)、2006年秋からは、専用ラックをリニューアルさせると同時に、他社にも門戸を開放して、全部で6社18紙誌の配布を行っている。
そして、発足当時よりテレビのミニ番組『東京日和』を日本テレビで放送するなど、沿線以外からも旅客誘致に努めている。
こうした営業努力を続けていたところに新型コロナウイルス感染症が流行して2020年以降は乗客数が低迷し、減便を実施している[20]。
年表
前史
- 1927年(昭和2年) 東京地下鉄道が銀座線最初の区間である浅草駅 - 上野駅間を開業(12月30日)[2]。
- 1938年(昭和13年) 東京高速鉄道開業。
- 1939年(昭和14年) 銀座線全線開通、東京地下鉄道と東京高速鉄道が浅草駅 - 渋谷駅間で直通運転を開始(9月16日)[2]。
- 1941年(昭和16年) 帝都高速度交通営団が発足(7月4日)。
- 1951年(昭和26年) 丸ノ内線が着工(4月20日)[2]、新路線建設が始まる。
- 1954年(昭和29年) 丸ノ内線のうち池袋駅 - 御茶ノ水駅が開業(1月20日)[2](戦後初の新設路線)。
- 1955年(昭和30年) ロゴマークを制定(3月1日)[2]
- 1961年(昭和36年) 日比谷線のうち、南千住駅 - 仲御徒町駅間が開業(3月28日)[2]。荻窪線が開業し、同時に旅客運賃を対キロ区間制とする(11月1日)[21]。
- 1962年(昭和37年) 荻窪線の方南町駅までの分岐線が開通(3月23日)[2]し、現在の丸ノ内線が全線開通。日比谷線が東武伊勢崎線と相互直通運転開始(5月31日)[2]。
- 1964年(昭和39年) 日比谷線が全線開業し、中目黒駅で接続する東急東横線と相互直通運転開始(8月29日)[2]。 東西線が高田馬場駅 - 九段下駅間で開業(12月23日)[2]。
- 1966年(昭和41年) 東西線が日本国有鉄道(国鉄)中央線と相互直通運転開始(10月1日)[2]。
- 1969年(昭和44年) 東西線全線開通、営団地下鉄として初めて千葉県へ路線を延ばす。国鉄総武線と相互直通運転開始。千代田線開業(12月20日)。営団で5番目の路線開業となった。
- 1970年(昭和45年) 路線カラー(ラインカラー)を導入。
- 1971年(昭和46年) 千代田線が国鉄常磐線と相互直通運転開始、千葉県へ乗り入れると共に6000系電車の運転開始。
- 1972年(昭和47年) 荻窪線の名称を廃止し、丸ノ内線に統一。
- 1974年(昭和49年) マナーポスター開始。第1号は森昌子と原ひさ子を起用した「少年老イ易ク楽成リ難シ」(9月)。有楽町線開業(10月30日)。
- 1975年(昭和50年) 営団全路線の先頭車両にシルバーシートを導入。
- 1978年(昭和53年) 千代田線全線開通。小田急小田原線と相互直通運転開始。半蔵門線開業(8月1日)。当時は路線距離が短いため営団は車両を所有せず、東急の車両で新玉川線・田園都市線から直通運転。営団が建設し1977年4月7日に東急新玉川線の駅として開業していた半蔵門線渋谷駅の管理を乗り入れ先の東急から移管。
- 1981年(昭和56年) 半蔵門線で8000系電車運転開始。
- 1982年(昭和57年) 千代田線が国鉄常磐線の乗り入れ区間を延長、茨城県の取手駅まで乗り入れる。
- 1983年(昭和58年) 有楽町線が西武有楽町線への直通運転開始。
- 1984年(昭和59年) 銀座線で01系電車運転開始。
- 1987年(昭和62年) 国鉄分割民営化により東西線と千代田線の直通先は東日本旅客鉄道(JR東日本)になる。有楽町線が営団地下鉄として初めて埼玉県へ路線を延伸、東武東上線との相互直通運転開始。東西線でも8000系電車運転開始。
- 1988年(昭和63年) 有楽町線全線開通。日比谷線で03系電車、丸ノ内線で02系電車、東西線で05系電車運転開始。メトロカードを発売。
- 1991年(平成3年) 南北線開業(11月29日)、平成初の地下鉄路線として開業。9000系電車運転開始。NSメトロカードを発売。
- 1993年(平成5年) 千代田線で06系電車、有楽町線で07系電車運転開始。銀座線の2000形電車を全廃。
- 1994年(平成6年) 有楽町線新線開業、平成に入り2番目の路線開業となる。日比谷線の3000系電車を全廃。
- 1995年(平成7年) 地下鉄サリン事件により全路線が午前中の運転を休止。駅係員2名が殉職。また、丸ノ内・日比谷・千代田の各線は1週間近く運転を休止。自動改札機の全駅への導入が完了。
- 1996年(平成8年) 東西線が東葉高速線と相互直通運転開始。丸ノ内線の500形電車を全廃。営団全車両で冷房化達成。SFメトロカードを発売。シルバーシートを全車両に拡大。
- 1998年(平成10年) 有楽町線が西武池袋線と相互直通運転開始(3月26日)[2]。
- 1999年(平成11年) シルバーシートを優先席に変更。
- 2000年(平成12年) 東西線で新05系電車運転開始。南北線が全線開通し、東急目黒線と相互直通運転開始。パスネットを導入。
- 2001年(平成13年) 南北線が埼玉高速鉄道線と相互直通運転開始(3月28日)[2]。
- 2002年(平成14年) 千代田線が小田急多摩線と相互直通運転開始。
- 2003年(平成15年) 半蔵門線が全線開通し、それに伴い東武伊勢崎線・日光線と相互直通運転開始(3月19日)[2]。営団最後の車両系列となった08系電車運転開始。
東京地下鉄発足後
- 2004年(平成16年) 帝都高速度交通営団が民営化されて東京地下鉄が発足。愛称は「東京メトロ」。同時に1990年5月31日認定の相模鉄道以来14年振りの大手私鉄(16社目)となる。また、東京地下鉄発足直前より、テレビCMを開始。
- 2006年(平成18年) 有楽町線で、東京地下鉄発足後最初の車両系列となる10000系電車運転開始。営団時代からの特徴であった160円区間・190円区間専用の券売機を廃止。
- 2007年(平成19年) 東西線の5000系電車を全廃。PASMOを導入、同時にSuica相互利用開始。あわせて提携カード「Tokyo Metro To Me Card」を発行。半蔵門線渋谷駅の管理を乗り入れ先の東急に移管。早期地震警報システムを運用開始[22](10月1日)。
- 2008年(平成20年) パスネットの発売終了。千代田線で小田急ロマンスカーの乗り入れによる日本初の地下鉄での有料特急運行開始(3月15日)。副都心線が全線開業し、副都心線が東武東上線・西武有楽町線・西武池袋線との相互直通運転を開始(6月14日)。
- 2010年(平成22年) 東西線で15000系、千代田線で16000系電車運転開始。
- 2011年(平成23年) 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生し、各地で帰宅困難者が続出し、乗客が滞留する。帰宅困難者を救済して乗客滞留を解消するため、翌日にかけて終夜運転を行う(3月11日)。東日本大震災による電力危機で東京電力が輪番停電(計画停電)を実施。これに伴い、各線で節電ダイヤが適用され、同年9月10日まで減便もしくは直通運転の中止などの処置がなされる(3月13日)。スマートフォンアプリ「東京メトロアプリ」公開(5月30日)[23][注釈 4]。
- 2012年(平成24年) 銀座線で1000系電車運転開始(4月11日)。
- 2013年(平成25年) 副都心線が東急東横線・みなとみらい線と相互直通運転開始、同時に日比谷線と東急東横線との相互直通運転を廃止(3月16日)。IC乗車カード全国相互利用開始で、Kitaca、manaca、TOICA、ICOCA、PiTaPa、nimoca、はやかけん、SUGOCAが利用開始になる[注釈 5](3月23日)。
- 2014年(平成26年) ラインカラーの変更が決定。路線図や駅のサインなどへの変更は2015年から2016年にかけて実施される。
- 2016年(平成28年) 千代田線、JR常磐線、小田急線における3社直通運転がJR・小田急の車両でも開始(3月26日)。銀座線を皮切りに車内無料Wi-Fiサービスの提供開始(12月1日)[25]
- 2017年(平成29年) 日比谷線で20m級片側4ドア7両編成の13000系電車の本格営業運転を開始(3月25日)。03系置き換え完了後に各駅に順次ホームドア設置予定[26]。
- 2018年(平成30年) 利便性向上のため、水天宮前駅 - 人形町駅、築地駅 - 新富町駅の連絡業務(乗換駅)を設定(3月17日)[27]。
- 2019年(令和元年) 日本電信電話 (NTT) と鉄道保守や混雑緩和で協業を発表(7月29日)[28]。
- 2020年(令和2年) スマートフォン用充電器の有料貸し出しを開始(2月6日)[29]。新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、車両の抗ウイルス・抗菌加工を開始(7月2日から)[30]。大都市型MaaS「my! 東京MaaS」の取り組みの一環としてスマートフォンアプリ「東京メトロmy!アプリ」を公開(8月27日)[31]。2020年度設備投資の当初計画1690億円から1400億円への減額を発表(9月30日)[32]。
- 2021年(令和3年) 新型コロナウイルス感染防止策などとして、「東京メトロmy!アプリ」で、丸ノ内線(一部除く)と銀座線の「号車ごとのリアルタイム混雑状況」の配信開始(7月14日)[33]。
- 2022年(令和4年) 駅のゴミ箱を全面撤去[34](1月17日)。ホームドアを2025年度までに全線に設置するなどの設備投資計画と、その原資として2021年創設の鉄道駅バリアフリー料金制度に基づき運賃に10円上乗せ(2023年実施予定)を発表(4月25日)[35]。NTT BPとの契約満了に伴い車両内での無料Wi-Fiサービスを一部終了。訪日外国人用の「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」と、有料の「Wi2 300」と駅構内でのサービスは継続(6月30日)[36]。
- 2023年(令和5年) 南北線と副都心線が東急東横線・東急目黒線経由で東急新横浜線および相鉄線と相互直通運転開始(3月18日)。
注釈
- ^ 有楽町線・副都心線の和光市駅は埼玉県、東西線の浦安駅以東は千葉県に所在する。東京地下鉄株式会社法(平成14年法律第188号)[5]第1条では「東京都の特別区の存する区域及びその付近の主として地下において、鉄道事業及びこれに附帯する事業を経営することを目的とする株式会社」と規定されている。
- ^ 一部区間は営団時代に有楽町線新線として先行開業。
- ^ イギリスでは「Underground」「Tube」、アメリカでは「Subway」が地下鉄の意味として用いられる。
- ^ 2021年1月28日に「東京メトロmy!アプリ」と統合[24]。
- ^ 割引用manaca、障がい者用nimoca、割引用はやかけんは相互利用対象外。
- ^ うち大田区は都営地下鉄の路線・駅は存在する(浅草線の馬込駅と西馬込駅)。また、綾瀬駅は免許申請・建設当初は葛飾区であったが開業前に足立区への区境変更に伴う移管が行われた結果、葛飾区に駅が存在しなくなっている。世田谷区は東京メトロ・都営地下鉄以外の地下路線ながら東急田園都市線(11号線、池尻大橋駅 - 二子玉川駅間が世田谷区内)がある。
- ^ 南北線の白金高輪駅から目黒駅までを共用する三田線からの東急目黒線・東急新横浜線への直通列車の都営地下鉄車も「T」である。
- ^ 現在は東西線で運用。
- ^ 同時に東武鉄道70000系(伊勢崎線・日光線・地下鉄日比谷線乗り入れ用)全車の製造も担当する。
- ^ 千代田線用16000系は川崎重工業・日立製作所2社の共同受注・製造。副都心線・有楽町線用17000系は10両編成は日立製作所、8両編成は近畿車輛で製造。丸ノ内線用2000系は日本車輌製造・近畿車輛で製造。
- ^ 護国寺駅 - 池袋駅間は2.0 km、御茶ノ水駅 - 池袋駅間は6.4 km。
- ^ パスネットも対象であった。
- ^ 2015年2月10日発売分から従来の大人710円、小児360円から値下げされた。
- ^ 発売箇所は東京メトロの定期券うりば(東京駅、日本橋駅、新宿駅、池袋駅)と中央区観光情報センター(京橋エドグランB1F)、バスタ新宿3F東京観光情報センター内の佐川急便 SHINJUKU SERVICE CENTER。
- ^ 乗り換え案内は駅発車時のみでラッシュ時は省略。
- ^ 小田急60000形で運行される「特急ロマンスカー」(千代田線)では西村文江が、西武40000系で運行される「S-TRAIN」(平日は有楽町線、土休日は副都心線)では石毛美奈子が、東武70090型で運行される「THライナー」(日比谷線)では久野知美がそれぞれ日本語放送を担当しており、英語放送はいずれもクリステル・チアリが担当している。
- ^ 「TOKYO HEART」「TOKYO WONDERGROUND」「We are the Tokyo Navigator」のCMディレクションは箭内道彦が担当。
- ^ 前身の営団地下鉄時代にも、乗車マナーポスターで起用実績がある。
- ^ 時差出勤を促す広報企画。
- ^ 2015年4月1日付でメトロフードサービスの外食事業を承継。
- ^ 2013年4月1日付でメトロスポーツを吸収合併。
- ^ 連絡線の工事を行っていた有楽町線・副都心線小竹向原駅 - 千川駅間は、2017年8月23日から[108]。
- ^ 鉄道趣味誌などで掲載が規制されたものには、日本銀行が保有していた現金輸送車のマニ30の例がある。
出典
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