塵旋風 形状

塵旋風

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/09 17:45 UTC 版)

形状

塵旋風の形状は渦巻状または漏斗状で、鉛直軸の回転方向は風向地形次第で右巻きにも左巻きにもなる。地球自転による転向力コリオリ力)の作用で、例えば北半球では左巻きになるなどと誤解される場合もあるが、塵旋風は気象現象として小規模であるため転向力が影響することはほとんどない。また、多くの粉塵が舞い上げられている場合は、外見上の透明感が急減したり、付近の大気よりも暗い色合いで茶色っぽく見えたり灰色っぽく見えたりすることが多い。何れも地表側から上空側へ向かって渦巻状に立ち上るが、大規模な塵旋風でも最大直径は50m から100m 程度、最大高度は数百m 程度であり、があるような高度(km 単位)に達することはない。また、発生から終息までの時間は長くても数分程度である。

被害

塵旋風の被害は粉塵が舞い上がる程度で、被害あるいは自然災害と呼ばれるような規模には至らない場合がほとんどである。ただし、稀に風速30m/s前後(藤田スケールでF0-F1相当)の大規模な塵旋風が発生し、建物などに大きな被害をもたらすことがある。

近年の報告例としては、2009年9月に大分県日田市で塵旋風が発生した際、運動会テントが飛散するなどした。また、2011年3月には宮崎県宮崎市ビニールハウスが損壊する突風が発生し、目撃証言などから塵旋風による被害と推定されている。[8][9]

映像ギャラリー

映像については本項目の「参考・外部リンク」も参照のこと。

2008年3月、メキシココアウイラ州で撮影された塵旋風の動画(約1分14秒)。

地球の塵旋風

NASA / JPL "Spirit's Wind-Driven Traveler on Mars"
2005年5月15日(地球時間)、無人探査機スピリット火星で撮影した塵旋風。火星時間の正午頃、コロンビア・ヒルズ付近で発生した。この映像は連続撮影した静止画像21フレーム分を動画状に繋げたものである。[10]

火星の塵旋風

地球以外の惑星でも、気象条件が揃えば塵旋風が発生することが観測によって明らかになっている。報告例としては、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)が担当する火星探査計画マーズ・エクスプロレーション・ローバーの無人探査機スピリットによる観測がある。

無人探査機スピリットは2003年に打ち上げられ、2004年に火星に着陸して様々な観測を開始、2005年以降に偶然であるが数回にわたって塵旋風の撮影に成功した。この中で最も鮮明に写っている右映像の塵旋風は、2005年5月15日(地球時間)に撮影され、NASAとJPLはこれを塵旋風と判断して2005年5月27日に公式サイトで公開した。この際のプレスリリース「風で移動する火星の旅人」(Wind-Driven Traveler on Mars)によると、この塵旋風はグセフ・クレーターの中にある丘陵コロンビア・ヒルズ付近で午前11時48分頃(火星時間)に発生し、約9分30秒間(静止画像21フレーム分)にわたって連続撮影されたものである。画像解析の結果、この塵旋風は最大直径が約34m で、画面内の移動距離は約1.6km 、移動速度時速約17km だったという。[10][11][12]

旋風や辻風の用法

日本語としての「塵旋風」はあくまでも気象用語である。しかし、日常生活の中でも比較的容易に見ることができる気象現象であるため、一般的な「旋風」や「辻風」などは気象現象を指す用法としても比喩的な用法としても古くから人々に親しまれてきた。気象現象を指す用法の古い例としては、平安時代歴史物語大鏡』に「俄(にはか)に辻風(つじかぜ)の吹きまつひて」などの記述がある。比喩的な用法の例としては、1909年夏目漱石が発表した小説それから』に「彼の頭には不安の旋風(つむじ)が吹き込んだ」などの記述がある。[2]

以下、主に比喩的な用法を述べる。

比喩的な用例

比喩的な用法では、一過性の流行や突発的な社会現象などを喩えることが多い。ブームフィーバーといった外来語と同義の意味合いでマスメディアなどで用いられる。

赤嶺旋風
1947年プロ野球選手赤嶺昌志が他選手を巻き込んで集団辞任した様子を喩え、マスメディアで使用された。
小泉旋風
2001年首相小泉純一郎が率いる自民党選挙で圧勝した様子を喩え、マスメディアで使用された。

人名や題名での用例

同じく比喩的な用法であるが、登場人物の性格や物語の内容を象徴するイメージとして使用されることが多い。

辻風典馬
1935年から1939年にかけて、吉川英治が連載した小説「宮本武蔵」に登場する架空の人物の名前。読みは「つじかぜ・てんま」。
ハリスの旋風
1965年から1967年にかけて、ちばてつやが連載した漫画と、その後にテレビアニメ化された際のタイトル。読みは「はりすのかぜ」。

その他の用例

旋風葉
和装本漢籍製本方法で「折り本」(折本、帖装本)のことを指す。各葉(各ページ)が風で舞う様子を喩えて名付けられた。読みは「せんぷうよう」。[13]



  1. ^ 一般風が弱いきに発生しやすいという指摘や、風速15mの場合には渦があまり強くならないという指摘もある。「塵旋風に関する数値的研究」伊藤純至「塵旋風の構造と強化・維持過程に関する数値的研究」大野洋,竹見 哲也PDF資料より。2013年5月17日閲覧。
  2. ^ a b インターネット百科事典ジャパンナレッジ」より、「デジタル大辞泉」(小学館・1998年)や「ランダムハウス英和大辞典 第2版」(小学館・1994年)などの該当項目から。2011年7月14日閲覧。
  3. ^ 図書「気象科学事典」の項目「塵旋風」および項目「竜巻」より。編纂:日本気象学会、出版:東京書籍、発行:1998年、ISBN 4487731372, ISBN 978-4487731374
  4. ^ 気象庁「予報用語・風」 の項目「竜巻」より。2011年7月14日閲覧。
  5. ^ [www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/tebiki.pdf 『気象観測の手引き』] (PDF) 気象庁、1998年(平成10年)9月、2011年11月30日閲覧。
  6. ^ 気象庁・竜巻シンポジウム「わが国における竜巻の発生状況とこれまでの研究の取り組みについて」 2007年1月23日付 (PDF)  東京大学大気海洋研究所教授および日本気象学会理事長の新野宏による資料。2011年7月14日閲覧。
  7. ^ 対流により励起される渦という説が有力である。
  8. ^ 日本風工学会風災害研究会「風災害 No.7 / 日本風工学会風災害研究会2009年次報告」 2010年3月15日付より。PDF資料。2011年7月14日閲覧。
  9. ^ 宮崎地方気象台「平成23年3月17日に宮崎市で発生した突風について / 気象庁機動調査班による現地調査の報告」 2011年3月18日付より。PDF資料。2011年10月23日閲覧。
  10. ^ a b NASA / JPL Press Release Images : Spirit "Spirit's Wind-Driven Traveler on Mars (Spirit Sol 486)" 27-May-2005 (2005年5月27日付、英語)より。本項目の画像として添付した、スピリットが火星で撮影した塵旋風についてのプレスリリース。文中ではダストデビル(Dust devil)が用いられている。なお、火星探査で用いられるソル(Sol)という単位は、火星の1日(地球と近い約24時間39分)を指し、その後に続く数字は滞在日数を指す。従って、Spirit Sol 486 とは「スピリット火星時間滞在486日目」という意味である。2011年7月14日閲覧。
  11. ^ NASA / NASA / JPL Press Release Images : Spirit "Dust Devils at Gusev, Sol 525" 19-Aug-2005 (2005年8月19日付、英語)より。2005年6月25日(地球時間)にスピリットが火星で撮影した塵旋風についてのプレスリリース。2011年7月14日閲覧。
  12. ^ NASA / NASA / JPL Press Release Images : Spirit "Dust Devils Whip By Spirit, Sol 1120" 12-April-2007 (2007年4月12日付、英語)より。2007年2月26日(地球時間)にスピリットが火星で撮影した塵旋風についてのプレスリリース。2011年7月14日閲覧。
  13. ^ ヴァーチャル展示「和書のさまざま『第一部・本を形づくるもの』」 より。国文学研究資料館の整理閲覧部参考室による、旋風葉の解説。2011年7月14日閲覧。





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