塵旋風 塵旋風の概要

塵旋風

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/09 17:45 UTC 版)

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2005年6月、アメリカアリゾナ州で撮影された大規模な塵旋風の写真。

概要

塵旋風(じんせんぷう)とは、地表付近の大気上昇気流が発生し、これに水平方向の強風が加わるなどして渦巻状に回転しながら立ち上る突風の一種である。乾燥したなどの、細かい落ち葉ゴミといった粉塵(ふんじん)が激しく舞い上がることから塵旋風と呼ばれる。対流混合層がよく発達した晴天強風[1]の日中などに砂漠荒地空き地田畑運動場駐車場などのある程度の広さがある場所で発生しやすく、小規模な塵旋風であれば日常生活の中でも比較的容易に見ることができる。大部分の塵旋風は無害であるが、ごく稀に大規模な塵旋風が発生して建物などに被害を及ぼすことがある。

塵旋風は、一般的な日本語では「旋風」(せんぷう、つむじかぜ)や「辻風」(つじかぜ)と呼ばれ、ニュース天気予報などでは「塵」(じん)という漢字平仮名にして「じん旋風」と表記することもある。英語では「ダストデビル」(Dust devil)と呼ぶことが一般的で「埃の悪魔」という意味だが、「ダストワール」(Dust whirl)と呼ぶこともある。なお、ダストデビルよりも細長く渦巻いて立ち上るような場合は「ワールウィンド」(Whirlwind)と呼ばれ、ワール(Whirl)には「渦巻く」や「目眩」といった意味がある。[2]

これらの気象現象の厳密な区分は困難であるが、何れも突風の一種として分類される。また、これらの気象現象は竜巻(トルネード)と誤認されやすいが、塵旋風と竜巻は定義や発生要因が根本的に異なる。

定義

塵旋風の定義を簡潔に述べるため、日本気象庁気象研究所日本気象学会などによる竜巻の定義と併せて述べる。[3][4][5][6]

塵旋風 Dust devil
塵旋風の定義
  • 地表付近の大気状態が主な発生要因である。具体的には、強い日射による熱上昇気流(サーマル)や、地形性の収束が挙げられる。
  • 主に、が少なく風が強い、晴天時に発生する。
  • 地表から上空へと回転性の上昇気流が立ち上るが、上端の高度は数十m - 100m程度で雲底高度にも達しない。
  • 地面から巻き上げられたが立ち上っていることが多い。海上では発生せず、垂れ下がる雲を伴うことはない。
  • 気象現象として小規模で、付近の天候が変化するようなことはない。
  • 下降気流を伴うことはない。
  • 塵旋風の直下や付近に建物などが存在した場合、甚大な被害を及ぼす可能性は低い。
  • 塵旋風の規模を計る指標基準は特にない。
竜巻 Tornado
竜巻の定義

発生要因

2008年4月、ポーランドクラクフ市で撮影された塵旋風の連続写真。

まず、太陽光などによって地表温度が上がり、同時に地表付近の大気が熱せられることで混合層内にセル状の対流(ベナール対流)または、乱流状の対流が発生する。収束域(上昇気流域)になんらかの原因[7]で発生した大規模な回転(回転源)が加わると、角運動量保存のためコンパクトで強力な渦になり、塵旋風になると考えられている。つまり、塵旋風が発生する時の上空は混合層がよく発達した強い日差しの晴天であることが多い。これは、竜巻が発生する時の上空の様子とは大きく異なる点であるが、収束による鉛直渦度の引き伸ばしという直接的な原因は竜巻や、水面で見られる蒸気旋風などと同様である。

暖候期の晴天時に強風の注意報警報が出れば発生しやすい気象条件と言えるが、寒候期においても晴天時に強風が加われば発生する気象条件となり得る。また、地表だけでなく海面や湖面でも発生する可能性がある。なお、太陽光ではなく、建物火災山火事などで地表が熱せられて渦巻状の火柱が立ち上る現象は火災旋風と呼ばれる。




  1. ^ 一般風が弱いきに発生しやすいという指摘や、風速15mの場合には渦があまり強くならないという指摘もある。「塵旋風に関する数値的研究」伊藤純至「塵旋風の構造と強化・維持過程に関する数値的研究」大野洋,竹見 哲也PDF資料より。2013年5月17日閲覧。
  2. ^ a b インターネット百科事典ジャパンナレッジ」より、「デジタル大辞泉」(小学館・1998年)や「ランダムハウス英和大辞典 第2版」(小学館・1994年)などの該当項目から。2011年7月14日閲覧。
  3. ^ 図書「気象科学事典」の項目「塵旋風」および項目「竜巻」より。編纂:日本気象学会、出版:東京書籍、発行:1998年、ISBN 4487731372, ISBN 978-4487731374
  4. ^ 気象庁「予報用語・風」 の項目「竜巻」より。2011年7月14日閲覧。
  5. ^ [www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/tebiki.pdf 『気象観測の手引き』] (PDF) 気象庁、1998年(平成10年)9月、2011年11月30日閲覧。
  6. ^ 気象庁・竜巻シンポジウム「わが国における竜巻の発生状況とこれまでの研究の取り組みについて」 2007年1月23日付 (PDF)  東京大学大気海洋研究所教授および日本気象学会理事長の新野宏による資料。2011年7月14日閲覧。
  7. ^ 対流により励起される渦という説が有力である。
  8. ^ 日本風工学会風災害研究会「風災害 No.7 / 日本風工学会風災害研究会2009年次報告」 2010年3月15日付より。PDF資料。2011年7月14日閲覧。
  9. ^ 宮崎地方気象台「平成23年3月17日に宮崎市で発生した突風について / 気象庁機動調査班による現地調査の報告」 2011年3月18日付より。PDF資料。2011年10月23日閲覧。
  10. ^ a b NASA / JPL Press Release Images : Spirit "Spirit's Wind-Driven Traveler on Mars (Spirit Sol 486)" 27-May-2005 (2005年5月27日付、英語)より。本項目の画像として添付した、スピリットが火星で撮影した塵旋風についてのプレスリリース。文中ではダストデビル(Dust devil)が用いられている。なお、火星探査で用いられるソル(Sol)という単位は、火星の1日(地球と近い約24時間39分)を指し、その後に続く数字は滞在日数を指す。従って、Spirit Sol 486 とは「スピリット火星時間滞在486日目」という意味である。2011年7月14日閲覧。
  11. ^ NASA / NASA / JPL Press Release Images : Spirit "Dust Devils at Gusev, Sol 525" 19-Aug-2005 (2005年8月19日付、英語)より。2005年6月25日(地球時間)にスピリットが火星で撮影した塵旋風についてのプレスリリース。2011年7月14日閲覧。
  12. ^ NASA / NASA / JPL Press Release Images : Spirit "Dust Devils Whip By Spirit, Sol 1120" 12-April-2007 (2007年4月12日付、英語)より。2007年2月26日(地球時間)にスピリットが火星で撮影した塵旋風についてのプレスリリース。2011年7月14日閲覧。
  13. ^ ヴァーチャル展示「和書のさまざま『第一部・本を形づくるもの』」 より。国文学研究資料館の整理閲覧部参考室による、旋風葉の解説。2011年7月14日閲覧。


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