マッチ マッチの概要

マッチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/02 04:21 UTC 版)

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燃えるマッチ

概要

ブックマッチ(カタルーニャ語の歌付き)

などでできた細く短い軸の先端に、発火性のある混合物(頭薬)をつけた形状をしている。リンの燃えやすい性質を利用している。19世紀半ばには側面に赤燐を使用し、発火部の頭薬に塩素酸カリウムを用い、頭薬を側薬(横薬とも)にこすりつけないと発火しない安全マッチが登場した。

発火点は約150度。マッチは一度濡れると頭薬の塩素酸カリウムが溶け出てしまうために、それを乾かしたとしても使えなくなってしまう[1]。そのため、防水マッチが考案されている。

現在日本で見られるマッチは、通常軸が木製で、に収められているものが一般的である。軸木にはポプラシナノキサワグルミエゾマツトドマツなどが使われる。日本で現在製造されているマッチの軸木は殆どが中国スウェーデンからの輸入品である。箱の大きさは携帯向けの小箱から、卓上用の大箱まで様々なものがある。また、軸が厚紙製で、折り畳んだ表紙に綴じられているブックマッチもある。

古代から使われていた火打石や種火の保管などに比べて容易かつ安全に着火できるため、かつては広く用いられた。現在ではコンロストーブなどの火を使う製品にはほぼ漏れなく点火装置が付き、煙草の着火用としてもライターが普及。さらに喫煙率の低下もあって、マッチの需要は大きく低下している。実際の用途としては、仏壇のある家庭で蝋燭の着火用や、学校などで理科の授業にアルコールランプなどを点火するためというのが多い。なお喫煙器具の一種であるパイプ用には炎が横に噴き出る専用のライターもあるが、流通が限定されるため、マッチが利用されている。

かつては殆どの家にマッチがあったことから、大きさの比較対象として、マッチを被写体の横に並べて写真を撮影することは現在でも見られる。

マッチ箱自体に広告を印刷することが可能であるため、安価なライターが普及した現在でも、飲食店宿泊施設等では自店の連絡先等を入れたマッチ(小箱のもの、またはブックマッチが多い)を、サービスで客に配ることが多い。このような様々なマッチ箱を収集の対象とする者もおり、日本の神戸市にはマッチ箱を集めた私設の「たるみ燐寸博物館」が2015年に開設された[2]

原料

頭薬の燃焼

主な原料は頭薬・側薬になる薬品と、軸・箱になる木・紙である[3]

頭薬
塩素酸カリウム硫黄(いおう)、(にかわ)、ガラス粉、松脂(まつやに)、珪藻土顔料染料
しばしば頭薬にリンが使われているという表記が散見されるが、少なくとも1900年代半ば頃以降は軸部分にリンを用いていない。
側薬
赤燐(せきりん)、硫化アンチモン塩化ビニルエマルジョン

歴史

安全マッチ
硫化燐マッチ

火は人間の生活に必要不可欠のものだが、木の摩擦熱や火打石による発火法は手間のかかる作業だった。圧気発火器がヨーロッパに伝わると若干手間は減ったがマッチと比較すると不便であった。

1827年イギリスの化学者ジョン・ウォーカー塩素酸カリウム硫化アンチモンを頭薬とする摩擦マッチを考案した。形態的には現在のマッチとほぼ同じであったが、火付けが悪かった。

このため、1830年に、フランスソーリア黄燐マッチを発明した。これは頭薬をどんなものにこすりつけても発火するため普及したが、その分、自然発火が起こりやすかった。また黄燐がもつ毒性が問題となって、製造者の健康被害が社会問題化した。そのため、19世紀後半に黄燐マッチは禁止されてゆき、1906年スイスベルンで黄燐の使用禁止に関する国際会議が開かれて、黄燐使用禁止の条約が採択され、欧米各国は批准した。しかし、マッチが有力輸出商品だった日本は加盟しなかった。

日本では、1875年(明治8年)に国産品の製造が始まった(1875年4月清水誠が東京で製造販売を開始。新燧社の起源[4])が、当時から命を縮めるとして一般からは嫌われたため、しばらくは監獄内で囚人刑務作業により作られていた時期がある[5]。結局、1921年大正10年)になって日本は、4月11日黄燐燐寸製造禁止法を公布し、ようやく黄燐マッチの製造を禁止したが、日本における黄燐による健康被害の実態については、不透明な部分が多い。

その後、赤燐を頭薬に使用し、マッチ箱側面にヤスリ状の摩擦面をつけた赤燐マッチが登場。19世紀半ばには側面に赤燐を使用し、発火部の頭薬に塩素酸カリウムを用い、頭薬を側薬(横薬とも)にこすりつけないと発火しない安全マッチが登場した。アメリカでは黄燐マッチ禁止後も摩擦のみで発火するマッチの需要があり、安全マッチの頭薬の上に硫化リンを使った発火薬を塗った硫化燐マッチが今日でも用いられている。この硫化燐マッチは強い摩擦を必要とするので、軸木が安全マッチより太く長い物が用いられるのが大半である。

なお、硫化燐マッチは日本ではロウマッチという名でも知られるが、後述する防水マッチと混同しないように注意。名の由来は、どこですっても発火する黄燐マッチのマッチ棒に塗られた黄燐がロウと外見が似ていたことからであるとされ、黄燐マッチが製造禁止された後に発売された硫化燐マッチもその名で呼び続けられたとされる。なお、諸外国ではS.A.W. (STRIKE ANYWHERE MATCHES、和訳:どこで擦っても火がつくマッチ)や、頭薬の先端部に白色の硫化燐を目玉状に塗布されている外見から、バードアイマッチという名で知られている。[6][7]


注釈

  1. ^ 子供の工場勤めはなくなったが、内職の手伝いという形での労働はこの後も長く続いた。
  2. ^ 該当の火災ではユーザーがコーティングのことを知らなかったと推察され、火花が出ないことに対して何度も棒を強くこすりつけ、オイルが周囲に飛び散っていた。その状況下で発火してしまい、マッチ棒のみならず本体側より炎が発生、慌てたユーザーが本体の炎に気を取られた隙に棒の炎がゴミ袋に引火、初期消火に失敗したことも相まり火災へと発展した。

出典

  1. ^ 管野浩編 『雑学おもしろ事典』 p.356 日東書院 1991年
  2. ^ 小野隆弘「マッチの美 ハートに火◇喫茶店やバー、宣伝を超えた芸術 収集し私設博物館◇」『日本経済新聞』朝刊2018年3月5日(文化面)
  3. ^ 大石高志「近現代インドにおけるマッチ産業と女性・児童の労働 : 矮小化と弾力性の表裏関係]」80頁図。83頁にはスウェーデンについて、1930 - 50年代に紙箱に変わったとある。
  4. ^ 清水誠先生伝 松本三都正
  5. ^ 「値段は当分変わらぬ 品質はほとんど戦前なみ」『日本経済新聞』昭和25年10月17日
  6. ^ 燐寸倶楽部 - こんなマッチ知ってる? - 「ロウマッチ ―― 名前の由来」 - 黒田 康敬 2003年(平成15年)6月9日 (参考文献:1910年(明治43年)8月20日発行 石井研堂著「少年工芸文庫・マッチの巻」、1935年(昭和10年)8月16日発行 大阪時事新報「竹軸マッチ」):[1]
  7. ^ 燐寸倶楽部 - こんなマッチ知ってる? - 「ロウマッチ ―― バードアイマッチ」 - 黒田 康敬 2003年(平成15年)7月1日: [2]
  8. ^ 大石高志「近現代インドにおけるマッチ産業と女性・児童の労働」。
  9. ^ 大石高志「近現代インドにおけるマッチ産業と女性・児童の労働」81-84頁。
  10. ^ 関崎正夫「マッチと清水誠:日本で初めてマッチの国産化をした人」『金沢大学サテライト・プラザ「ミニ講演」講演録集』、金沢大学大学教育開放センター、2006年、2019年10月16日閲覧。
  11. ^ マッチ業界の多角化 - マッチの世界(日本燐寸工業会)
  12. ^ 横山源之助『日本の下層社会』157頁。
  13. ^ 横山源之助『日本の下層社会』31頁、159-160頁。
  14. ^ 横山源之助『日本の下層社会』162-165頁。
  15. ^ 「府下貧民の真況」27頁。松原岩五郎『最暗黒の東京』35頁。横山源之助『日本の下層社会』157-158頁。津田真澄『日本の都市下層社会』58-61頁。
  16. ^ マッチの歴史大和産業株式会社ホームページ 2017年2月6日閲覧
  17. ^ “燐寸の世界”. 日本燐寸工業会. http://www.match.or.jp/talk/talk01.html 2014年12月19日閲覧。 
  18. ^ ネットライブ配信中にオイルマッチで火事になるまさにその瞬間が海外でもニュースになる


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