炉心溶融
別名:メルトダウン
英語:melt-down
原発事故において、炉心の内部に格納された核燃料が高温により溶け出し、炉心を溶解・破損する現象。原発事故の中でも最も過酷な事態の一つとされる。
炉心溶融のうち、炉心が全て高温によって溶融した状態を特に、「全炉心溶融」(フルメルトダウン)と呼ぶ。また、メルトダウンにより原子炉の底に落下した核燃料が、原子炉を破損して炉外に露出することを、「メルトスルー」と呼ぶこともある。
1979年に発生したスリーマイル島原子力発電所事故と、映画「チャイナシンドローム」の影響で、炉心溶融事故を「チャイナシンドローム」と呼ぶこともある。チャイナシンドロームとは、メルトダウン・メルトスルーした核燃料を指す冗談交じりの表現である。
2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の原発事故では、当初、炉心溶融は発生していないと発表されていたが、後に撤回し、5月12日に原子炉1号機で事故発生後まもなく炉心溶融が起こっていたことを認め、5月25日までに2号機、3号機でも炉心溶融が発生した可能性のあることを認めている。
炉心溶融
炉心溶融
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/30 23:00 UTC 版)
炉心溶融(ろしんようゆう)、あるいはメルトダウン(英語: nuclear meltdown, core meltdown)[1][2]とは、原子炉中の制御棒やステンレススチール製の支持構造物等を含む燃料集合体が核燃料の過熱により融解すること。または燃料被覆管の破損などによる炉心損傷で生じた燃料の破片が過熱により融解すること[3]。
- ^ “メルトダウン”. コトバンク. 2022年12月23日閲覧。
- ^ “What is a "meltdown"? Can a meltdown be prevented? - About Emergency Response - Frequently Asked Questions About Emergency Preparedness and Response”. United States Nuclear Regulatory Commission. 2023年3月31日閲覧。
- ^ “原子力防災基礎用語集:さくいん”. 原子力安全技術センター. 2011年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月7日閲覧。など
- ^ ATOMICA 軽水炉燃料の炉内挙動(通常時)「原子炉運転中の被覆管温度は約550Kから700Kである。」
- ^ ATOMICA 燃料棒内温度分布(典型例)
- ^ 二酸化ウランの融点は2865 °C (3140 K)と、鋼よりも遥かに高い。
- ^ “4号機、燃料溶融寸前だった…偶然水流入し回避”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2011年4月28日). オリジナルの2013年5月1日時点におけるアーカイブ。
- ^ National Research Council (2006). Safety and Security of Commercial Spent Nuclear Fuel Storage: Public Report. National Academies Press. doi:10.17226/11263. ISBN 978-0-309-09647-8
- ^ 炉心損傷に関する現状と課題 (PDF) 日本原子力研究所(JAERI)1982年5月 IAEAサイト
なお、同報告書では炉心損傷事故(Severe Core Damage Accident)あるいは炉心損傷と訳出して,SCDというアブレビに対応させている(pi,p1)。カタカナ語のメルトダウンの語源であるmelt downに対しては「溶融落下」という訳出がなされている(p28)。 - ^ カナダELYSIUM社の溶融塩原子炉、メルトダウンなく安全、10年後の実現目指す『日経ものづくり』(2018年1月31日)2018年5月21日閲覧。
- ^ 炉心溶融挙動を予測する新しい数値シミュレーションコードの開発~デブリの詳細な組成分布の推定に光が見えた~国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(2018年3月23日)2018年5月21日閲覧。
- ^ 「メルトダウン詳細に再現 原子力機構 燃料堆積状況など把握」『日経産業新聞』2018年5月10日(先端技術面)。
- ^ ATOMICA チェルノブイリ原子力発電所事故の経過 (02-07-04-12) 図6 象の足
- ^ 齊藤誠:原発危機の経済学 (PDF)
- ^ a b 小林健介、石神努、浅香英明、秋元正幸:BWRの炉心損傷・炉心溶融事故解析の現状 日本原子力学会誌 Vol.27 (1985) No.12 P1093-1101
- ^ 大坪国順「〈随筆〉福島第一原子力発電所の事故に関わる疑問点」『地球環境学』第9号、上智地球環境学会、2014年3月、109-119頁、ISSN 18807143。
- ^ Ralph Eugene Lapp は1971年に次のように述べており、これがチャイナ・シンドロームの最初の用例とされている。 : ・・・ The behavior of this huge, molten, radioactive mass is difficult to predict but the Ergen report contains an analysis showing that the high-temperature mass would sink into the earth and continue to grow in size for about two years. In dry sand ahot sphere of about 100 feet in diameter might form and persist for a decade. This behavior projection is known as the China syndrome. ・・・ ("Thoughts on Nuclear Plumbing," New York Times, 12 Dec. 1971, p.E11)
引用中の the Ergen report とは、The Ergen Report, 1967 – ECCS, Meltdown studies. by W K Ergen; U.S. Atomic Energy Commission. Advisory Task Force on Power Reactor Emergency Cooling. - ^ 金谷俊秀. "チャイナシンドローム". 知恵蔵2015. 朝日新聞社. 2013年1月12日閲覧。
- ^ 山崎久隆「隠された原発大事故--福島第1原発2号・1981年5月12日」『世界』第586巻、世界、1993年9月、266-273頁、NAID 40002107787。P267
「原発で問題なのは、スクラムで核分裂反応を止めても、燃料の中に出来ている放射性物質の崩壊熱で、原子炉停止直後も、長時間にわたって大きな熱を出すことである。(中略)この冷却に失敗すれば、燃料棒は自ら発する熱のために、ついには溶け出して崩れ落ちる。これをメルトダウンという」と述べられている。 - ^ 水―ジルコニウム反応について
- ^ “運転状態を踏まえたBWRにおける可燃性ガスへの対応” (PDF). 電気事業連合会 (2010年1月19日). 2011年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月7日閲覧。
- ^ “3号機にホウ酸注入、再臨界防止に1・2号機も”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2011年3月16日). オリジナルの2013年5月1日時点におけるアーカイブ。
- 1 炉心溶融とは
- 2 炉心溶融の概要
- 3 炉心溶融による被害
- 4 過去の炉心溶融
炉心溶融
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詳細は「炉心溶融」を参照 原子力発電所で起こり得る最悪の事故としては炉心溶融(メルトダウン)が挙げられる。これは、原子炉の炉心冷却が不十分な状態が続いた結果、もしくは炉心の異常な出力上昇の結果、炉心温度が上昇して溶融に至る事故である[要出典]。最悪の場合は水素爆発や、より威力が強く破壊される範囲が広い水蒸気爆発などを誘発し、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋等を破壊し、原子力発電所の外に放射性物質を大量に拡散させる恐れがある。 炉心溶融を防止するために、現在は冷却材喪失事故の防止策として非常用炉心冷却装置等の設置、また異常な出力上昇の防止策として原子炉に自己制御性を持たせている。 しかし、現在までに3件以上の事例が記録されており、チェルノブイリ原子力発電所事故では広範囲に放射性物質を拡散させ、一部は日本や中国などの極東においても計測された。また、2011年3月の福島第一原子力発電所事故では1、2、3号炉で炉心溶融が発生していた。
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