ゲノム研究とは? わかりやすく解説

ゲノミクス

(ゲノム研究 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/09 13:55 UTC 版)

ゲノミクス: genomics、ジェノミクス)とは、生物が持つ全遺伝情報であるゲノムを対象として、その配列、構造、機能および進化や相互作用を大規模かつ統合的に解析・解釈する生命科学の一分野である。

1980年代以降に形成され、1990年代のヒトゲノム計画を契機とする配列解析および計算解析技術の発展とともに進展した。現在では、生物の機能や進化の理解を支える基盤分野として、医療農業生物工学環境科学など多様な領域で応用されている。

歴史

初期の配列解析の取り組み

ロザリンド・フランクリンがX線回析によってDNAのらせん構造を確認し[1]、ジェームズ・D・ワトソンとフランシス・クリックが1953年にDNAの構造を発表し[1]、フレッド・サンガーが1955年にインスリンのアミノ酸配列を発表した[2]後、核酸配列決定は初期の分子生物学者の主な目標となった。 1964年、ロバート・W・ホーリーとその同僚は、これまでに決定された最初の核酸配列であるアラニン転移RNAのリボヌクレオチド配列を発表した。[3]この研究を拡張して、マーシャル・ニーレンバーグとフィリップ・レーダーは遺伝コードのトリプレットの性質を明らかにし、実験で64のコドンのうち54の配列を決定することができた。[4]

ゲノム解析

ある生物が対象に選ばれた後、次の三つの段階を経る。:シーケンシング、アセンブリ、アノテーション。[5]

ゲノムプロジェクト概要。初めに、解析対象ゲノムが選ばれる。この選択は、コストや研究の妥当性などの要因を勘案してなされる。第二に、シーケンシングが実行され、アセンブリされる。第三に、アノテーションを様々なレベルでおこなう。: 遺伝子、タンパク質、gene pathways、種間比較

シーケンシング

歴史的に見ると、初め、シーケンシングはシーケンシングセンターという中央集中型の施設(一年に数十テラ塩基の配列決定をおこなうJoint Genome Instituteのような巨大独立行政法人に囲まれた施設)で行われていた。そこには高価な実験器具や技術サポートを必要とする研究室が集まっていた。しかし、塩基配列決定技術が進歩し、十分に高速なベンチトップ型のシーケンサーができると、平均的なアカデミックラボでもシーケンサーを使えるようになってきた。[6][7]

全体的に見て、ゲノムシーケンシングの手法は二つに区分される。ショットガンシーケンシングとハイスループットシーケンシング(いわゆる、次世代シーケンシング)である。 [5]

An ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer. このようなキャピラリーシーケンサーによって、初期のゲノムシーケンシング作業が自動化された。
Illumina Genome Analyzer II System. Illumina technologiesは標準的なhigh throughput massively parallel sequencing技術である。

アセンブリ

Overlapping reads form contigs; contigs and gaps of known length form scaffolds.
next generation sequencing data のPaired end reads を reference genome にマップしている。
複数の断片化された sequence reads は、どの領域が重複しているかという情報を基にアセンブリされる。

配列アセンブリは大量のDNA配列断片をアライメントし、繋ぎ合わせ、オリジナルの配列を再構築することである。[5] [8]

アノテーション

アセンブリされたDNA配列は、さらに追加の解析がなされないとほとんどの場合価値はない。[5] ゲノムアノテーションはDNA配列に生物学的情報を付加し、意味付けするプロセスである。

このプロセスは三つのステップからなる。[9]

  1. ゲノムの非コード領域部分を同定する。
  2. タンパク質をコードする遺伝子など、何らかの機能を持つと推測される領域を同定する。(gene prediction)
  3. これらの要素に生物学的情報を付加する。

出典

  1. ^ a b 『新課程 チャート式シリーズ 新生物 生物基礎・生物』数研出版株式会社、2023年2月1日。 
  2. ^ 成田, 耕造 (1959-02-15), -- 1958年度ノーベル化学賞受賞者 Dr. Frederic Sangerの業績, doi:10.11477/mf.2425906061, https://doi.org/10.11477/mf.2425906061 2026年3月9日閲覧。 
  3. ^ Nobel Prize in Physiology or Medicine 1968” (英語). NobelPrize.org. 2026年3月9日閲覧。
  4. ^ 泰宏, 古市. “日本RNA学会 - <走馬灯の逆廻しエッセイ> 第20話 「大河ドラマ・ゲノムコード解読の人たち」<Takanami, Kaji, Nirenberg, Leder, Khorana, Nishimura>”. www.rnaj.org. 2026年3月9日閲覧。
  5. ^ a b c d Pevsner, Jonathan (2009). Bioinformatics and functional genomics (2nd ed.). Hoboken, N.J: Wiley-Blackwell. ISBN 9780470085851 
  6. ^ Monya Baker (2012年9月14日). “Benchtop sequencers ship off” (Blog). Nature News Blog. 2012年12月22日閲覧。
  7. ^ Quail, M.; Smith, M. E.; Coupland, P.; Otto, T. D.; Harris, S. R.; Connor, T. R.; Bertoni, A.; Swerdlow, H. P. et al. (2012). “A tale of three next generation sequencing platforms: Comparison of Ion torrent, pacific biosciences and illumina MiSeq sequencers”. BMC Genomics 13: 341. doi:10.1186/1471-2164-13-341. PMC 3431227. PMID 22827831. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3431227/. 
  8. ^ 北上 始, 太田 聡史, 斎藤 成也:「ビッグデータ時代のゲノミクス情報処理」、コロナ社、ISBN 978-4339024852(2014年10月)
  9. ^ Stein, L. (2001). “Genome Annotation: From Sequence to Biology”. Nature Reviews Genetics 2 (7): 493–503. doi:10.1038/35080529. PMID 11433356. 

関連項目

外部リンク


ゲノム研究

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/29 17:17 UTC 版)

ゾウギンザメ」の記事における「ゲノム研究」の解説

2014年1月ネイチャー誌は、ゾウギンザメゲノム解析結果により、軟骨を骨に変える過程制御する遺伝子ファミリー欠如しており、遺伝子重複骨質脊椎動物への遷移引き起こしたことを示唆する研究結果報告したゾウギンザメは、その比較小さなゲノムサイズから、軟骨魚類のゲノムモデルとして提唱されている。ゲノム910 Mb長と推定され軟骨魚綱では最小で、3000 Mbヒトゲノム比べて3分の1である。軟骨魚綱は、現存する最古顎口上綱グループであり、ゾウギンザメゲノムは約4億5000万年前に共通の祖先を持つ、ヒトを含む脊椎動物ゲノム起源進化研究する上で有益な参照ゲノムとなりうる。

※この「ゲノム研究」の解説は、「ゾウギンザメ」の解説の一部です。
「ゲノム研究」を含む「ゾウギンザメ」の記事については、「ゾウギンザメ」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ゲノム研究」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳

英語⇒日本語日本語⇒英語

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ゲノム研究」の関連用語

ゲノム研究のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ゲノム研究のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのゲノミクス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのゾウギンザメ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2026 GRAS Group, Inc.RSS