ゲノム研究とは? わかりやすく解説

ゲノミクス

(ゲノム研究 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 14:06 UTC 版)

ゲノミクス: genomics、ジェノミクス)とは、ゲノム遺伝子について研究する生命科学の一分野。ゲノム学(ゲノムがく)、ゲノム科学(ゲノムかがく)とも。

ゲノミクスは1980年代に現れ、1990年代のゲノムプロジェクトの開始とともに発展した。初めて完全長のゲノムが解読されたのはバクテリオファージFX174 (5,368 kb) で1980年のことである。自由生活生物としてはインフルエンザ菌で1995年。以来、猛烈な速さでゲノム解読が進行している。ヒトゲノムのおおまかな配列はヒトゲノムプロジェクトによって2001年前半に解読されている。

ポストゲノムプロジェクトのゲノミクスとして、さまざまな生物種のゲノムを比較することで、進化の解明を試みる比較ゲノミクスや、RNAiなどによる遺伝子阻害から、全体論的な機構解明を行う機能ゲノミクスなどがある。ゲノミクスではバイオインフォマティクス遺伝学分子生物学をツールとして用いるとともに、システム生物学のツールとしても用いられる。またゲノミクスは医療の分野に新たな治療法を提供してきている(ファーマコゲノミクス)。食品(ニュートリゲノミクス)や農業の分野へも応用される。

ゲノム解析

ある生物が対象に選ばれた後、次の三つの段階を経る。:シーケンシング、アセンブリ、アノテーション。[1]

ゲノムプロジェクト概要。初めに、解析対象ゲノムが選ばれる。この選択は、コストや研究の妥当性などの要因を勘案してなされる。第二に、シーケンシングが実行され、アセンブリされる。第三に、アノテーションを様々なレベルでおこなう。: 遺伝子、タンパク質、gene pathways、種間比較

シーケンシング

歴史的に見ると、初め、シーケンシングはシーケンシングセンターという中央集中型の施設(一年に数十テラ塩基の配列決定をおこなうJoint Genome Instituteのような巨大独立行政法人に囲まれた施設)で行われていた。そこには高価な実験器具や技術サポートを必要とする研究室が集まっていた。しかし、塩基配列決定技術が進歩し、十分に高速なベンチトップ型のシーケンサーができると、平均的なアカデミックラボでもシーケンサーを使えるようになってきた。[2][3]

全体的に見て、ゲノムシーケンシングの手法は二つに区分される。ショットガンシーケンシングとハイスループットシーケンシング(いわゆる、次世代シーケンシング)である。 [1]

An ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer. このようなキャピラリーシーケンサーによって、初期のゲノムシーケンシング作業が自動化された。
Illumina Genome Analyzer II System. Illumina technologiesは標準的なhigh throughput massively parallel sequencing技術である。

アセンブリ

Overlapping reads form contigs; contigs and gaps of known length form scaffolds.
next generation sequencing data のPaired end reads を reference genome にマップしている。
複数の断片化された sequence reads は、どの領域が重複しているかという情報を基にアセンブリされる。

配列アセンブリは大量のDNA配列断片をアライメントし、繋ぎ合わせ、オリジナルの配列を再構築することである。[1] [4]

アノテーション

アセンブリされたDNA配列は、さらに追加の解析がなされないとほとんどの場合価値はない。[1] ゲノムアノテーションはDNA配列に生物学的情報を付加し、意味付けするプロセスである。

このプロセスは三つのステップからなる。[5]

  1. ゲノムの非コード領域部分を同定する。
  2. タンパク質をコードする遺伝子など、何らかの機能を持つと推測される領域を同定する。(gene prediction)
  3. これらの要素に生物学的情報を付加する。

出典

  1. ^ a b c d Pevsner, Jonathan (2009). Bioinformatics and functional genomics (2nd ed.). Hoboken, N.J: Wiley-Blackwell. ISBN 9780470085851 
  2. ^ Monya Baker (2012年9月14日). “Benchtop sequencers ship off” (Blog). Nature News Blog. 2012年12月22日閲覧。
  3. ^ Quail, M.; Smith, M. E.; Coupland, P.; Otto, T. D.; Harris, S. R.; Connor, T. R.; Bertoni, A.; Swerdlow, H. P. et al. (2012). “A tale of three next generation sequencing platforms: Comparison of Ion torrent, pacific biosciences and illumina MiSeq sequencers”. BMC Genomics 13: 341. doi:10.1186/1471-2164-13-341. PMC 3431227. PMID 22827831. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3431227/. 
  4. ^ 北上 始, 太田 聡史, 斎藤 成也:「ビッグデータ時代のゲノミクス情報処理」、コロナ社、ISBN 978-4339024852(2014年10月)
  5. ^ Stein, L. (2001). “Genome Annotation: From Sequence to Biology”. Nature Reviews Genetics 2 (7): 493–503. doi:10.1038/35080529. PMID 11433356. 

関連項目

外部リンク


ゲノム研究

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/29 17:17 UTC 版)

ゾウギンザメ」の記事における「ゲノム研究」の解説

2014年1月ネイチャー誌は、ゾウギンザメゲノム解析結果により、軟骨を骨に変える過程制御する遺伝子ファミリー欠如しており、遺伝子重複骨質脊椎動物への遷移引き起こしたことを示唆する研究結果報告したゾウギンザメは、その比較小さなゲノムサイズから、軟骨魚類のゲノムモデルとして提唱されている。ゲノム910 Mb長と推定され軟骨魚綱では最小で、3000 Mbヒトゲノム比べて3分の1である。軟骨魚綱は、現存する最古顎口上綱グループであり、ゾウギンザメゲノムは約4億5000万年前に共通の祖先を持つ、ヒトを含む脊椎動物ゲノム起源進化研究する上で有益な参照ゲノムとなりうる。

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