PENTAX SFシリーズ
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「PENTAXの銀塩一眼レフカメラ製品一覧:35mm判 (KマウントAF機種)」の記事における「PENTAX SFシリーズ」の解説
PENTAX SFシリーズとは、旭光学工業初のAFシリーズである。ちなみにその名称は"Super Focus"より由来する。 旭光学工業もME F(1981年11月発売)の後もAF化の開発研究を続けてはいたものの、1984年末にミノルタによって世界初のAFシステムカメラである『ミノルタα-7000』が完成すると、一眼レフカメラメーカーすべてがその遅れを挽回する側に回ることとなったのである。これは業界全体を揺るがす大きな出来事であったために、後に「αショック」と言われるようになった。 その「αショック」による急激なAF化のニーズに応えるべく『PENTAX SFX』は短期間で会社の総力を結集して開発された。初代のAF機である『PENTAX ME F』のアピール不足による反省から、今度はシリーズまるごとAF化への刷新を行い、全機種のワインダー内蔵化による巻上げ巻き戻し作業の全自動化、交換式ファインダースクリーン、交換式データバック、外部リモートレリーズの新規格化などの対応アクセサリーも専用のものへと一新され、また高度に電子化されたAEカメラの操作に特化したボディデザインの採用など、新世代のカメラであることを全面的にアピールする商品展開を行った。 同じ物では競争にならないといった判断から、付加価値として世界初の格納型(リトラクタブル)TTLダイレクト測光方式のフラッシュをボディ内に搭載し、先行他社製品との差別化を図った。また暗所での合焦性能を向上させるため、非球面レンズを使用したAF補助光装置も搭載され、内蔵TTLフラッシュの利便性の向上が図られた。 AF機構に関しては、従来の精度は高いものの実用面で問題があった「コントラスト検出方式」AFマウントであるKFマウントではなく、新たに「位相差検出方式」AFマウントとして新規開発されたKAFマウントを実装し、ようやくAF合焦精度と速度のバランスが実用レベルに達した。その新機能に対応したSMCペンタックス-Fレンズ群も同時に用意され、その新レンズ群のデザイン、機構も従来のMFレンズ群より一新された。 ボディデザインは、従来のシリーズとはがらりと変わって大型化され、電子化されたAEカメラに最適化された筐体デザインとなった。主な特徴は、液晶パネルがペンタ部に移り、各情報の視認性の向上が図られたこと。また、内蔵フラッシュ用大型コンデンサの搭載位置の関係から、グリップ部が大型化され、ホットシューが軍艦部右肩に移ったことなどが挙げられる。グリップ感の良さや、使い勝手が良かったことなどから、この基本デザインは次のZシリーズにも継承される。 その企業努力の甲斐もあってかSFシリーズは成功を収め、また世界初のズームレンズ内蔵コンパクトカメラの『ペンタックスズーム70』の成功と相まって、旭光学工業の窮地を救うこととなった。国内においてこのSFシリーズは、全モデルにデータバック(クォーツデート機能)のある製品と、ない製品の2種類がラインナップされた。 SFX / クォーツデート - 1987年3月発売。『ペンタックスSFX』とは、ミノルタの『α-7000』より遅れること2年、満を持して登場したシリーズ第1号機である。地味なスペックではあるがカメラとしての基本は押さえており、当時のAFカメラを望む多くの一般層に受け入れられた。売りであった世界初のTTL内蔵フラッシュだけではなく、軍艦部、液晶表示部を撮影者側に傾斜させたことによる操作性、視認性の向上を考慮した筐体デザインなどから、α-7000を相当意識し、それ以上の製品を作ろうとした開発スタッフの努力が垣間見える。またフル・プラスチック外装ながらも、堅牢性も高く、まず最初にデザインされたという、グリップ部のホールディング性も良い。プロダクトデザイナーの工夫がうかがえるためか実用的な機種であったが、当時では実用性を重視しすぎた感のある奇抜なデザインや、発売時期がわずかに『キヤノンEOS650』に遅れを取ったことなどから、その販売実績や、実力に対してやや地味な印象を持たれているものの、後の多くの他社一眼レフカメラ製品に内蔵TTLフラッシュが採用されていることから、そのアイデアは正しかったといえる。 SF7 / クォーツデート - 1988年9月発売。『ペンタックスSF7』とは、SFシリーズの廉価機として登場した。初代機SFXとの差別化のためか、配色や表面処理は、同時期に発売されたSFXNに合わせられ、グレーの胴体部が「平面処理」から「梨地処理」に変更されている他、マウント左脇のフォーカスモードセレクターの文字色が赤に変更された。SFXから、マルチプログラム、視度調整機能が省略されたが、ペンタックス初の多分割測光機能である2分割測光(SPD素子)の採用や電池ボックスが底板の開閉フタ式に変更されるなど廉価機といえどもスペック、実用面においては従来の上位機種であるSFXとも遜色がなく一面では上回る機種であった。注目すべき点は、形状、スペックにおいてSFX/XNと酷似するが、内部構造が大きく異なり、パーツの一体成形化、組立工程の簡略化などの各所に大幅なコストダウンが図られていることである。後のZシリーズ廉価機のベース機になったが、やや大型なのはペンタプリズム(銀蒸着)を採用しているためである。なおこの機種よりフォーカシングスクリーンが、より明るい「アスフェリックマイクロマットスクリーン」が採用される。この機種の大きな欠点はネガフィルムを主に使う層を対象と考えたためか大幅に露出がオーバーとなることだった。露出補正もフィルム感度のマニュアル設定も出来ないためリバーサルフィルム使用時にはDXコードを改造するしかなかった。 SFXN / クォーツデート - 1988年11月発売。『ペンタックスSFXN』とは、AF機における激しい技術競争の中でわずか2年足らずで性能的に古くなってしまったSFXの後継機種である。シャッター速度がペンタックス・カメラ初の最高1/4000秒を実現し、フラッシュ同調速度は1/125秒にまで引き上げられた。そればかりではなく、連射性能の向上や、オートブラケット機能の追加、低ミラーショックのためのミラーアップ機構の設計の見直しなどの大幅な改良とグレードアップが図られており、「N」、つまり“New”の名に止めておくには惜しい機種であった。従来のSFXに対して実力的にはワンランク以上の実質上の上位機種となったが、外装部品、デザイン、と目に見える部分がほとんど同一であるために、これもまた地味な印象の機種となってしまった。その酷似するSFXとの外装面での主な違いとして、先行発売されたSF7のカラーリングや「梨地処理」を踏襲しつつ、軍艦部の色がブラックからメタリック・ブラックとなったこと。他にグリップ部の“SFX”のプリントロゴがグリップ部のバッテリー蓋側(外側)から、本体側(内側)に変更された点などが挙げられる。
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