JR在来線における方式の違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/02 15:53 UTC 版)
「列車無線」の記事における「JR在来線における方式の違い」の解説
JR在来線においては、Aタイプ・Bタイプ・Cタイプとデジタル無線がある。 Aタイプ 列車無線のうち、指令局側と車上局側が同時送受信可能な複信方式のものを指す。指令局側と車上局側で別々の送信周波数を用いる。1981年に、山手線と京浜東北・根岸線のATC導入と共に配備されたが、その後埼京線と川越線、また国鉄分割民営化後に首都圏の他線区やミニ新幹線にも導入された。特に首都圏の在来線に配備されたものは新Aタイプと呼ぶこともある。基地局が352MHz帯、移動局が336MHz帯にそれぞれ対となる8チャネルが線区ごとに割り当てられている。1つの基地局の小ゾーンを最大16局を纏めた大ゾーン方式であり、それが1線区当たり最大で3ゾーンの配置となっていて、大ゾーンの分割区間では、その分割近くの基地局からLCXアンテナが伸びる形で設置されている。送信出力は基地局が3W、移動局が1Wである。通話のないときは、基地局から空線信号を出している。同一線区内は同一周波数で各基地局が同時送信するため激しい混信状態となるが、各基地局の無線周波数精度を±0.05ppm以内に保つこと、各基地局の音声の位相を最も遠い基地局に揃えることで、通話品質の劣化を抑えている。 Bタイプ 列車無線のうち大都市圏を中心に配備されたもので、指令局側は連続送信だが、車上局側は送信スイッチを押したときだけ送信する半複信方式であり、低コスト化を計ったものである。そのため、車両側では指令局からの受信と指令局への送信が同時には行えない(指令局側は送受信が同時に行える)。Aタイプと同じく大ゾーン方式であり、同じく指令局側と車上局側で別々の送信周波数を用いる。Aタイプのうち5チャンネル分を路線ごとに使い分けしている。なお、Aタイプとは上位互換があるほか、車上局側ではCタイプの無線機を内蔵している。Aタイプ同様、通話のないときは基地局から空線信号を出している。 Cタイプ A・Bタイプの列車無線を導入していない路線で使用しているタイプで400MHz帯に3波の割り当てがある。送信周波数と受信周波数が同一の単信方式であり、発声するときのみ送信スイッチを押して送信する。送信中は受信出来ないので交信相手の送信が終了してから応答送信する交互通話である。空線信号は出ていない。1つの基地局の小ゾーンを最大10局を纏めた大ゾーン方式であるが、A・Bタイプは違い、指令局側ではゾーンごとに無線操作盤が設置されており、運転指令員により手動で基地局を選択操作しての通話が可能である。旧国鉄で使用していた乗務員無線を継承したものである為、車上局側の無線機の形状は乗務員無線と同じ携帯形であり、車両側で常に充電機能を内蔵した取付台に装着されている。 Pタイプ Cタイプの列車無線を発展させたもので、音声通話のほかにデータ通信機能を付加させたものである。送受信周波数や発信方式はCタイプと同じであるが、通常の音声信号に混ざってデータ信号を送受信する。指令側にデータ送信用の機器を、列車側に受信機器のほか印刷用のプリンタをそれぞれ搭載し、音声での無線通信のほかに通告等の情報通信を行う。従来のCタイプと互換性がある。九州旅客鉄道(JR九州)で運用されている。 デジタル無線 東日本旅客鉄道(JR東日本)では、1986年から各車両に搭載している列車無線装置(主に新Aタイプ無線)が老朽取替の時期を迎え、特に首都圏では大雪や雷雨等の際に、全線区一斉の情報連絡や指令伝達を実施するなど高い利用率となっており指令通話回線の増強が必要で、また、列車支援運行業務の充実を図るため、指令通告、徐行区間情報、車両機器状態監視等の列車・地上間のデータ通信需要も拡大していることから、それらを可能にする無線システムの変更を目的として首都圏の新Aタイプ区間や一部のBタイプを導入している線区の列車無線装置を2007年から2010年にかけてデジタル化した。なお使用周波数帯域はほとんど新A・Bタイプと変わらない。また末端路線など一部路線はデジタル化の対象にはならず、アナログ方式のまま運用されている。デジタル列車無線の導入によって、運転台のモニター上への通告内容の表示、自社線や他社線の運行状況の確認が可能になるほか、東京圏輸送管理システム (ATOS) 導入路線における分単位での列車遅延状況の確認、走行線区の列車在線状況の表示といった、これまで運行乗務員では入手することのできなかった情報が容易に確認できるようになる。導入に当たっては、地上側では送受信アンテナの追加、調整が行われ、車両側では対応無線機への交換(デジタル式と従来のアナログA・B・Cタイプの両対応型)、受信感度向上のためのアンテナ追加、モニタ装置搭載車のソフトウェア更新、モニタ装置非設置車両への簡易モニタ装置設置工事などが進められた。車両側の改造はJR車両のみならず、直通運転のある東京メトロ、東京臨海高速鉄道など他社の車両についても同様に行われたほか、デジタル列車無線の導入を行わない路線の車両でも、臨時運転や検査に伴い他線を走行する事情も考慮して行われた。先行実施として、山手線で2007年8月26日からデジタル無線の運用を開始し、2008年度以降、約2年をかけて残る首都圏の在来線をアナログの周波数ごとに6回に分けてデジタル化した。 西日本旅客鉄道(JR西日本)ではJR宝塚線(尼崎 - 新三田)でD3chで2017年(平成29年)1月18日より、JR神戸・京都・琵琶湖線(姫路 - 米原)でD4chで2017年(平成29年)5月6日より運用を開始した。京阪神各線区においてもBタイプを置き換える形で順次導入予定。
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