エッチ‐エス‐ディー‐ピー‐エー【HSDPA】
HSDPA
HSDPAとは、第3世代携帯電話(3G)のデータ通信規格「W-CDMA」の拡張によって、下り方向(ダウンリンク)のデータ通信速度を高速化する規格のことである。
HSDPAでは、電波状況によって変調方式を自動的に選択し、より高速な通信を行うことができる。電波の状態が良好なときは、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)と呼ばれる高速な変調方式を用いてデータ転送を行う。逆に電波の状態が良くない場合には、速度は16QAMの1/4だが安定性が高いQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)によって変調し、さらに転送効率は低いが誤り訂正の能力が大きい符号化方式を用いることによって、確実にデータ転送が行われるように切り替えられる。
また、HSDPAでは、正常な送受信に失敗したデータを破棄せずに、再送時に利用してエラー発生時のデータ再送を抑えるHARQ(ハイブリッドARQ)方式や、基地局内の複数のユーザーのうち最も電波状況のよいユーザーの通信を優先する切り替え方式などを採用することで、さらに通信の高速化を図っている。
従来の通信方式である3G規格では、最大通信速度は2Mbps程度とされているが、HSDPAではおよそ14Mbpsまで通信速度を高速化することができるといわれている。
HSDPAは第3世代携帯電話(3G)の規格を標準化した3GPPによって策定された。3Gの拡張版であり、次世代方式となる4Gとの橋渡しをする通信方式であるという意味で、HSDPAは3.5Gと呼ばれることも多い。日本では2006年の半ばに、NTTドコモが提供する「FOMA」の拡張版「FOMAハイスピード」で提供が開始されている。
なお、下り方向の高速化技術であるHSDPAに対して、上り方向(アップリンク)に関する高速化技術は「HSUPA」(High Speed Uplink Packet Access)と呼ばれる。HSUPAは、FOMAハイスピードでは2009年に提供が開始される。なお、HSDPAとHSUPAは併せてHSPA(High Speed Packet Access)と総称される。
参照リンク
3GPP specification(HSDPA) - (英文)
High-Speed Downlink Packet Access
(HSDPA から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/24 02:18 UTC 版)
High-Speed Downlink Packet Access(HSDPA)は第3世代移動通信システム (3G) 通信プロトコルの一種でHSPAファミリーの1つであり、Universal Mobile Telecommunications System (UMTS) に基づくネットワークのデータ転送速度と容量を改善する。3.5G、3G+、turbo 3G などとも。HSDPAのサポートする下り転送速度は 1.8/3.6/7.2/14.4Mbit/s である。HSPA+ではさらに高速なデータ転送を実現しており、DC-HSDPAでは下り最大42Mbit/s、UMTS Release 9 では下り最大84Mbit/sとなっている[1]。
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- ^ a b c HSPA mobile broadband today
- ^ 3GPP TS 25.306 v9.0.0 http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html-info/25306.htm
- ^ 最大符号化率は制限されない。この欄の値が1に近いほど最大データ転送レートの実現には理想条件に近い状態が必要なことを意味する。
- ^ Telstra switches on 42 Mbps Next G, plans 84 Mbps upgrade in 2011 Comms Day
- ^ Indosat first in Asia to launch 42 Mbps HSPA+
- ^ Indosat gears up for 4G and launches Asia's fastest network - Ericsson
- ^ “Telus, Bell Announce Switch from CDMA to HSDPA”. 2011年3月6日閲覧。
- ^ Marlow, Iain (2009年11月3日). “Bell, Telus launch high-speed networks”. Toronto Star 2011年3月6日閲覧。
- ^ T-Mobile USA Finishes Upgrade to HSPA 7.2
- 1 High-Speed Downlink Packet Accessとは
- 2 High-Speed Downlink Packet Accessの概要
- 3 ロードマップ
- 4 採用例
- 5 参考文献
HSDPA
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/10 01:21 UTC 版)
詳細は「High-Speed Downlink Packet Access」を参照 HSDPAは、3GPP Release 5にて規定されている。物理チャネル速度としてセル当たり下り方向最大14.4Mbpsのパケット通信が可能である。 3GPP FDDのRelease '99規格に対して、物理レイヤでは以下のチャネルが追加された。 下り方向HS-PDSCH (High Speed Pysical Downlink Shared Channel) HS-SCCH (Shared Control Channel) 上り方向HS-DPCCH (Dedicated Physical Control Channel(uplink) for HS-DSCH) また、MACレイヤでは以下の機能を有するMAC-hsが物理レイヤと隣接する形で新設された。 基地局側フロー制御 - 上位レイヤに対して、無線側の通信速度に応じた適切なデータ送出速度を指示する機能。ただし、3GPP上では本機能を実現するアルゴリズムは規定されず、実装依存となっている。 スケジューリングおよび優先制御 - 上位ノードから通知された優先度情報を考慮しつつ、システム全体の総合的な通信効率を向上させることを目的として、端末にタイムスロットを配分する機能。ただし、3GPPにおいては本機能を実現するアルゴリズムは規定されず、実装依存となっている。 パケット合成型HARQ - Hybrid Automatic Repeat Requestの略。受信側で復号失敗データが破棄されずに再送データと組み合わせて復号されることを考慮した上で、再送パターンを決定する。複数のHARQプロセスが独立に動作する。 TFRIの選択 - TFRI (Transport Format Resource Index) はタイムスロットに割りあてたコード数、変調方式、データサイズを表しており、HS-SCCHを用いて端末に送信される。端末から送信された品質情報を用いて適切なTFRIを選択することで適応変調・符号化 (AMC: Adaptive Modulation and Coding)を実現する。ただし、3GPP上では本機能を実現するアルゴリズムは規定されず、実装依存となっている。 端末側パケット合成型HARQ - 受信失敗データを廃棄せずに再送データと組み合わせて復号を行う。複数のHARQプロセスが独立に動作する。復号成功時にはACK、復号失敗時にはNACKをHS-DPCCH上で伝送する。 順序制御 - 送信側のHARQがプロセスごとに独立に動作するため、初回送信時の時系列順に受信成功するとは限らない。本機能では、初回送信時の順序性を保持した上でデータを上位レイヤへ受け渡す。復号失敗の確認応答が基地局側で復号成功と誤判定してしまうなどの理由で、あるHARQプロセスについてデッドロックが発生することがある。本機能ではこのようなデッドロックを回避するために、受信されるべきデータの待ち時間(Timer T1)が設定されている。待ち時間が満了すると、端末で受信されたデータは強制的に上位レイヤに受け渡される。 以上のように、HSDPAでは基地局と端末にMAC-hsを追加することで機能を実現しているが、逆に言えば、その他のレイヤには大きな変更が加えられていない。この点から、既にR99通信網を整備している事業者にとっては設備の大幅な入れ替え無しにHSDPAが導入可能であると言える。 HSDPAの要素技術(基地局スケジューラ、HARQ, AMC等)は、auなどが既に商用展開しているEV-DOと本質的には同一である。しかし、EV-DOでは占有帯域が1.25MHz (Rel. 0、Rev. Aの場合。Rev. Bでは20MHzにまで拡大予定) であるのに対し、HSDPAでは5MHzと広帯域であるため、HSDPAシステムのみで帯域を占有してしまうことは好ましくない。よって、HSDPAではEV-DOと異なり、端末からは受信品質に対応したインデックスであるCQI(Channel Quality Indicator)をHS-DPCCH上で送信するのみに止まり、実際にタイムスロット単位で送信されるデータサイズは、送信時に使用可能な基地局送信リソースに基づいて基地局で決定する方式が採用された。これにより、音声ユーザやR99パケットユーザが存在することで基地局送信リソースが変動したとしても、問題なく通信を行うことが可能となっている。対してEV-DOでは、ある帯域をEV-DOのみで占有可能なため基地局送信リソースが変動せず、端末側において、所要の誤り率で受信可能なデータレートと受信品質が常に対応することになる。このため、端末から所望のデータレートを直接的に基地局に通知することでAMCを実現している。
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