HSUPAとは? わかりやすく解説

High-Speed Uplink Packet Access

(HSUPA から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/04/11 22:32 UTC 版)

High-Speed Uplink Packet Access (HSUPA) は第3.5世代移動通信システム (3.5G) 通信プロトコルの一種でHSPAファミリーの1つであり、上り転送速度が最大5.76Mbit/sである。HSUPAという名称はノキアが名付けた。3GPPによる正式名称は Enhanced Uplink (EUL) である[1]

HSUPAの仕様は3GPPによる規格 Universal Mobile Telecommunications System Release 6 に含まれている。Enhanced Uplink の技術的目的は、上り専用転送チャネルの性能を改善すること、すなわち容量とスループットを増大させ、遅延を低減することである。

概要

HSUPAは上りリンク enhanced dedicated channel (E-DCH) を使い、そこで HSDPA (High-Speed Downlink Packet Access) でも採用されている適応変調を採用している。

  • 伝送時間間隔 (TTI) を短くすることで、適応変調をより高速化している。
  • ハイブリッドARQ(自動再送要求)に incremental redundancy を加え、再送をより効率的にしている。

HSDPAと同様HSUPAは「パケット・スケジューラ」を使っているが、「要求-承認」型の運用をしており、ユーザー端末がデータ送信の許可を要求し、スケジューラが同時に何台のユーザー端末にそれを許すかを決定している。転送要求は転送バッファとユーザー端末のキューの状態やパワーマージンに関するデータを含む。しかしHSDPAとは異なり、上り転送は互いに直交ではない。

このようなスケジュールされたモード (scheduled mode) に加え、規格ではユーザー端末が自発的に開始する転送モードも定めており、non-scheduled と称している。non-scheduled モードは例えば、短いTTIと基地局 (Node B) ベースのスケジューラでは提供できない非常に短い遅延時間と一定の帯域幅を必要とするVoIPサービスなどで使われる。

MAC-d フロー(QoSフロー)はそれぞれ scheduled または non-scheduled のどちらかのモードを使うよう設定される。ユーザー端末は schedulednon-scheduled のフローの転送レートをそれぞれ独立に調整する。個々の non-scheduled フローの最大転送レートは呼の設定時に決められ、一般にそれほど頻繁には変更されない。scheduled フローの送信電力は、絶対グラントメッセージと相対グラントメッセージを通して基地局が動的に制御する。

HSUPAは第1層に新たな物理チャネル E-AGCH (Absolute Grant Channel)、E-RGCH (Relative Grant Channel)、F-DPCH (Fractional-DPCH)、E-HICH (E-DCH Hybrid ARQ Indicator Channel)、E-DPCCH (E-DCH Dedicated Physical Control Channel)、E-DPDCH (E-DCH Dedicated Physical Data Channel) を導入している。

E-DPDCH は E-DCH Transport Channel を運ぶのに使われ、E-DPCCH は E-DCH に対応する制御情報を運ぶのに使われる。

カテゴリ

次の表はHSUPAの各カテゴリの上り転送速度を示したものである。

HSUPA カテゴリ 最大アップリンク速度
Category 1 0.73 Mbit/s
Category 2 1.46 Mbit/s
Category 3 1.46 Mbit/s
Category 4 2.93 Mbit/s Qualcomm 6290
Category 5 2.00 Mbit/s ノキア: Nokia X3-01, N8, C5, C3-01, E52, E72, E55, 6700 Classic, N900, 5630 XpressMusic; BlackBerry: Storm 9500, 9530; HTC: Dream, Passion (Nexus One); Sony Ericsson: Sony Ericsson C510, C903, W705, W995, T715; サムスン電子: Samsung Wave, Samsung Wave II;
Category 6 5.76 Mbit/s BlackBerry Tour 9630, Nokia CS-15, Option GlobeTrotter Express 441/442, Option iCON 505/505M, Samsung i8910, Apple iPhone 4[2], Huawei, E180/E182E/E1820/E5832/EM770W, Micromax A60, ST-Ericsson M5730
Category 7 (3GPP Rel7) 11.5 Mbit/s
Category 8 (3GPP Rel9) 11.5 Mbit/s 2 ms、デュアルセル E-DCH 運用、QPSKのみ [3]
Category 9 (3GPP Rel9) 23 Mbit/s 2 ms、デュアルセル E-DCH 運用、QPSKと16QAM [3]

ロードマップ

3GPPはHSUPAの後継となるさらなる転送速度向上を目指して作業している。LTEは下りでは最大 326.4 Mbit/s、上りでは最大 86.4 Mbit/s を提供する。LTEを若干改良した LTE-Advanced では下りレートを 1 Gbit/s 以上にする予定である。

脚注・出典

  1. ^ 3GPP specification: 25.321
  2. ^ Apple iPhone 4 Technical Specs”. 2011年2月27日閲覧。
  3. ^ a b 3GPP Rel 9 TS 25.306 figure 5.1g

参考文献

  • Harri Holma and Antti Toskala (2006). HSDPA/HSUPA for UMTS: High Speed Radio Access for Mobile Communications. ISBN 0470018844. 

関連項目


HSUPA

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/10 01:21 UTC 版)

HSPA」の記事における「HSUPA」の解説

詳細は「High-Speed Uplink Packet Access」を参照 HSUPA (High Speed Uplink Packet Access) は、3GPP Release 6で2006年規定され上り方向高速化を行うパケット通信規格である。3GPPではHSDPAとの混乱避けるため、EUL (Enhanced UpLink) と呼ばれており、新規に追加され物理チャネルMACについてもE-DPDCHやMAC-eといったように"e"が修辞語として用いられている。端末あたり最高速度0.7~5.7Mbpsに向上するが、最高速度に幅があるのはHSDPA同様に送信能力に応じて端末カテゴリ分けされているためである。HSDPAとは異なりカテゴリ毎に使用可能なタイムスロット長が異なる。奇数カテゴリタイムスロット長として10msのみ使用可能であり、偶数カテゴリでは10msの他に2msも使用可能である。最高速度5.7Mbpsは、カテゴリ6をタイムスロット長2msで運用した場合にのみ達成されるタイムスロット長10msの最高速度は2Mbpsであり、カテゴリ4~6でサポートされている。 また、HSDPAのような2段階の符号化行っていないため、タイムスロット長を除けば上位カテゴリ下位カテゴリ包含することになる。 カテゴリ最大送信速度1 0.73 Mbit/s 2 1.46 Mbit/s 3 1.46 Mbit/s 4 2.93 Mbit/s 5 2.00 Mbit/s 6 5.742 Mbit/s 7 (3GPP Rel7) 11.5 Mbit/s 外部リンク FDD enhanced uplink; Overall description; Stage 2

※この「HSUPA」の解説は、「HSPA」の解説の一部です。
「HSUPA」を含む「HSPA」の記事については、「HSPA」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「HSUPA」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「HSUPA」の関連用語

HSUPAのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



HSUPAのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
IT用語辞典バイナリIT用語辞典バイナリ
Copyright © 2005-2025 Weblio 辞書 IT用語辞典バイナリさくいん。 この記事は、IT用語辞典バイナリの【HSUPA】の記事を利用しております。
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのHigh-Speed Uplink Packet Access (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、WikipediaのHSPA (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS