道連れ
『古今著聞集』巻17「変化」第27・通巻611話 伊勢から上京した法師が職務を終えて帰る道で、同郷の山寺法師と出会い、一緒に伊勢へ下る。ところが、山寺法師の正体は天狗であった。山寺法師(=天狗)は、伊勢法師を洛中のあちらこちらへ引回し、刀を手放させておいてから、清水寺の鐘楼の上に縛りつけて、消え失せた。
『捜神記』巻16-18(通巻393話) 宋定伯は夜道を歩いていて男と出会い、道連れになる。その男は幽霊だった。宋定伯は「自分も幽霊である」と言ってだまし、幽霊が人間の唾を嫌うことを聞き出す。幽霊は1匹の羊に化けたので、宋定伯は羊に唾をつけ、また別のものに化けないようにしておいて、売り飛ばした。
『捜神記』巻17-7(通巻406話) 男が馬に乗って夜道を行く。兎ほどの大きさで両眼の光る化け物が現れ、男は気絶する。しばらくして男は息を吹き返し、気を取り直してまた馬を進め、旅人と出会って道連れになる。男は化け物に襲われた話をし、ふと旅人を見ると、それは先程の化け物だった〔*化け物に2度遭う点で、→〔坂〕1bの『むじな』(小泉八雲『怪談』)に同じ〕。
『道連』(内田百閒) 「私」が暗い峠を越し、長い道を歩くうちに道連れができる。道連れは「己(おれ)は生まれずに終わったが、お前の兄だ」と言い、「『兄さん』と呼んでくれ」と請う。「私」は頼みを聞かず、道連れは「もうお別れだ」と泣く。思わず「兄さん」と言って縋ると道連れは消え、「私」の身体は俄に重くなって動けなくなる。
*生まれなかった姉→〔腹〕5の『百物語』(杉浦日向子)其ノ60。
★1b.死者の埋葬をした男が、死者の霊と道連れになり、恩返しされる。
『旅の道づれ』(アンデルセン) 旅の途中のヨハンネスが、死人の世話をする(*→〔死体〕9c)。森を出たところで男がヨハンネスに声をかけ、「道連れになろう」と言う。ヨハンネスと男は、美しい姫君のいる国へ行き、男の手助けでヨハンネスは姫君と結婚して王になる。男は死人の化身で、ヨハンネスに恩を返したのだった。
★1c.死者の埋葬をした男の息子が、天使と道連れになり、恩恵を受ける。
『トビト書』(旧約聖書外典) トビトは、遺棄された死体を手厚く埋葬する、という善行をしていたが、ある時失明した(*→〔盲目〕4a)。その後、息子トビアが、父トビトの使いで貸金取立ての長旅に出ることになり、「同族のアザリア」と名乗る男が旅の道連れになる。アザリアは実は天使ラファエルの化身であり、旅の途中でトビアに花嫁を与え、彼に代わって貸金を受け取りに行き、旅を終えて帰ると父トビアを開眼させた。
★2.旅の若者が、女と道連れになる。
『天城越え』(松本清張) 下田の鍛冶屋の子である16歳の「私」は、家出して静岡まで徒歩で行こうとする。しかし天城峠を越した所で心細くなり、引き返す。修善寺から下田へ向かう酌婦ハナと道連れになるが、ハナは流れ者の土工を見つけ、彼を客に取って金を得ようと考え、「先に行きなさい」と「私」に言う。「私」は、ハナを土工に奪われたように感じ、土工を殺す。
『伊豆の踊子』(川端康成) 高等学校の学生である20歳の「私」は、修善寺から下田へ向けて一人旅をする。旅芸人一行と道連れになり、14歳の踊子に「私」は心引かれる。しかし踊子の母親代わりの女が、「私」と踊子が親密な仲になることを懸念し、いっしょに活動写真を見に行くことを禁ずる。「私」は旅費が尽き、旅芸人たちと別れて東京へ帰る。
『今昔物語集』巻29-23 夫が妻を馬に乗せて、京から丹波まで旅をする。途中、大江山のほとりで若い男と出会い、道連れになる。男は言葉巧みにもちかけて、自分の持つ刀と夫の持つ弓矢を交換する。男は弓に矢をつがえ、「動けば射殺す」と、夫を脅して木に縛りつける。男は夫の目の前で妻を犯し、馬を奪って逃げ去る〔*『藪の中』(芥川龍之介)では、夫=金沢武弘の死体が発見されるところから物語が始まる〕。
『二人大名』(狂言) 上京する大名2人が、途中で出会った男を道連れにして、太刀持ち役を頼む。しかし従者扱いされた男は怒り出し、太刀を抜いて大名2人を脅す。男は大名2人に、鶏の蹴合い・犬の噛み合い・起き上がり小法師の真似をさせ、彼らの着物を奪って、逃げ去る。
*旅人が、道連れになった男に殺される→〔宿〕4aの『今昔物語集』巻29-9。
★4.敵を道連れにして死ぬ。
『アーサーの死』(マロリー)第21巻第4章 アーサー王とモードレッドが一騎打ちをし、アーサー王の槍がモードレッドの身体を串刺しにする。致命傷だと悟ったモードレッドは前へ進み、身体をアーサー王の槍の鍔まで押しつける。モードレッドは両手で剣を握り、アーサー王の頭部を撃ってから、地面に倒れ息絶える。アーサー王も、モードレッドの一撃が致命傷になる。
『イソップ寓話集』(岩波文庫版)216「雀蜂と蛇」 雀蜂が蛇の頭にとまり、ひっきりなしに針で刺して苦しめた。蛇は反撃することができないので、車輪の下に頭をつっこんで、雀蜂と一緒に死んだ。
『トレント最後の事件』(ベントリー) 実業家マンダースンは青年秘書マーローを憎み、「自分の命を棄てても、マーローに汚名を着せて殺したい」と考える。マンダースンはマーローに多額の現金と宝石を持たせ、遠方へ使いにやってから、マーローの拳銃を用いて自殺する。マンダースンの計算では、マーローは盗みと殺人の罪で死刑になるはずだった〔*しかし事情を知らぬ人物がマンダースンの自殺を止めようとして、はずみでマンダースンを撃ち殺してしまった〕。
『遠野物語拾遺』168 30年近く前。病気で若死にした男が、葬式の晩から毎夜、妻のもとを訪れ、「お前を残しておいては、行くべき処へ行けぬから、連れに来た」と言う。他の者の目には何も見えなかったが、妻は毎夜10時頃になると、「ほれ、あそこに来た」などと苦しみ悶え、7日目に死んでしまった。
『子不語』巻17-438 私(=『子不語』の著者・袁枚)の父上が亡くなった時、侍妾の朱氏も病気であったが、にわかに「わたし、死ぬわ」と口走った。「だって旦那様が屋根瓦の上から、わたしを呼んでいらっしゃるんですもの」。家人は、父上の死を、病中の朱氏には知らせていなかった〔*にもかかわらず、朱氏は父上の死を知ったのだ〕。朱氏はまもなく死んだ。
Weblioに収録されているすべての辞書から道連れを検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
全ての辞書から道連れを検索
- 道連れのページへのリンク