第二次近代化改装と、その結果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:39 UTC 版)
「扶桑型戦艦」の記事における「第二次近代化改装と、その結果」の解説
主砲の最大仰角は従来の30度から43度へと引き上げられ、主砲塔の構造面においては砲塔外筒と主砲塔天蓋の装甲を増厚して防御を強化した。同時に副砲も仰角を15度から30度へと引き上げて射程距離の延伸を計ったことにより、防楯は新設計となって甲板の一部を切り欠いた形状の物に更新された。また、舷側装甲の範囲を充実させた事により、装甲重量は8,558トンから12,199トンへと増加して防御重量は排水量の約31%にまで増加した。この主砲塔の改造時に、「扶桑」は3番主砲塔上に水上機用のカタパルトを設置すると共に、砲の向きを後向きから前向きに変更したことで「山城」との外見上の明確な相違点となった。また、高角砲は新型の「八九式 12.7cm(40口径)高角砲」へと更新された。これに、爆風避けのカバーを装備したうえで、前部マストの側面に片舷1基ずつと、後部艦橋の上方の側面部に片舷1基ずつの計4基を搭載した。高所への搭載となったのは主砲発射時の爆風を避けるためである。機関についても大幅な改良が実施された。ボイラーがロ号艦本式重油専焼水管缶4基とハ号艦本式重油専焼水管缶2基の計6基に更新、3番・4番缶室に集中配置された。艦橋下部の1番・2番缶室は閉鎖され1番煙突も撤去された。1番煙突が無くなったことにより追い風時に煤煙が艦橋に逆流する問題も解消された。閉鎖された1番・2番缶室は下側2/3が重油タンクとなり上部の1/3が士官室に充てられた。タービンも新型の艦本式タービン4基となり、最大出力は75,000馬力を達成、速力が目標の25ノットには及ばないものの公試時に24.7ノットを発揮した。その後は速力が低下したという説もあるが、艦長経験者による「伊勢型と問題なく編隊を組むことができた」「戦闘運転で26ノットは出た」との証言も残っている。燃料は重油のみとなり、燃料搭載量は5,100トンとなって航続性能は16ノットで11,800海里という長大な性能を誇った。発電機室は、4番主砲の後方-主機械室の前方の喫水下の左右に設置され、レシプロ蒸気機関によって発電が行われていた。 防御面においては、水平防御は弾薬庫と機関室上面のみ装甲を51mm-102mmに増厚した。対魚雷水中防御として舷側部にバルジを追加し、艦幅は水線部30.64m、最大幅33.08mに増加した。バルジの装備範囲は当初は第二甲板部までしかなかったが、のちに上甲板まで引き上げられた。バルジの喫水線付近には、密閉された鋼管が充填された(一部のみ)。さらに水密隔壁に64-76mmの装甲板を貼って強化した。この防御強化により吃水は約1mほど沈下して9.72mとなった。さらに船体の艦尾部を延長して速力向上と直進性を向上させた。 この近代化改装により本型は相当に戦力向上を果たしたが、重量の増加によって乾舷の低下、予備浮力の減少、舷側甲鈑上端の水面上の高さが減少した事で水線最厚部の甲鈑の占める割合が小さくなるといった問題も発生しており、垂直防御そのものは新造時と変わらなかった為問題が残ることとなった。水平防御は強化されたが、弾火薬庫の最厚部でも250kg爆弾に対する防御や中口径砲弾、大口径砲弾に対する防御としては不十分であった。レイテ沖海戦前には、対空砲や機銃の増設が図られたが兵装配置の問題から対空兵装の装備配置、数共に問題があるとされた。捷一号作戦前には十三号電探、二十一号電探、二十二号電探(扶桑のみ)が新たに装備されていたが、十分な訓練を行う事は出来なかった。 また、伊勢型戦艦の「伊勢」、「日向」と並び、「扶桑」と「山城」にも、航空戦艦への改装が計画されたが具体的な改装案は纏まらず、マリアナ沖海戦の頃には計画自体が取り消され実現しなかった。 本型は太平洋戦争中には主に内地にあり、一時は練習戦艦として使用された時期もあったが、戦争末期の捷一号作戦に西村艦隊の主力として揃って出撃し戦没した。 装甲配置 主甲帯 102-229-305--229-102 VC 中甲板甲帯 203 VC 上甲板甲帯 152 VC 横防御隔壁 前部中甲板 152 VC 下甲板 152 VC 後部中甲板 102 VC 下甲板 51 VC 水平防御 中甲板 32 NS+67-19 NVNC 最上甲板 35 HT 魚雷防御隔壁 64-25 HT 弾薬庫 甲板平坦部 35 NS+67-19 NVNC 甲板傾斜部 25 HT+67-32 NVNC 垂直部 35 NS+38 HT+51 NVNC 底部 41-32 NS 司令塔 側面 305 VC 上面 ? 床面 ? 交通筒 178-51 VC 主砲塔 前盾 280 KC 側面 229 KC 後面 229 KC 上面 152 VC バーベット 305-51 VC+114-51 NVNC ケースメイト 砲盾 38 HT 隔壁 なし 舵取機室 なし(大戦中に周辺にコンクリート充填) 煙路 178 VC
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