田老の防潮堤とは? わかりやすく解説

田老の防潮堤

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 06:14 UTC 版)

田老町」の記事における「田老の防潮堤」の解説

田老は「津波太郎田老)」の異名付けられるほど古くから津波被害多く江戸時代初期1611年起きた慶長三陸地震津波がほとんど全滅したとの記録がある。1896年明治29年)の明治三陸津波では、県の記録によると田老村当時)の345戸が一軒残らず流され人口2248人中83%に当たる1867人が死亡したとある。生存者出漁中の漁民山仕事をしていた者がほとんどであった津波後、では震災義援金危険地帯にある全集落を移動することにした。しかし工事かかったところで、義援金村民分配しない工事充てることの是非工事実効性村民から異論続出し移転計画中断余儀なくされた。そして結局、元の危険地帯に再び集落作られた。 1933年昭和8年)の昭和三陸津波による田老村被害は、559戸中500戸が流失し死亡行方不明者数は人口2773人中911人(32%)、一家全滅66戸と、またしても三陸沿岸々の中で死者数死亡率ともに最悪であった東大教授今村明恒博士学者助言基づいて当時内務省と県当局とりまとめ復興策基本集落高所移転、すなわち「今次並びに明治二十九年に於ける浸水線以上の高所住宅移転」することであり、また移転のための低利宅地造成資金貸付などの措置もとられた。 田老当時としては規模大きなで、全村移転敷地確保難しく周囲適当な高台もなかった。海岸から離れて主要産業漁業困難になるという問題もあった。そこで当時村長関口松太郎以下、当局考え出した復興案は高所移転ではなく防潮堤建造中心にした計画であった費用大蔵省から被災地高所移転宅地造成貸付資金借入し防潮堤工事充てることとした。 第一期工事1934年昭和9年)に開始された。高台移転案を基本とし、当初難色示した国と県も交渉結果費用負担同意し2年目からは全面的に国と県が工費負担する公共事業になり、建設順調に進むかと思われた。しかし日中戦争拡大に伴い資金資材枯渇1940年昭和15年)には工事中断する戦後、町をあげて関係官庁への陳情繰り返した結果1954年昭和29年に14年ぶりに工事再開され4年後の1958年昭和33年)には工事終了し起工から24年経て全長1350m、基底部最大幅25m、地上高7.7m、海面高さ10m という大防潮堤完成したその後増築が行われ、実に起工半世紀後の1966年昭和41年)に最終的な完成見た。総工事費1980年当時貨幣価値換算して50億円に上り総延長2433mのX字型の巨大な防潮堤城壁のように市街取り囲む壮大な防潮堤であった1960年昭和35年)に襲来したチリ地震津波では、三陸海岸他の地域犠牲者出たが、本地域での津波の高さは僅か3.5mであり、堤防には達しなかった。しかし翌日報道では、堤防功を奏して田老地区被害軽微とどまったとされ、これを機に防潮堤への関心高まり海外からも視察団やって来るなど田老町防潮堤国内のみならず世界津波研究者の間でも注目される存在になった昭和三陸津波70周年に当たる2003年平成15年3月、町は「災禍繰り返さない」と誓い、「津波防災の町」を宣言して記念石碑設置した同地区出身田畑ヨシによる「津波てんでんこ」の紙芝居活動はじめとする児童への防災教育や、年一回避難訓練にも力を入れ防災の町」として全国的にも有名であったその後2005年田老町宮古市編入され消滅した2011年3月11日東日本大震災の影響に伴い発生した津波は、午後3時25分に田老地区到達した。海側の防潮堤は約500メートルわたって一瞬倒壊し市街中心部進入した津波のため地区では再び大きな被害発生した目撃証言によると「津波の高さは、堤防の高さの倍あった」という。市街全滅態となり、地区人口4434人のうち200人近死者行方不明者出した。「立派な防潮堤があるという安心感から、かえって多くの人が逃げ遅れた」という証言もある。震災から半年後の調査では、住民の8割以上が市街高地移転賛同しているという。 様々な議論があった中、旧防潮堤のうち残った1kmについては沈下した部分嵩上げした上で2線堤として2017年3月竣工し、さらに2021年3月には高さ14.7m、総延長1.2kmの1線堤が新たに完成した

※この「田老の防潮堤」の解説は、「田老町」の解説の一部です。
「田老の防潮堤」を含む「田老町」の記事については、「田老町」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「田老の防潮堤」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「田老の防潮堤」の関連用語

田老の防潮堤のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



田老の防潮堤のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの田老町 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS