用地補償 (ようちほしょう)
取得補償額
(用地補償 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/03 07:08 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動取得補償額(しゅとくほしょうがく)とは、土地収用法その他の法律により土地等を収用することができる事業者が、必要な土地等の取得にあたって支払う補償額をいう。
取得する土地に対しては、正常な取引価格をもって補償するのが原則である。当該土地に移転すべき建物その他の物件があるときは、当該物件がないものとして、すなわち更地としての正常な取引価格による(公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱[1])。建物の取得に係る補償については、土地の取得に係る補償の例による。従って、原則として、取得する建物に対しても正常な取引価格をもって補償するものとされている。基本的には、市場価値概念と同義であるが、更地主義が貫かれている。
概要
土地基本法は、土地は現在及び将来における国民のための限られた貴重な資源であること、国民の諸活動にとって不可欠な基盤であること、土地利用と密接な関係があること、その価値が人口及び産業の動向、土地利用の動向、社会資本の整備状況等により変動することなど、公共の利害特性を有していることに鑑み、土地については、公共の福祉を優先させるものとされている。
昭和37年3月20日、公共用地審議会は、建設大臣からの諮問に対し、「公共用地の取得に伴う損失の補償を円滑かつ適正に行なうための措置に関する答申」を行った。それまでの補償基準は不備不統一であり、それが公共用地取得の最も大きな障害となっていると認め、適正かつ統一的な補償基準の確立を図った。答申の主な内容は以下のとおり。[2]
- 第一 統一的な損失補償基準の確立
- 補償項目の整理統一、補償額算定方法の統一、個々の事業の実施における損失補償基準の適正な実施を確保する措置の3点の必要性について提言。
- 公共用地取得に伴う精神的苦痛については、社会生活上受忍すべきものであって、通常生ずる損失とは認めることができないものであるから、謝金等の不明確な名目による補償はしないようにすべきである。
- 取得しようとする土地およびその残地以外の土地については、日蔭、臭気、騒音等による損失、損害については、社会生活上受忍すべき範囲をこえるものである場合には、別途損害賠償請求が認められることもあろうが、損失補償の項目とすべきものではない、とされた。
- 第二 公共補償の基準の確立
- 第三 鑑定評価制度の確立
この答申を受け、同年6月29日に、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について」が閣議了解、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」が閣議決定された。損失補償基準要綱の適正な実施を確保する措置として、各省庁はこの要綱に定めるところにより基準を制定し、また、その他の公益事業者等に対し、この要綱に準じて基準を制定するよう指導するものとされた。また、この要綱は、土地収用法に基づく収用委員会の裁決においても基準となるものとされた。鑑定評価制度については、宅地制度審議会において審議することになった。
評価の方法
- 土地
正常な取引価格は、近傍類地の取引価格を基準とし、これらの土地及び取得する土地の位置、形状、環境、収益性その他一般の取引における価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとする。 基準とすべき近傍類地の取引価格については、取引が行なわれた事情、時期等に応じて適正な補正を加えるものとされている。 地代、小作料、借賃等の収益を資本還元した額、土地所有者が当該土地を取得するために支払った金額及び改良又は保全のために投じた金額並びに課税の場合の評価額は、正常な取引価格を定める場合において参考となるものである。 基本的な評価方法は取引事例比較法であり、収益還元法は参考手法としている。
- 建物
近傍同種の取引事例がない場合の建物の取得補償額は、次式により算定した額によるものとされている。
推定再建築費 × 現価率 × 建物面積
評価上の留意点
事業の影響
土地を取得する事業の施行が予定されることによって当該土地の取引価格が低下したと認められるときは、当該事業の影響がないものとしての正常な取引価格によるものとされている。
感情価値等
正常な取引価格を定める場合においては、通常の利用方法に従って評価するものとし、土地所有者の主観的な感情価値あるいは当該土地を特別の用途に用いることを前提として生ずる価値は、考慮しないものとする。
建物等の移転料
建物等を移転することが必要な場合には、通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償するものとされている。
残地の補償
土地を取得されることによって残地が生じ、残地に関して、価格の低下、利用価値の減少等の損失が生じたときは、これらの損失額を補償するものとする。
日陰、臭気、騒音等
事業の施行により生ずる日陰、臭気、騒音等による不利益又は損失については補償しないのが原則。しかしながら、これらの損失等が社会生活上受忍すべき範囲を超えるものである場合には、別途、損害賠償の請求が認められることもあるので、これらの損害等の発生が確実に予見されるような場合には、予めこれらについて賠償することは差し支えないものとされている。
関連評価基準等
- 公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱 (PDF) (昭和37年6月29日閣議決定)
- 公共用地の取得に伴う損失補償基準 (PDF) (昭和37年10月12日用地対策連絡会決定)
- 公共用地の取得に伴う損失補償基準細則 (PDF) (昭和38年3月7日用地対策連絡会決定)
- 不動産鑑定評価基準
参考文献
- 公共用地補償研究会『新版 公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の解説』(大成出版社)
- 全国建設研修センター『用地取得と補償』
脚注
関連項目
外部リンク
用地補償
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従来のダム建設に伴う用地補償においては、水没する道路に対しては付替道路を建設し、道路の機能を復元することが原則となっており、実際に移転の補償協定の際には代替道路が建設されるという条件が盛り込まれており、それを条件としてダム建設賛成に回った者も多かった。この協定には地権者も合意していたとされる。 しかし2001年、水資源管理機構は突如として「徳山ダムにおいては上流域の民有林約180km2を買収して所有者・利用者のいない「公有地」とし、道路機能の復元は行わない」とした。これにより徳山ダムの事業費を抑える事が出来たが、この時、地権者や旧村民に対する説明が一切なかったとされ、水資源機構と当時の藤橋村が協定を一方的に反故にしたと言われている。また@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}山林の地権者である旧村民が、山林にアクセスできる道路建設が完成するまで試験湛水を延期するように迫ったのに対し、水資源機構側が延期はできないとして対立。結局予定通りの試験湛水を行うことに対して地権者側が猛反発し、提訴した[要出典]が、2008年に住民側の敗訴が決定しており、2021年に至るまで計画されていた道路は作られていないままとなっている。 旧徳山村で比較的高所にあった一部地域はダムによる水没を免れている。しかし水資源機構はダム建設当時、該当地域の殆どは買収対象から外していた為、未だ土地を手放していない者も少なからずいた事もあり断絶した地域や道路が点在することになった。その為、この地域の住民は比較的ダム賛成派が多かったと言われ、実際に現在も非水没地域に私有地を保有するかつての徳山村住民がいるが、その地域に接続する道路がないためダム湖での水上移動を余儀なくされている。また人工林として管理されていた山域では今後の保全作業が必要となるが管理の為の林道にアクセスできないことが問題となる。非水没地域にはダム建設以前から近隣の林道より分岐する徒歩でのみ往来可能な登山道があり、昔はこの道を歩いて街へ出ていたと証言する旧村民もいる。また嘗て近隣に王子製紙が紙の原料となる木材を運び出す為の作業道路があった。ダムによる補償協定により旧徳山村は水没しなかった地域も含めて全村廃村となった事からこの道も事実上、廃道となり一旦は森に帰った。しかしダム稼働開始後、水資源機構と揖斐川町は近隣にある黒谷第一砂防ダムへの管理作業道としてこの林道の一部を復活させ、峠付近を再整備してこの林道へのアクセス道路を新たに建設し始めた。最終的には現在、徒歩でしか行けない非水没地域に自動車で乗り入れが可能になる予定となっており、工事は少しづつではあるが進んでいたが、近年になり代替道路建設に合意した筈の地権者の一部が突如として反対を表明し、道路の延伸工事は頓挫した。その為かここ数年、工事の進捗は見られず、道路建設は途中で止まったままであり、落石や倒木も放置されたままとなっている。尚、非水没地域の側から黒谷第一砂防ダム迄は水没を逃れた元々の道路が今も残っており、同砂防ダム付近で現在建設中の作業道と接続する予定となっている。
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