東北電力と「東北7県」
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かつては東北6県よりも多くの地域が含まれていたこともあり、1888年に行われた「東北」対象の自由民権運動集会には新潟県、長野県、富山県、石川県、福井県が参加していた。現在でも、電力やそれに関連する経済政策等の分野では新潟県を東北6県と一体的に扱う場合がある。それは、明治時代から始まった水力発電との関係が強い。当地での電源開発の最重要地域の1つに阿賀野川(只見川)があるが、これは新潟県下越地方と福島県会津地方(両地域とも分水嶺である奥羽山脈の西側)を流域としており、電力において下越地方と会津地方は不可分であった。このため、新潟県を加えた7県を供給範囲とする電力会社として、戦中の1942年(昭和17年)には配電統制令により東北配電株式会社が設立された。 1950年(昭和25年)には電気事業再編成令により東北電力が設立された。1952年(昭和27年)のサンフランシスコ講和条約発効後になると、7県を対象範囲とする地域開発の法律がつくられた。 新潟県を含めた7県を「東北地方」と定義する法律(戦後) 北海道東北開発公庫法(1956年 - 1999年) 中央省庁再編にあわせ、北海道東北開発公庫は解散し、日本政策投資銀行へ継承。 東北開発株式会社法(1957年 - 1986年) 1986年に東北開発株式会社(特殊会社)は民営化。その後、三菱マテリアルと合併。 東北開発促進法(1957年 - 2005年) 国土総合開発法の改正に伴い、他の地方開発促進法とともに廃止。 地方行政連絡会議法(1965年 -) ※1〜3をまとめて「東北三法」ということがある。 昭和30年代後半から始まる全国総合開発計画と国土形成計画でも、これらの法律に則って「東北7県」の範囲を以って「東北地方」としている(2007年4月1日から施行された国土形成計画法施行令以降は「東北圏」と称す)。また、北海道と「東北7県」で、北海道東北地方知事会議が開催されている。 経済においては、これら法律の「東北7県」の枠組みにしたがって東北経済連合会が構成され、関連する産・学・官連携シンクタンク(現在の名称は「東北開発研究センター」)、研究開発機構(東北インテリジェント・コスモス構想など)、地域ベンチャーキャピタルや地域投資ファンド、観光事業などでも新潟県が含まれている。 東北経済連合会は、東京都より北に本社を置く企業で最大である東北電力が事実上主導権をとる団体となっている。その経済力を背景に、同社提供のブロックネットのローカル番組が複数制作されて「東北7県」(番組内では「東北6県と新潟県」という)に放送されたり、同社が関係して「東北7県」の地方紙で連携企画が掲載されたりしている(→河北新報#紙面参照)。 以上のように、東北電力関連の面においては、「東北7県」を以って「東北地方」とする例が見られるが、電力関連以外では東北6県の方が一般的であり仙台に立地する機関が新潟県を管轄して「東北7県」とする例は限定的である。東北史研究者の河西英通はその理由として、東北地方が凶作に見舞われたのとは対照的に、新潟は大陸航路の拠点として開発が進んだことが原因と見ている。新潟県は、明治初期において日本で最も人口の多い道府県であり(→都道府県の人口一覧)、1940年の統計で新潟県1県の工業生産額が南東北3県合計とほぼ同じであるなど経済背景も異なる。そのため、新潟県を東北地方に区分する場合は、「東北地方」との呼称を用いずに、「東北7県」「東北6県と新潟県」「東北地方と新潟県」「東北圏」などと言って区別する例が多い(→新潟県#地理・地域)。 新潟県の県庁所在地である新潟市と東北諸地域を結ぶ陸上交通網では、1914年に磐越西線、1924年に羽越本線、1997年に磐越自動車道が全通したが、関東方面や長野・北陸方面へ向かう交通網と比べると高速化が進んでいないうえ、新潟空港から東北地方への定期航空路線も存在しない(仙台空港-新潟空港間の定期航空便は長らく休止路線となっている)。特に岩手県へのアクセスは高速道路を除くと、ほぼ皆無である。
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