東京2008
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2007年(平成19年)11月20日発売。東京版は初めての欧米以外の版であり、また、和食店や寿司屋が3つ星を取得した初めての例でもある。格付けは3つ星がパリの10軒に次ぐ8軒だったのをはじめ、150の掲載店すべてが1つ星以上を獲得、星の累計は191でパリの64軒97個の倍以上を獲得して世界最多となり、ミシュランガイド総責任者ジャン=リュック・ナレも含め、世界を驚かせた。また、28軒のホテルも掲載され、7軒のホテルが「豪華で最高級」と評価された。発売に際しナレは「東京は、世界一の美食の街である」とし、また、中央日報のインタビューに答える中で、日本料理の料理人に数世代、数百年かけて伝えられた料理人固有の技術と伝統の継承性を、どの都市のレベルよりも高いものであるとし、特に飲食店の専門性について「パリの日本飲食店に行けば、寿司、刺し身、焼き鳥など、メニューがたくさんある。このため、日本でもそうだと思っていたが、私が行った飲食店はほとんど寿司店、刺し身店、焼き鳥店、うどん店など、専門店に細分化されていた。非常に印象的だった。こうした特性から日本の飲食店の相当数は誰も追いつけない専門性を確保していた。当然、高い評価につながる」と述べた。 発売日から4日間で日本語版初版12万部をほぼ完売、2008年2月末までに29万部以上を販売した。発売初日に9万部も売れたのは、ミシュランガイド史上初めてという。 欧米以外の最初の都市に東京を選んだ理由として、3,000万人の人口、16万軒のレストランを擁する首都圏は、世界最大でもっとも洗練された飲食市場のひとつであるためとしている。 調査 調査対象は品川区、渋谷区、新宿区、中央区、千代田区、豊島区、港区、目黒区の8区。調査員はフランス人3名、日本人2名の計5名で、調査対象は約1,500軒だったとも言われる。さらに最終段階では欧州から調査員10人が合流し、総勢15人で格付けを決定した。あらかじめ選び出された東京のレストラン約1,000軒を覆面調査員が1年半をかけて訪問、盛りつけの見た目、味、食材の鮮度、仕込みの度合いなどといった観点から星が評価された。 掲載店 掲載対象となるのはミシュランの取材を受け入れた店のみである。総責任者ナレは日本のテレビ番組で「東京版で星を獲得した店から掲載を拒否されたことはない」としているが、ミシュランからの取材や撮影依頼を受けたものの、その手法を嫌って協力を拒否し掲載されなかった有名店もある。選ばれた店の80 - 90%は個人店で、大きなブランドや有名シェフの店はほとんど入っていなかった。 評価 東京版について、「平凡な店に星が与えられている」「星の大盤振る舞いは、マーケティング上の配慮にすぎないのでは」「根本的に文化も違うのに日本料理が本当に分かるのか」「格付けをすることで料理人の間に上下関係を作ってしまうのではないか」などの批判もある。 一部の料理評論家や雑誌記事をはじめ、東京都知事・石原慎太郎も、読後にミシュランガイドを酷評した。3つ星を獲得した店が、Yahoo!グルメの評価では5点満点中平均3.09点だった例も指摘されている。 フランス人調査員の中には、モズクなど日本料理に使用される食材に嫌悪感を示す者がおり、店側が気を遣い、通常のメニューとは異なる食材で料理を提供した例もあったという。 日本では、フランス人の来店客は目立つことに加え、席に着いた直後に皿を裏返してしげしげと眺める 2名で来店し、1人がアラカルト、1人がコースで料理を注文する コースのうち、数皿だけ省略するよう要望する 電子辞書で食材を調べる メモを取る といった特異な行動を取ることで、ミシュランガイドの調査員であることが店側に見破られることもあったという。 「フランス人が和食を適切に評価できるのか」との疑問に対して、総責任者ナレは「調査員に日本人が加わっていることで問題はない」としている。 東京版と名乗りながら、東京23区のうち8区の店舗しか取り上げられていない、焼き肉・焼き鳥店の掲載が皆無など日本料理の分野に偏りがあるといった批判もあった。 東京の星の合計が191と、パリの97、ニューヨーク市の54を大きく上回ることについては、東京のレストラン総数16万店に対して、パリの1万3,000店、ニューヨーク市の2万5,000店という「分母の違いが考慮されるべきだ」との指摘もある。また、ミシュランは「ミシュランガイドはタイヤのため」を原則としており、東京版での星の大盤振る舞いは、日本でのタイヤ事業も含めた「ブランドイメージ向上のための戦略にすぎない」との評価もある。 一方、東京が食の都としてやっと世界に認知されたとする意見や、オリジナリティーに優れた若手料理家が世界にも評価され、また、年功序列がモノを言いがちな日本においても、広く紹介されるいい機会であるとする意見もある。
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