新分析論と口誦詩研究とは? わかりやすく解説

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新分析論と口誦詩(オーラル・ポエトリー)研究

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/05 22:46 UTC 版)

ホメーロス問題」の記事における「新分析論口誦詩(オーラル・ポエトリー)研究」の解説

分析論という概念は、ホメーロス文献学では、ホメーロス以前の詩はモティーフあらすじ経過出来事結合といった点に関してホメーロス影響与えているという見方排除することはないものの、ホメーロスが彼以前の詩を作り変えず自身の作品導入したことを前提はしない、という研究の方向性示している。分析者たちがホメーロス以前叙事詩拙劣な方法相互に順序付けられて並べられているのを見ていたところで、新分析論従事者今や伝統的な神話学民話叙事詩自身美的な要求のために受容した一人詩人の手見たのである。 新分析論創始者としてはディートリヒ・ミュラーが該当すると言うことができる。新分析論意義深い後継者は、『ホメーロス研究』を著したヨハネス・カクリディスである。 いわゆる口誦研究とは、主にホメーロス研究言語的諸相についての調査力点を置くものであるその発展19世紀には既に始まっており、ライプツィヒ大学教授のゴットフリート・ヘルマン(1772年1848年)と統一論分析者との論争平行して進行していた。ヘルマン1840年初め叙事詩語法口述のものであることを叙事詩テクスト構造(これはヴォルフがただ一人理論的に行ったことであり、そこのためヴォルフ頻繁に批判受けていた)から導き出した人物であり、エピテタ・オルマンティア("epitheta ormantia"、装飾的形容句を示すギリシア語)が埋めもの効果を持つことを認めアオイドス歌い手)たちの即興技術やそれに伴った言語形式について詳述したヘルマンによって打ち立てられ口誦性理論は、アメリカ人ミルマン・パリー研究継続された。パリー口誦詩の概念初め用いた人物である。パリー1928年フランス語書いた論文"L'Epithète traditionelle dans Homère"(『ホメーロス伝統的な形容句』)で、先行する形式研究者受け継いで、はっきりと韻律ヘクサメトロス)の強制によって引き起こされるエピテタ・オルマンティア現象について調査したパリー前提としたのは、ホメーロス語法明らかに後代の詩とは別の法則に従っているに違いないということであり、それ故ヘルマン同じく詩の形式性に固執したのである形容句と名前の結合明確な文体論とその詩句との両面的な関係から、パリー著書叙事詩経済性法則』を著した。 「ホメーロス語法に於いては一人同一な人物もしくは事物のため、韻律論的・意味論的異なった複数形容句-名前結合用いられていことがあるかもしれないが、(明らかに記憶負担軽減のため)多く場合では、一つ特定の詩句には常に一つ形容句-名前結合使われているに過ぎない。(韻律的に等価であるが意味論的には異なっている任意の語句使用され得るにも拘らず)」 パリーはさらに、このような技術やかくも豊富な形式レパートリー発展するには数世代要する主張したこのためこのような叙事詩語法当時存在していた伝統支配されているものであることは明らかである、とも言う。こうして導き出され伝統性から、パリーはその背後にある、期待満ちた公衆前に立つ支配者による、口述での即興強制する圧力存在推測した。さらにパリーは、確認材料として、未だ現存しているセルボ・クロアチア語民衆叙事詩考察対象とした。 想像すれば言い得ることであるが、草稿書き留めることができる詩人異なって歌い手実演最中次の語を考えた言い換え決めたり既にある詩句もう一度目を通したりする時間一切持たない。ある詩句の中で正しい場所に置かれるはずの形式は、発明し難いものである。歌はおのずから生じていくので、歌い手すべてのフレーズ相互に試してみることはできない物語を語るため、歌い手語群集まりから手持ち表現を選ぶ(叙事詩的語法)。そういった表現は他の歌い手のものかもしれないが、彼が覚えていたもののであるそのような固定化される以前すべてのフレーズによって、ある特定の考えが、所定詩句長さ適合するように作られ語句使って表現されるパリーが言うには、仮に語り構造分析することで矛盾非論理的なものが白日の下に曝されるであれば矛盾や非論理個別一人起草者の誤り帰せられるべきではなく複数源泉からの抜粋不完全に結合されことによるリズム性、つまり起草者が複数存在していたことに帰せられるべきである。同時に作品は、伝統的な体系使用した一人著者創作でもあり得る(ここでは新分析論的な思考法認められる)。 パリー理論は、弟子アルバートB・ロードによって継承された。第二次世界大戦後は、ミルマン・パリー続いてその理論継承し立て直す時代になったのである1980年代にはパリー理論越えて初めての実際進捗があった。特に言語科学上の研究によって、叙事詩言語伝統パリー推測した以上に古く紀元前16世紀にまで遡るのであることが示された。1987年、エドザード・ヴィッサー(1954年生まれ)は、パリー理論形容句への限定から救い出しヘクサメトロス即興に際して詩句生成の全過程追体験することに成功したパリー考えたようなテクスト構成要素結合によっては歌い手ヘクサメトロス形成せずすべての新規詩句で、ヴァリアント交換可能な要素)によってその都度任意に埋め合わせ行いつつ、決定的な要素先行して設置することで、ヘクサメトロス作り出すのだという。さらに歌い手は、まだ残っている詩句の自由部分自由な埋め合わせによって満たすのであるその際歌い手形式構成要素用いることができるが、形式構成要素がなかったとしても新し文章創作することができる。

※この「新分析論と口誦詩(オーラル・ポエトリー)研究」の解説は、「ホメーロス問題」の解説の一部です。
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