打ち上げと組み立て
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 04:28 UTC 版)
「きぼう」はスペースシャトルによって3回に分けてISSに運ばれ組み立てられた。これは、日本がISS計画への参加を表明した1985年当時から、日本の実験モジュールをスペースシャトルで打ち上げることが決まっていたためで、スペースシャトルの貨物室の寸法・打ち上げ能力に合わせて大きさや重さが設計されている。 当初の「きぼう」の打ち上げ時期は、1986年3月下旬に行われた宇宙ステーション全体のシステム要求審査(System Requirement Review:SRR)の段階で、合計14回と設定されたスペースシャトルの打ち上げを3段階に分けた内の3段階目となる1994年であった。 しかし、アメリカの杜撰な開発管理に端を発する宇宙ステーション計画の度重なる変更や、アメリカの財政悪化に伴う宇宙ステーション計画の変更やロシアの参加、ロシアのサービスモジュールの開発遅延など、さまざまな理由で幾度となく「きぼう」の打ち上げ時期や見通しが変更されてきた。 その後、2003年(平成15年)2月にスペースシャトル「コロンビア」が空中分解、乗組員全員が死亡する事故が発生したため、ISSの建設が遅れると同時に「きぼう」の打ち上げ時期もさらに遅れることとなった。またアメリカ航空宇宙局 (NASA) はシャトル運用を2010年までとしたため(その後退役が延期され、2011年8月31日にスペースシャトルプログラムは正式に終了している。)、2011年7月21日にISSの建設は終了し完成した。スペースシャトル打ち上げ再開後の「きぼう」の打ち上げ時期については、4つあるISSの太陽電池パネル設置前に「きぼう」を取り付けると電力が足りなくなる恐れがあったため、NASA側は打ち上げを遅らせたい意向を示していたが、JAXAは早く打ち上げるよう交渉し、2006年3月2日に行われた国際宇宙ステーション計画に関する宇宙機関長会議によって2007年(平成19年)から2009年(平成21年)に打ち上げることで最終合意している。これにより最後の太陽電池パネルよりも先に船内実験室が打ち上げられることになった。 この合意に基づき、「きぼう」初の打ち上げ要素となる船内保管室は、2008年3月11日に打ち上げられたスペースシャトル「エンデバー」でのミッションSTS-123で宇宙に運ばれ、同月14日国際宇宙ステーションに取り付けられ、翌15日から運用が始まった(日付は全て日本時間)。 続いて同年6月のディスカバリーによるミッションSTS-124で船内実験室及びロボットアームを設置し、2009年7月に打ち上げられたエンデバーによるSTS-127で、船外実験プラットフォームが取り付け・起動が完了した同7月19日11時23分に「きぼう」は完成した。 各種動作確認で機能にも問題がないことが確認され、本格的な運用を開始した。2009年9月には、宇宙ステーション補給機 (HTV) による実験装置と物資の輸送が始まった。2010年2月24日の衛星間通信システム (ICS) の本格稼働、3月の子アームの設置をもって、基本要素の設置は終了した。 設置にあたって、船内実験室はスペースシャトルが打ち上げるISSモジュールの中でも最大であり、搭載空間の問題から打ち上げ時のスペースシャトルにセンサ付き検査用延長ブーム (Orbiter Boom Sensor System:OBSS) を搭載できなかった。このため、ひとつ前のフライトで船内保管室を輸送した際に、OBSSをISSに残して帰還し、次のフライトでこれを回収して使用することでスペースシャトルの熱防護システムの点検を行う苦肉の策が取られた。また、打上げ時に船内実験室に搭載するラックも最小限とせざるを得ないため、システム機器用ラック(システムラック)のうち5台と実験ラック2台、保管ラック1台は事前に船内保管室でISSに輸送した。船内実験室とともに打ち上げられるシステムラックだけでは片系統のみのシステムしか起動できないが、船内保管室から上記ラックを移設することで、有人運用に必要な2系統のシステムを構築できるようにした。 1J/Aミッション ミッションナンバー:STS-123、打ち上げオービター「エンデバー」 打ち上げ部位:船内保管室 打ち上げ日時:2008年(平成20年)3月11日15時28分(日本時間) JAXA任務飛行士:土井隆雄(保管室の取り付け及び室内の設定作業) 1J/Aは日本と米国のISS機材を同時に運ぶミッションの1回目を表している。米国側機材は特殊目的ロボットアーム「デクスター」。 船内保管室には実験ラックなどが積み込まれた状態で打ち上げられ、一時的にハーモニー天頂側結合部に設置された。 1Jミッション ミッションナンバー:STS-124、打ち上げオービター「ディスカバリー」 打ち上げ部位:船内実験室、ロボットアーム 打ち上げ日時:2008年(平成20年)6月1日6時2分(日本時間) JAXA任務飛行士:星出彰彦(実験室の取り付け及び室内の設定作業) 1Jは日本の機材のみを運ぶミッションの1回目を表す。 船内実験室をハーモニー左舷側に設置後、船内実験室を起動し、ラックの搬入を行い、船内保管室を船内実験室天頂側に移設した。 2J/Aミッション ミッションナンバー:STS-127、打ち上げオービター「エンデバー」 打ち上げ部位:船外実験プラットフォーム、船外パレット、衛星間通信システム(ICS-EF) 打ち上げ年月日:2009年(平成21年)7月16日7時3分(日本時間) JAXA任務飛行士:若田光一(2009年3月にSTS-119で出発。第18/19/20次長期滞在クルーとしてISSに4ヶ月半滞在。打ち上げ各部位の船体取り付け及び設定作業。本任務終了後、STS-127にて帰還した。) 日本と米国による2回目の打ち上げ。米国側ペイロードはISSの交換用のバッテリーと、その他の曝露機器の予備品 船外パレットは回収した。 1J/Aミッション後 1Jミッション後 2J/Aミッション後
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