因果応報
★1.他に対して行った善行・悪行が、後に同じような形で自分の身にふりかかる。
『黄金伝説』119「洗者聖ヨハネ刎首」 州総督ユリアノスが教会から聖器を奪ってその中に小便をし、神を冒涜する言葉を発した。たちまち彼の口は尻に変わり、以後口で用を足さねばならなくなった。
『源氏物語』「若紫」「若菜」下 光源氏は、父桐壺帝の若い妻藤壺を恋し、彼女との間に男児をもうけた。男児は桐壺帝の子として育てられ、やがて帝(冷泉帝)となった。それから30年後、源氏の若い妻女三の宮は柏木とあやまちを犯し、薫が生まれた。源氏は、薫が柏木の子であることを知りつつも、自分の子として育てねばならなかった。
『今昔物語集』巻9-23 潘果が羊を盗む時、鳴き声を聞かれぬよう羊の舌を抜いて捨てた。1年後、彼の舌はしだいに欠け落ちて行き、遂には消え失せた。
『西遊記』百回本第39回 烏鶏国王が、文殊菩薩の化身である僧を縛り、3日3晩堀の水に漬けた。後に文殊菩薩の乗用の獅子が道士に変身して烏鶏国王を殺し、死体を井戸に落とし3年間水漬けにして、報復した〔*ただし烏鶏国王は、孫悟空の力で蘇生する〕→〔息〕2b。
『真景累ケ淵』(三遊亭円朝) 新五郎は質屋で働き、女中のお園に恋着する(*→〔金貸し〕2a)。ある年の11月20日、彼は「思いを遂げよう」と、物置の藁の上に彼女を押し倒すが、藁の下に押切りの刃があったので、お園は死んでしまった。逃亡した新五郎は、2年後、捕手に追われて、屋根から空地の藁の上へ飛び下りる。そこには押切りがあり、新五郎は足を傷つけ捕らえられた。その日は、お園の3回忌の祥月命日だった。
『日本霊異記』上-16 大和国の男が兎を捕らえ、生きながらその皮をはいだ。まもなく男は、身に毒瘡ができ皮膚が爛れくずれて、苦しみつつ死んだ〔*『今昔物語集』巻20-28に類話〕。
『日本霊異記』上-19 山背国の自度僧が、『法華経』を誦す乞食をあざけり、わざと自分の口をまげて乞食の口まねをした。たちまち自度僧の口はゆがみ、医師を呼んだが、ついに治らなかった〔*『三宝絵詞』中-9に類話。『日本霊異記』中-18では、俗人が高麗寺僧栄常の口まねをしたため、口がゆがむ。『今昔物語集』巻14-28では逆に、僧栄常が乞食僧のまねをして、口がゆがむ〕。
*ベルトラン・ド・ボルンは、英国王父子を2つに分けて互いに反目させたが、死後その報いで、首と胴体を2つに分けられた→〔首〕5aの『神曲』(ダンテ)「地獄編」第28歌。
*無実の者の頸を切った武士は、1年後に自らも頸を刎ねられた→〔同日・同月〕3aの『沙石集』巻9-8。
*妻が、自動車事故をよそおって夫を殺したが、後に妻自身も自動車事故で死んだ→〔夫殺し〕1の『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(ヴィスコンティ)。
★2.前世で他に対して行った善行・悪行が、現世で同じような形で自分の身にふりかかる。
『旧雑譬喩経』巻上-27a 昔、寒い北方の地に貧しい老婆がいた。その地に住む仙人たちは、冬が来ると、皆、南方へ移住した。老婆は1人だけ居残って、仙人たちの持ち物を預かり、春に皆が戻って来ると、預かった物を間違いなく持ち主に返したので、仙人たちは喜んだ。その功徳で女は、「物をなくすことがない」という福に恵まれて現世に生まれ変わった→〔指輪〕5。
『今昔物語集』巻2-5 仏が某家で6日間供養を受け、7日目に帰ろうとした時、暴風雨になった。主人が「今日は留まり給え」と請うと、仏は「前世で私は6日間汝の世話をしたが、7日目に汝は寒さで死んだ。それゆえ私は今、6日間だけ汝から供養を受けた。これ以上は留まれない」と教えた。
『今昔物語集』巻2-32 前世で修行者の腕を斬った天竺の王は、現世では僧となって賊に腕を斬られた。
『今昔物語集』巻3-14 御炊(みかしき=すいじ)の女が、僧に米を供養した。その時、女は、僧の容貌の醜いことを罵った。女は、僧に供養をした功徳で王女に転生したが、僧の醜さを罵ったために、「金剛醜女」と言われるほど醜い容姿に生まれた→〔醜女〕3。
『今昔物語集』巻3-28 仏は、前世で鹿の背を打ったことがあった。そのため、無病のはずの仏が、涅槃時には背中が痛んだ。
*前世で笠を与えたゆえ、現世で天蓋→〔笠(傘)〕1aの『今昔物語集』巻2-22。
*前世で衣を与えなかったゆえ、現世で裸→〔裸〕6bの『今昔物語集』巻4-14。
*前世で母を飢え死にさせたゆえ、現世で飢え死に→〔飢え〕4の『沙石集』巻1-7。
★3.前世からの因果が現世で果たせなければ、来世へ持ち越される。
『子不語』巻6-131 湛一和尚が弟子僧たちに語った。「前世で屠殺人だった男が、罪の償いと救いを求めて豚に転生した。わしは、刀によって彼の悪業を解こうとしたが(*→〔豚〕2b)、愚かなお前たちがそれを妨げた。そのため、豚はこのあと人間に転生して、極刑を受けることになる」。30年後、清貧の官吏が無実の罪で、凌遅の刑(=身体の各部をバラバラにされる刑)に処せられた。
『日本霊異記』下巻序文 山の比丘が、烏に飯を施していた。ある時、比丘が何気なく投げた石が、烏の頭を割ってしまった。烏は死んで猪に生まれ変わり、石をかき分けて食物をさがす。石が転がり落ちて比丘に当たり、比丘は死んだ。
『捜神後記』巻2-6(通巻17話) 周という男は、子供の頃いたずら心から、燕の雛3羽に茨(いばら)の枝を食べさせ、死なせてしまった。周はそのことを忘れたまま成人し、結婚して三つ子をもうけた。三つ子は20歳近くになっても、声は出るのに言葉をしゃべれなかった〔*しかしある日、旅僧の示唆で周は昔の悪行を思い出し、そのとたんに三つ子は人語を話し出した〕。
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