回転式そうめん流し発祥の地
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 16:18 UTC 版)
「唐船峡」の記事における「回転式そうめん流し発祥の地」の解説
唐船峡内にある『指宿市営 唐船峡そうめん流し』は、回転式そうめん流し発祥の地として、唐船峡が全国的に知られるようになった大きな一因となっている。 かつての旧・開聞町には目立った産業が無く、町おこしとして町の発展には不可欠となる観光の目玉の開発が、助役だった井上廣則に任される。唐船峡の清流を観光に使えないかと模索して、1962年(昭和37年)6月に旧・開聞町では初となる、唐船峡の清流を利用してテーブルに埋め込んだ竹樋から素麺を流す『流しそうめん』をはじめたところ、目新しさもあって注目を集めた。しかし、そうめんを流し続ける手間や、竹に生える海苔やカビなど衛生面での管理の難しさに悩まされ、その費用で経営は成り立たず、わずか1年ほどで暗礁に乗り上げる。その後も、高いところから水を流し、そうめんを流せないか試みるも失敗。井上は部下の家族から「たらいで洗濯するように、そうめんを回せたら」というアイデアを聞かされ、自身の妻からも「洗濯桶で洗うように、そうめんを回せたら楽しい」と助言されるも、決め手に欠けると試行錯誤し続けるが、中華料理店の回転テーブルを目にしたことで、これに洗濯用たらいのような水槽を載せてはどうかと発想が閃く。 井上は、鹿児島市の『鶴丸機工商会』初代社長・久保兀(たかし)に「衛生的なそうめん流し器を作れないか」「洗濯で使う金たらいのような機械で、そうめんを回して食べられるような製品」「そうめんを流す人も一緒に食べられるように」と共同開発を依頼。開発当初、そうめんが水と一緒に流れ出てしまったり、そうめんが一つの塊で回ったりと苦労するが、鶴丸機工商会はポリ塩化ビニル製パイプの加工を行ってきたノウハウを生かしつつ、水流にこだわり様々な工夫を重ね、湧水をポンプで約10メートル上のタンクに汲み上げ、落下時の水圧を利用して水流を発生させる方式により、モーターなどの動力は使わず、テーブル上でドーナツ形をしたアクリル製の水路を、かけ流しの冷水がぐるぐる勢いよく回り、回るそうめんを箸ですくって食べる回転式そうめん流し器の第1号機を、約1年の歳月をかけ完成させ唐船峡に納めた。1967年(昭和42年)、開聞町は井上から回転式そうめん流しの特許権を譲渡される。1969年(昭和44年)には、唐船峡公園の整備が行われ、「唐船峡公園町営ソーメン流し」に名称を変更。同年には町営唐船峡そうめん流しの年間利用者が21万5536人に達し、最盛期は1日に約850万円売り上げた。1970年(昭和45年)には、町が回転式そうめん流し器の意匠登録を行い、『そうめん流し』発祥の地として唐船峡をPRすることとなった。例年は全国から年間約20万人の利用客が訪れる鹿児島県内有数の観光スポットになっており、近年はアジア圏からの旅行客も増加している。 水温が年間を通し約13度ある水を活用した唐船峡のそうめん流しは、夏だけでなく季節を問わず年間を通じて楽しめる。そのため、市営唐船峡そうめん流しは年中無休で営業しており、冬でもストーブにあたりながら食べることができる。また、市営唐船峡そうめん流しは屋根付きの屋外施設なため、木の香りや水の音に囲まれ食事ができる。市営唐船峡そうめん流しの回転式そうめん流し器は現在91台あり、うち3台は客の要望により左利き用として鶴丸機工商会が開発した、水の流れが時計回りと反時計回りの2段式になっている。この91台のメンテナンスは、鶴丸機工商会により行われている。市営唐船峡そうめん流しは、めんつゆが鹿児島県指宿市山川産の鰹節や、北海道産の利尻昆布をふんだんに使用し、九州特有の醤油による少し甘めな秘伝の味で、そうめん以外では鯉の洗いが名物となっており、最も人気のあるメニューは、そうめんにマスの塩焼きやコイの洗いなどが付いた『A定食』。また、冬季限定メニューとしてにゅうめんもある。 共同開発した鶴丸機工商会は、業務用・回転式そうめん流し器の製造販売で国内シェアの約8割を誇っており、九州各県のみならず遠くは東北地方や北海道まで設置に行くなど、鹿児島を中心として全国各地に納入しているが、中国や韓国など国外からも購入されている。このそうめん流し器は、第1号機が製造されてからも様々な改良が繰り返され現在の形になったが、一度製造して設置するとほとんど壊れることがない製品のため、ぜんぜん儲からないと語っている。また、鶴丸機工商会では家庭用として卓上用そうめん流し器も製造している。なお、鹿児島市加治屋町において鹿児島県立鹿児島中央高等学校の隣にあった以前の工場兼住宅は、2019年(平成31年)3月16日に火災により全焼したが、周囲の応援により再起し、跡地は売却して2020年(令和2年)6月中旬、鹿児島市山田町に新たな工場を再建して事業を再開した。
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