四字熟語の利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/11 08:52 UTC 版)
本来、四字熟語(中国語では成語)は、漢民族独特の表現体系であった。しかし、慣用句(慣用語)として、古来から日本語の言語文化にも広く浸透し、軽視できぬ存在意義を示しているという。ときに、四字熟語は、力強い印象を持たせることができるため、文章の表題などとしてよく引用される。また、同じ意味の言葉でも、漢字四字で構成される語の方が好まれる例もある。例えば、「広域地方自治体」よりも「都道府県」という表現の方が好まれているが、この理由として、この語がもつ四字熟語性が挙げられるという。 1990年代以降の日本語ブームの状況下で、四字熟語を勉強する若者が増えているという。四字熟語には、歴史や教訓の膨大な累積がたった4文字に圧縮されていると認識されているからである。ある大学生によると四字熟語などの聞きなれない言い回しに「知性を感じる」という。また、意味の分かりにくい外来語の勢力が拡大していく中で、由緒ある漢語を適切に用いることが、世代間のギャップを埋めるだろうと考える者もいるという。 一方で、大学生の学力低下を指摘するために常識とされる四字熟語が用いられた例もある。週刊誌の調査班が東京六大学に通う大学生に抜き打ちで国語・社会・数学の合計10問の問題を解かせるというものであり、そのうち2問が四字熟語の問題であった。その結果によると「暖衣飽食」を答えさせる問題の正答率が6.7%、「付和雷同」を答えさせる問題の正答率が58.3%であったという。評論家の大隈秀夫によると、最近の若者の文章には四字熟語が数多く用いられるが一方で、誤字が散見され、間違った意味で使われることも少なからずあるという。 国語教育においては語彙力を問う目的で四字熟語が試験などにおいて問われやすい。常識的な四字熟語を試験に採用すれば、故事の知識や漢字の読み書き能力をみる問題の作成が容易になり、さらに次回試験に向けてのプールも行いやすくなることから、中学入試や漢字検定においては、四字熟語の対策が必修とされる。また、大学入試においても、四字熟語は現代文や小論文の試験問題を解く上で重要な知識の一つに挙げられると、日本語評論家で元予備校講師の田村秀行の指摘している。さらにある参考書によれば、より専門的な知識が問われる教員採用試験においても、四字熟語についての試験対策が必要であるとしており、「月下氷人」といったあまり見慣れない語の知識もしばしば要求されるという。 とりわけ「厚顔無恥」(誤答例「厚顔無知」)、「意味深長」(誤答例「意味慎重」)、「五里霧中」(誤答例「五里夢中」)など勘違いしやすい四字熟語は、各種試験において頻出であるという。この種の語は、コンピュータに入力する際にも、誤入力することは多く、日本語入力システムのATOKには2009年(平成21年)のバージョンから、誤った四字熟語を自動的に指摘する機能が追加されている。1964年(昭和39年)公開の映画『007 危機一発』を発端として「危機一発」の誤字が定着してしまった例もある(本来の表記は「危機一髪」である)。 四字熟語に親しむ世代には、低年齢の児童や幼児も含まれ、四字熟語をテーマとする玩具も存在する。ある玩具店には、四字熟語が印刷されたトイレットペーパーさえ置いてあるという。 非漢字圏の外国人でも四字熟語に興味をもつ者もいる。例えば、ハンガリー出身の数学者であるピーター・フランクルは、「乾坤一擲」「駑馬十駕」など難解な四字熟語を愛好しており、「漢字は確かに複雑だが、複雑なほど人間にとっては恵みになっている」のように評価している。 漫画やアニメといった題材の中で四字熟語がモチーフとなる例もある。特に2004年(平成16年)頃から無生物やその他さまざまな概念をキャラクター化した、いわゆる「萌え擬人化」が一つのジャンルとして一定の地位を獲得してからは、四字熟語でさえも擬人化の対象とした『4じてん。』(角川書店 2010年(平成22年) - )のような作品も出てきた。 また、ある物事を表現するのに、四字熟語を挙げさせるというケースもある。あるメーカーがコーヒーを愛飲する男女に「コーヒーを連想させる四字熟語」を尋ね たところ、男性は「閑話休題」「悠々自適」などを挙げ、女性は「悠々自適」「気分転換」などを挙げることが多かったという。
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