各章のあらまし
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「バガヴァッド・ギーター」の記事における「各章のあらまし」の解説
『バガヴァッド・ギーター』は叙事詩『マハーバーラタ』のビーシュマ・パルヴァに収められている18の章(25章から42章) の700行の詩からなる。校訂の違いにより『マハーバーラタ』の6巻の25章から42章にあたる場合と、6巻の23章から40章にあたる場合がある。ヴェーダーンダ学派の思想家シャンカラが注釈を寄せた校訂では700行の詩が収められているが、さらに古い時代の写本には745の詩が収録されていたという痕跡がある。宗教的意味のみならず明喩と暗喩で織り成された詩句それ自体が詩趣に富んでいる文学作品で、詩句の並びと様式は基本的にサンスクリットのアヌシュトゥブ韻律に倣っており、いくつかの表現的な詩句にはトリシュトゥブ韻律が見られる。(韻律についてはシュローカ、インド古典詩の韻律を参照。) サンスクリット版の『バガヴァッド・ギーター』には各章にヨーガの名前がタイトルとして当てられている。しかしこれら章のタイトルはサンスクリットの『マハーバーラタ』には見られない。スワミ・チドバヴァーナンダ(英語版)は、『バガヴァッド・ギーター』の各章はヨーガと同じように、「体とこころを鍛え」てくれる物だから、18のそれぞれの章は個別のヨーガで呼ばれている、と説明している。彼は第一章に「Arjuna Vishada Yogam」すなわち「アルジュナ失意のヨーガ」と名づけている。エドウィン・アーノルドは「The Distress of Arjuna」と英訳を当てた。 Gītā Dhyānam (9行): ギーター・デャーナムはギーターの一部ではないが一般的にギーターの前書きとして添えられる。ギーター・デャーナムの詩句は、様々な聖典、聖人、そして神を称え、ギーターとウパニシャッドの関係を特徴付け、神が差し伸べてくれる力を明示している。ギーターを読む前にギーター・デャーナムを読むことが慣習となっている。 Arjuna–Viṣāda yoga (46行): アルジュナはクリシュナに戦車(Ratha)を両軍の中央へと進めるように要求する。これから始まる戦争によって友人や親類を失うことを憂い、失意に満たされていくアルジュナが描かれている。 Sāṃkhya yoga (72行): クリシュナに助言をもとめたアルジュナは、カルマ・ヨーガ、ギャーナ・ヨーガ(Jñāna yoga)、サーンキヤ・ヨーガ、ブッディ・ヨーガ(Buddhi yoga)、そして魂の普遍性など、様々なテーマに関して教示を受ける。この章はバガヴァッド・ギーター全体の要約とみなされることがある。 Karma yoga (43行): カルマ・ヨーガ、すなわち義務によって定められた、結果に執着しない行為が、アルジュナにとっていかにふさわしいものかをクリシュナが説明する。 Jñāna–Karma-Saṃnyāsa yoga (42行): クリシュナは、彼がいままでにいくつもの生を受け、善人を救うため、悪人を滅ぼすため、師(グル)を受け入れることの大切さを強調するためにヨーガを説いてきたことを明かす。 Karma–saṃnyāsa yoga (29行): アルジュナは行為の放棄と、義務によって定められた、結果に執着しない行為とではどちらが良いかとクリシュナにたずねる。クリシュナはどちらも同じように導いてくれるが、カルマ・ヨーガによる行為、すなわち後者の方が優れていると説く。 Dhyāna yogaあるいはĀtmasaṃyama yoga (47行):クリシュナはラージャ・ヨーガ(Aṣtāṅga yoga)について述べる。熟達に至った精神を得るために用いられる意志、技術の難しさをより明確に示した。 Jñāna–Vijñāna yoga (30行): クリシュナは根本原質について、そしてその人を錯覚させるエネルギーであるマーヤーについて語る。 Akṣara–Brahma yoga (28行): 『バガヴァッド・ギーター』の終末論を含む。臨終の際の信仰の重要性、物質世界と精神世界の違い、死後の黒と白の二道について語られる。 Rāja–Vidyā–Rāja–Guhya yoga (34行): クリシュナは彼の永遠の力がいかに広がるか、作られるか、保存されるか、そして世界を滅ぼすかを説く。神学者クリストファー・サウスゲート(Christopher Southgate)はこの章の詩を万有内在神論と捉え、一方でドイツの内科医で哲学者のマックス・ベルンハルト・ワインスタイン(英語版)は汎理神論と捉えている。 Vibhūti-Vistāra–yoga (42行): クリシュナが全ての物質と精神的存在の源として描写される。アルジュナは偉大なリシたちの言葉を引用してクリシュナが最高の存在だと認める。 Viśvarūpa–Darśana yoga (55行): アルジュナの求めに応じて、クリシュナがヴィシュヴァールーパ、あらゆる方角に顔を向け千の太陽の輝きを放ち、その中に他の全ての存在と物質を含む神の顕現した姿を見せる。 Bhakti yoga (20行): この章でクリシュナは神に帰依する道を称える。帰依に基づいた奉仕、すなわちバクティ・ヨーガ(Bhakti yoga)を説明する。彼はまた宗教的修練の3種類の違った形を説明する。 Kṣetra–Kṣetrajña Vibhāga yoga (35行): はかなく腐りやすい肉体と永遠普遍の魂の違いが説明される。個の意識(プルシャ)とユニバーサルな意識(プラクリティ)の違いが明かされる。 Guṇatraya–Vibhāga yoga (27行): クリシュナは良識、感動、無知に付随する三つの物質の性質(グナ)について説明する。それらがそれぞれ生きる存在に与える影響についても述べられる。 Puruṣottama yoga (20行): クリシュナは全能、全知、遍在といった超自然的な神の特徴を確認する。クリシュナは天国に根があり、葉が地上にある、物質の存在を象徴した木、アシュヴァッタ樹(英語版)を説明する。その木は「無執着の斧」によって打ち倒され、その後、クリシュナの「最高の住処」へと到達することができると説く。 Daivāsura–Sampad–Vibhāga yoga (24行): クリシュナは神的な資質と阿修羅的な資質を説明する。クリシュナは至高の目的地を得るためには欲望、怒り、貪欲をあきらめ、ブッディと経典を典拠とし美徳と悪徳を見分けなければならないと忠告した。 Śraddhātraya-Vibhāga yoga (28行): クリシュナは3種類の要素(グナ)に基づいて、信仰、思想、行い、さらにはその人の食べる物までを3種類に区別した。 Mokṣa–Saṃnyāsa yoga (78行): この章でこれまでの17の章の結論が要約される。クリシュナはアルジュナに一切のダルマ(義務)を捨てるよう、ただ彼に服従するよう頼む。そしてこれを人生の理想として描写した。
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