各稿・版の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/15 04:46 UTC 版)
「交響曲第3番 (ブルックナー)」の記事における「各稿・版の評価」の解説
第2稿をもとにしたエーザー版とノヴァーク版第2稿は、本質的には同一のものであるが、エーザーは1878年の出版の際の指示を一部採用している。大きな相違は第3楽章のコーダであり、エーザーは「印刷しない」の指示を採用し、これをスコアには含めてない。ノヴァーク版ではそのままスコアに含めている。 第3稿をもとにしたノヴァーク版第3稿と初版は、本質的には同一のものであるが、後者は表情付けなど細かい指示が随所でなされている。たとえば第1楽章の100小節目の木管の和音は、ノヴァーク版第3稿では単なる延ばしの和音だが、初版ではcresc.が付記され、次のヴァイオリンの旋律への布石にもなっている。 第1稿には、ワーグナーの楽劇の旋律の引用が随所に見られたが、第2稿・第3稿と改訂が進むにつれ、引用箇所は削除されていった。また終楽章で、第1稿では先行3楽章の主題が全て回想されるが、第2稿では第1楽章の回想のみ、第3稿では回想がなされない。その他、第1稿では、第2稿以降に比べると、主題・旋律に要する小節数が不均等である(交響曲第4番の第1稿においても、同様の傾向がみられる)。 概して、第3稿の完成度の高さを評価する演奏者が多く、実際の演奏でも、ノヴァーク版第3稿が使用されることが多い。ただし、第2稿・第1稿の方に評価を与え、これらを使用する指揮者も少なくない。第3稿については、音楽の展開が晩年のブルックナーのスタイルになってしまっており(特に第1楽章)、第2稿の方が、この曲の主題や楽想にふさわしいとの評価もある。第1稿については、「未整理」「冗長」と評されることも多いが、逆に「革新的」という視点で捉える指揮者もいる。
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