信者による説明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 05:46 UTC 版)
カトリック教義においては、この現象は1917年10月13日以前に度々姿を現した聖母マリアによる、羊飼いの子供たちに対する約束の履行と考えられている。子供たちの説明によると、ファティマの聖母と称された聖母マリアは、彼らが真実を告げていることを人々に示すために奇跡を行うことを約束し、太陽が空中で「信じがたいような」動きをするのを群衆に見せた。カトリックは何世紀にもわたって聖母マリアを「奇跡を行う人」と考えており、この見解は21世紀まで続いている。様々な神学者と無神論的科学者がこの現象に対する科学的説明の限界について議論し、神の介在が太陽の現象を引き起こすための考え得るメカニズムを提示してきた。 オックスフォード大学イアン・ラムゼイ・センター科学・宗教講座の研究部長であるアンドリュー・ヴィンセント神父は、「科学的観点は奇跡を無視するものではなく、ファティマで起きた現象は大勢の人が目撃しており、極めて信憑性が高い」と述べている。彼は、通常の先入観は科学的法則の範囲における理解不足を伴い、科学的法則とは自由な作用因子から隔離された自然体系がどのように振る舞うかを説明するのみであると述べている。彼は、この現象は「最も類い稀な性質と信憑性を持つ公的な奇跡」であると結論付け、この現象が起きた年を、1517年のプロテスタント主義、1717年のフリーメイソン、1917年の無神論的共産主義のように、ファティマの贖罪のメッセージを求める歴史的に極めて重要な意味を持つ節目の年であると考えている。 神学者、大学教授、司祭であるスタンリー・L・ジャキは、神の介在によって自然気象現象の協調的相互作用や氷晶を伴う大気レンズの増強が、予言された通りの時間に発生したこと自体がこの奇跡の本質であると結論付けている。太陽の運動を感知した観測所は無く、圧倒的多数の地上にいる一般大衆も気づかなかったことから、彼は太陽が動かなかったことは事実だとしている。 ジャキはこの現象を次のように説明している。 ……急激な気温逆転が発生したに違いない。冷気と暖気の塊は、最初は回転する大気レンズを地上に向けて楕円軌道を描くように押し進め、次にブーメランが元の位置に戻るかのように押し上げた。一方でレンズの中の氷晶は、太陽光線を反射させるための大量の反射板としての役割を果たした…。ただ一人の観察者(ある弁護士)のみ、下降と上昇の進路は小さな円が重ね合わさって楕円を描いていたと30年後に述べた。流体力学や、さらにはブーメランの仕組みにまで詳しい者であれば、そのような観察についてよく理解できるかもしれない。手元には太陽の奇跡について科学的にアプローチするための科学的情報が実に大量にある…。たとえ実際に起きたことについてこれ以上理解したいと思わないとしても、綿密に組み合わされた非常に多くの物理的要因の相互作用それ自体が奇跡と言えるだろう。この太陽の「奇跡」はまれではあったが、単なる気象現象ではなかったことは明らかだ。そうでなければ、敬虔な群衆の立ち会いの有無に関わらず、それ以前にも以後にも観察されていただろう。奇跡について私が書いた他の書籍でも述べているように、神は奇跡の創出において、物理的構成要素とそれらの相互作用を大いに強調することによって自然界の基礎を成すものを利用することが多い、ということを私は主張しているに過ぎない。 ジャキは、信仰者はファティマで奇跡が起きたと信じるべきであり、「歴史上最も偉大かつ無比の奇跡的事実としてのキリストを人生の目的とする者」は、奇跡を裏付ける事実に注目する必要があると述べている。 デ・マルキ神父は、現象が起こる直前の大雨によってできた水たまりに対する太陽の影響のような、関連する奇跡的現象は本物であると信じている。彼は、「……この事例を研究した技術者たちは、目撃者によって報告されているような数分の内にできた水たまりを干上がらせるためには、莫大なエネルギー量が必要であると考えている」と述べている。 また彼は、詳細不明の「奇跡」の予言、現象の突然の開始と終了、様々な宗教的背景を持つ観察者たち、非常に多くの数の群衆の参加、18km離れた場所からの目撃、既知の科学的原因要素の欠如といった事柄が、集団幻覚や集団ヒステリーである可能性が低いことを示していると記している。デ・マルキは、「明らかな神への言及、そしてこの話の全体的な状況を考慮すると、我々はこの歴史上最も明白で壮大な奇跡は神のみによるものと考えなければならないようだ」と結論付けている。 20世紀末期のファティマの元精神科看護師で地方ジャーナリストのレオ・マディガン(英語版)も、批判者たちが主張する集団催眠の可能性を否定し、目撃者たちの説明が一致しないのは、驚き、恐怖、精神的高揚、そしてこの現象の超自然的性質に因ると考えている。マディガンは、人々が見たものは「聖母マリア自身の光の反射が太陽そのものに投影されたもの」であると記している。
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