代表的な吸収促進薬とは? わかりやすく解説

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代表的な吸収促進薬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/22 06:44 UTC 版)

吸収促進薬」の記事における「代表的な吸収促進薬」の解説

カプリン酸ナトリウム カプリン酸ナトリウムC10デカン酸ナトリウム)は世界で初め実用化された吸収促進薬である。牛乳どの様々な栄養源含まれている成分であり、GRASgenerally recognized as safeステータス獲得している。また米国欧州では健康に与え影響はないと考えられており、1日あたり使用制限規定されていないカプリン酸ナトリウム吸収促進薬として添加され臨床応用がある。アンピシリンカプリン酸ナトリウム添加したにヘルペン坐薬住友製薬京都薬品工業との共同開発)、アンピレクト坐薬京都薬品工業)、第三世代セフェム抗生物質であるセフチゾキシムカプリン酸ナトリウム添加したエポセリン坐薬藤沢薬品京都薬品工業との共同開発)が臨床応用として知られている。いずれも小児座薬である。 カプリン酸ナトリウム可溶性のアニオン性界面活性剤である。カプリン酸ナトリウムpKa以下となる胃液中では不溶性の非イオン形で存在するpKaより高い小腸pH値においてはイオン化されて洗浄力発揮するカプリン酸ナトリウム作用機序に関して様々な実験方法研究されている。傍細胞経路利用した吸収促進と経細胞経路利用した吸収促進知られている。傍細胞経路へのよく知られ作用としてはカプリン酸ナトリウムホスホリパーゼCPLC)を活性化することで始まりイノシトール1,4,5-三リン酸IP3)の生成増加する。さらにIP3増加により細胞内のカルシウムイオン増加引き起こし、これがカルモジュリンCAM)およびミオシン軽鎖キナーゼMLCK)の活性化につながる。これらの一連のシグナル伝達最後に細胞内のミオシンアクチン重合促進し細胞収縮起こりその結果として細胞間隙開口すると推定されている。 その後カプリン酸ナトリウムクローディンオクルディン局在性変化させることやバイセルラータイトジャンクションからクローディン5を除去し、トリセルラータイトジャンクションからトリセルリン除去することで傍細胞経路利用した吸収促進を行うことが明らかになった。 経細胞経路に関してクローディン4およびクローディン5とカプリン酸ナトリウム置換することにより膜の撹乱引き起こし薬物の経粘膜透過性向上させることが示唆されている。 特異的な吸収促進はないた副作用危惧されるカプリン酸ナトリウムマンニトールとともに血液脳関門吸収促進薬として使用検討された。 カプリル酸ナトリウム カプリル酸ナトリウムC8オクタン酸ナトリウム)はカプリン酸ナトリウム同様にタイトジャンクション作用する吸収促進薬である。 SNAC SNACサリチル酸合成N-アセチル化アミノ酸誘導体であり、カプリン酸ナトリウム類似した両親媒性界面活性を示す弱酸性物質である。粘膜透過性の低い薬物腸内シャペロン化できる物質見出すスクリーニング過程で見いだされた。 経口のGLP-1製剤であるリベルサス経口セマグルチド)は吸収促進薬としてSNAC添加されている。 胆汁酸 胆汁酸哺乳類胆汁含まれるステロイド誘導体である。食物脂肪薬物吸収関与している。また胆汁体内からの主要なコレステロール排出経路として知られている。肝臓合成されたものを一次胆汁酸といい、消化管の微生物によって代謝された産物二次胆汁酸という。胆汁酸塩はリン脂質への相互作用ミセル形成で経細胞経路による透過性亢進させ、タイトジャンクションヘミデスモソームとの相互作用傍細胞経路透過性亢進させる。 細胞膜透過ペプチド 細胞膜透過ペプチドアミノ酸6~20残基程度カチオンペプチド細胞内へのすぐれた内在化能力特徴とする。高分子医薬品化学的に架橋させてもちいることもあるが目的薬物添加して用いることもある。界面活性剤のような吸収促進薬消化管内に投与した場合粘膜上皮細胞膜への刺激作用タイトジャンクション構造変化誘発する可能性がある。細胞膜透過ペプチド添加粘膜障害惹起することなく薬物吸収を向上させたという報告がある。 C-CPE ウェルシュ菌エンテロトキシン(CPE; Clostridium perfringens enterotoxin)のC末端の184-319であるC-CPE184-319はクローディン-3クローディン-4に作用することが報告されていた。C-CPE184-319は上皮細胞作用させる細胞障害性を伴うことなくタイトジャンクションバリア機能阻害するため、吸収促進薬として応用可能な可能性があった。昭和薬科大学近藤渡辺らはC-CPE184-319がラット空腸用いたin site loop assay分子量4000デキストラン(FD-4)の吸収促進効果があることを明らかにした。中鎖脂肪酸カプリン酸C10)の400倍も効果認められた。C-CPE184-319の作用分子量20000超える著しく低下したタイトジャンクション間隙は0.5nm程度であり、カプリン酸投与で1.5nmまで開口する。C-CPE184-319投与では2nm程度開口すると推定された。この研究によりクローディンバインダー利用した吸収促進概念実証proof of concept)が確立した。 さらに2007年AndersonグループがC-CPE194-319というC-CPE184-319のN末10アミノ酸欠損体を作成した。C-CPE194-319は高い溶解度示し構造解析が可能であった大阪大学近藤八木らはC-CPE194-319が高い溶解度だけではなくクローディン4への結合TJストランド消失能力保持していることを明らかにした。C-CPE194-319を用いてバイオ医薬を非侵襲的投与できる概念実証確立した。さらに彼らはクローディン1、2、4、5結合するC-CPEの変異体であるm19開発した。protzeらはクローディン5のみに結合する変異体である C-CPE Y306W/S313Hを開発した。これは血液脳関門通過させる吸収促進薬となる可能性がある。C-CPE Y306W/S313HはゼブラフィッシュではBBB透過性亢進させるという報告がある。 Angubindin-1 ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)はクロストリジウム属属す嫌気性桿菌である。河川下水、海、土壌中など自然界広く分布している。ヒトを含む動物腸内細菌叢における主要な構成であることが多い。少なくとも12種類毒素作り、α, β, ε, ιの4種の主要毒素産生性によりA, B, C, D, E型5つの型分類されるE型ウェルシュ菌α毒素とι(イオタ毒素2種類毒素を主に産出するι毒素独立した2種類蛋白質からなる二成分毒素である。stilesとWlikinsはイオタ毒素精製し毒素互いに結合相互作用がなく、Ia成分軽鎖イオタa成分)とIb成分重鎖イオタb成分からなる二成分毒素で、両者共存下で毒素作用を示すことを報告したイオタ毒素ボツリヌスC2毒素C2ⅠとC2)や炭疽菌毒素PA、IF、LF)やスピロフォルムイオタ毒素毒素などと同じADPリボシル化毒素型ファミリー属する。Ibドメイン4の一部である442-664アミノ酸残基からなるリコンビナント蛋白質Ib442-664はアンギュリン1およびアンギュリン3と相互作用する。Ib442-664はangubindin-1と言われるようになったアンギュリン1は脳微小血管内皮にも発現しているためangubindin-1を用いると分子量5000程度アンチセンスオリゴヌクレオチド血液脳関門通過し中枢神経系送達される。angubindin-1は細胞毒性示さずマウスにも安全に投与可能である。

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