トリセルリン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/18 10:03 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動MARVELD2 | |||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
識別子 | |||||||||||||||||||||||||
記号 | MARVELD2, DFNB49, MARVD2, MRVLDC2, Tric, MARVEL domain containing 2 | ||||||||||||||||||||||||
外部ID | OMIM: 610572 MGI: 2446166 HomoloGene: 27037 GeneCards: MARVELD2 | ||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||
オルソログ | |||||||||||||||||||||||||
種 | ヒト | マウス | |||||||||||||||||||||||
Entrez |
|
|
|||||||||||||||||||||||
Ensembl |
|
|
|||||||||||||||||||||||
UniProt |
|
|
|||||||||||||||||||||||
RefSeq (mRNA) |
|
|
|||||||||||||||||||||||
RefSeq (タンパク質) |
|
|
|||||||||||||||||||||||
場所 (UCSC) |
Chr 5: 69.42 – 69.44 Mb | Chr 5: 100.6 – 100.62 Mb | |||||||||||||||||||||||
PubMed検索 | [3] | [4] | |||||||||||||||||||||||
ウィキデータ | |||||||||||||||||||||||||
|
トリセルリン(英語、Tricellulin)[5]は、三つの上皮細胞間に形成される細胞間結合の様式の1種であるトリセルラータイトジャンクション(三細胞間密着結合)を構成するタンパク質の一つである。
構造
トリセルリンは約65 kDa(キロダルトン)の膜タンパク質である。細胞膜を4回貫通しており、膜貫通領域周辺はMARVELドメインと呼ばれる。2つの細胞外ループと比較的長い細胞質テールをN末端、C末端の両方に持つ。C末端側のOCELドメインは相同タンパク質のオクルディンとの相同性が特に高い。
機能と疾患
トリセルリンは、タイトジャンクションの形成には不可欠ではない[6]。 しかし、相同タンパク質であるオクルディンと協調してタイトジャンクションストランド(TJストランド)の枝分かれを形成し、複雑な網目状のTJストランドネットワークの構築を行うことにより強い上皮バリアを形成する働きがあると報告されている[7]。
トリセルリンは、ヒト劣性非症候群性難聴DFNB49の原因遺伝子である[8]。ヒトの変異(Arg500Ter)を模したノックインマウス(Arg497Ter)の解析から、トリセルリンはトリセルラータイトジャンクションの微細構造の維持に必要であり、トリセルリンがないと内耳有毛細胞が変性死することが難聴の原因であることが明らかにされている[9]。トリセルリンノックアウトマウスでも同様の表現型が見られる[6]。
発見の経緯
トリセルリンは2005年に京都大学の月田承一郎らのグループによって、人工的に上皮間葉転換を起こした細胞で発現が減少する遺伝子をジーンチップで探索する実験によりオクルディンとの相同性を指標として発見された[5]。
脚注
- ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000274671、ENSG00000152939 - Ensembl, May 2017
- ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000021636 - Ensembl, May 2017
- ^ Human PubMed Reference:
- ^ Mouse PubMed Reference:
- ^ a b Ikenouchi J, Furuse M, Furuse K, Sasaki H, Tsukita S, Tsukita S: Tricellulin constitutes a novel barrier at tricellular contacts of epthelial cells. J Cell Biol. 2005 Dec;171(6):939-45 PMID 16365161
- ^ a b Kamitani T, Sakaguchi H, Tamura A, Miyashita T, Yamazaki Y, Tokumasu R, Inamoto R, Matsubara A, Mori N, Hisa Y, Tsukita S. Deletion of tricellulin causes progressive hearing loss associated with degeneration of cochlear hair cells. Sci Rep, 5: 18402, 2015. PMID 26677943
- ^ Saito AC, Higashi T, Fukazawa Y, Otani T, Tauchi M, Higashi AY, Furuse M et al., Occludin and tricellulin facilitate formation of anastomosing tight-junction strand network to improve barrier function. Mol Biol Cell, 32(8): 722-738, 2021. PMID 33566640
- ^ Riazuddin S, Ahmed ZM, Fanning AS, Lagziel A, Kitajiri S, Ramzan K, Khan SN, Chattaraj P, Friedman PL, Anderson JM, Belyantseva IA, Forge A, Riazuddin S, Friedman TB. Tricellulin is a tight-junction protein necessary for hearing. Am J Hum Genet, 79(6);1040-51, 2006. PMID 17186462
- ^ Nayak G, Lee SI, Yousaf R, Edelmann SE, Trincot C, Van Itallie CM, Sinha GP, Rafeeq M, Jones SM, Belyantseva IA, Anderson JM, Forge A, Frolenkov GI, Riazuddin S. Tricellulin deficiency affects tight junction architecture and cochlear hair cells. J Clin Invest, 123(9);4036-49, 2013. PMID 23979167
トリセルリン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 08:33 UTC 版)
トリセルラータイトジャンクションで最初に発見された構成蛋白質である。別名はmarvelD2である。発見当初マウストリセルリンは分子量が63.6kDで、短いN末端細胞質尾部、2つの細胞外ループおよび長いC末端細胞細胞質尾部をもつ4回膜貫通型蛋白質として同定された。オクルディンとトリセルリンとmarvelD3が相同性がありMARVELファミリー(またはTAMPファミリー)とよばれる。C末端細胞質尾部にはZO-1やアクチンと相互作用をするのに必要なOCELドメインが保存されている。C末端はオクルディンとの相同性が32%もある。その後トリセルリンは4つのアイソフォームがあることがわかった。ヒトのトリセルリン遺伝子(TRIC)にはTRIC-a、TRIC-a1、TRIC-b、TRIC-cなどがあるが単にトリセルリンと言われた場合は多くの場合最長のTRIC-aを指すことが多い。7つのエクソンを含み、エクソン2に4つの膜膜貫通領域がコードされ、C末端にOCELドメインがコードされる。TRIC-a1はエクソン3を欠く。TRIC-bはC末端のOCELドメインを欠く。TRIC-Cは選択的スプライシングの結果、エクソン2の膜貫通領域が2つになっている。C末端細胞質ドメインに変異があるとDFNB49という難聴の原因となる。C末端細胞質ドメインはアンギュリンファミリーとの相互作用に関与する。このドメインがアンギュリンファミリーと相互作用することでトリセルリンはトリセルラーコンタクトに局在する。トリセルリンは上皮や内皮のトリセルラーコンタクトの他に樹状細胞、ミクログリア、シュワン細胞でも発現している。 DFNB49難聴を引き起こす変異トリセルリンのノックインマウスでは有毛細胞の変性があり進行性難聴をしめす。そしてトリセルラータイトジャンクションにトリセルリンが局在せず、トリセルラーコンタクトでbTJの構造が分離していた。予想外にトリセルリンのノックアウトマウスは有毛細胞の変性による進行性難聴を示す。腸管上皮や血管内皮の傍細胞経路はWTと同様であり、透過型電子顕微鏡ではバイセルラータイトジャンクションの構造は維持された。 マウス上皮由来培養細胞(マウスEph4)でTRIC-aをノックダウンするとTERの低下と4kDのデキストランの透過性が亢進した。250kDの透過性は変化しなかった。形態学的にはトリセルラーコンタクト周囲のbTJの構造が乱れた。トリセルリンのノックダウンはバイセルラータイトジャンクションとトリセルラータイトジャンクションの両方に影響を与えてしまうため、KrugらはユニークなアプローチでtTJの特性を示した。培養細胞(MDCKⅡ)にTRIC-aを過剰発現させるとTERは変化せずに4kb、10kb、20kbの透過性が低下した。Krugらはトリセルラータイトジャンクションにも小分子の経路と大分子の経路があるが、トリセルラータイトジャンクションは傍細胞伝導率の1%しか関与しないため、イオン透過性が変化しないと考察した。また過剰発現で透過性が低下することからトリセルリンが大分子透過に関与すると主張した。そして中心管を3kDの蛍光つきデキストランが通過することを視覚化した。 培養細胞でオクルディンをノックダウンするとバイセルラータイトジャンクション内のトリセルリンが増加する。これはオクルディンがバイセルラータイトジャンクションからトリセルリンを排除していることを意味する。 オクルディン同様にトリセルリンも病原微生物のターゲットとなっている。赤痢菌はトリセルラータイトジャンクションを介して隣接する上皮細胞内に侵入し、緑膿菌は一過性にトリセルリンをダウンレギュレートする。
※この「トリセルリン」の解説は、「密着結合」の解説の一部です。
「トリセルリン」を含む「密着結合」の記事については、「密着結合」の概要を参照ください。
- トリセルリンのページへのリンク