傍細胞経路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 08:33 UTC 版)
薬物を腸管上皮や血液脳関門を通過させるには経細胞経路または傍細胞経路を薬物が通過する必要がある。上皮細胞または内皮細胞の細胞同士の隙間から物質輸送を行う経路を傍細胞経路という。傍細胞経路には電荷選択性透過経路(charge-selective pathway)とサイズ選択性透過経路(size-selective pathwayまたはリーク経路、leak pathway)が知られている。バイセルラータイトジャンクションでは電荷選択性透過経路はチャネル型クローディン(Pore forming claudins)によって形成されると考えられている。透過できるサイズや電荷は構成するクローディンによっても異なるが0.4nm未満の小分子が瞬時に通過できる(クローディン2では0.65 nm、クローディン15では0.8 nm)。電荷選択性透過経路のバリア機能はTERで評価される。クローディンのトランス相互作用でチャネルが形成される。しかしどのような構造変化でチャネルが開閉するかなどまだわからない点も多い。バイセルラータイトジャンクションではリーク経路は30~60nmまで透過可能と言われている。リーク経路の有力な仮説のひとつにdynamic strand modelというものがる。dynamic strand modelではリーク経路はタイトジャンクション構成蛋白質と脂質の相互作用で形成されると考えられている(タイトジャンクション自体をprotein-lipid hybrid modelで考えている)。タイトジャンクション構成蛋白質の結合やタイトジャンクション構成蛋白質の膜状の移動の結果、高分子が傍細胞経路を通過する。オクルディンやトリセルリンが高分子のサイズを規定すると考えられている。高分子が一定の時間をかけて通過するのでトレーサーを用いて透過率を評価する。 電荷選択性透過経路はチャネル型クローディンがtrans相互作用の結果生じた孔を小分子が通過する。リーク経路はオクルディンがサイズを規定し逆ミセルの形態で高分子を通過させる。オクルディンをノックダウンすることで6.25nmほどの高分子の透過性が亢進するのでオクルディンがバリアー機能を担っている。TNFによって高分子の透過性は亢進する。またタイトジャンクションストランドへの傷害はリーク経路を亢進させる。タイトジャンクションにはバイセルラータイトジャンクションの他、トリセルラータイトジャンクションが知られている。電荷選択性透過経路とリーク経路はそれぞれのタイトジャンクションに存在する。タイトジャンクション構成蛋白質の違いから両者の役割は異なると考えられている。トリセルラータイトジャンクションの特徴としては直径12 nmにおよぶ中心管の存在があげられる。形態学的な特徴から高分子が透過しやすいと予想された。トリセルラータイトジャンクションでは電荷選択性透過経路とリーク経路はいずれも中心管を通過するものと考えられている。トリセルリンの過剰発現で高分子の透過性が低下するがTERが低下しなかった。Krugらはこの現象をトリセルリンがリーク経路のサイズ制限を行っているためと考えた。またトリセルラータイトジャンクションは傍細胞伝導率の1%しか関与しないためトリセルラータイトジャンクションのみの電荷選択性透過経路の透過率が変化してもTERは変化しないと考察した。
※この「傍細胞経路」の解説は、「密着結合」の解説の一部です。
「傍細胞経路」を含む「密着結合」の記事については、「密着結合」の概要を参照ください。
- 傍細胞経路のページへのリンク