オクルディン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/01 07:29 UTC 版)
OCLN | |||||||||||||||||||||||||
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識別子 | |||||||||||||||||||||||||
記号 | OCLN, BLCPMG, PPP1R115, occludin, PTORCH1 | ||||||||||||||||||||||||
外部ID | OMIM: 602876 MGI: 106183 HomoloGene: 1905 GeneCards: OCLN | ||||||||||||||||||||||||
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オルソログ | |||||||||||||||||||||||||
種 | ヒト | マウス | |||||||||||||||||||||||
Entrez | |||||||||||||||||||||||||
Ensembl | |||||||||||||||||||||||||
UniProt | |||||||||||||||||||||||||
RefSeq (mRNA) | |||||||||||||||||||||||||
RefSeq (タンパク質) | |||||||||||||||||||||||||
場所 (UCSC) | Chr 5: 69.49 – 69.56 Mb | Chr 5: 100.63 – 100.69 Mb | |||||||||||||||||||||||
PubMed検索 | [3] | [4] | |||||||||||||||||||||||
ウィキデータ | |||||||||||||||||||||||||
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オクルディン(英語: occludin[5])は、細胞間結合の様式の1種であるタイトジャンクション(密着結合)を構成するタンパク質の一つである。
構造
オクルディンは約65 kDa(キロダルトン)の膜タンパク質である。細胞膜を4回貫通しており、2つの細胞外ループとN末端とC末端の細胞質テールを持つ。1つ目の細胞外ループはグリシンとチロシンに富む。4回の膜貫通部を含む領域はMARVELドメインと呼ばれる。また、C末端側のOCELドメインでタイトジャンクション裏打ちタンパク質のZO-1と結合する[6]。
機能と疾患
オクルディンはタイトジャンクションの構造の形成には必要ないと考えられていた[7][8]が、ホモログであるトリセルリンと協調してタイトジャンクションストランドの枝分かれの形成に関与し、タイトジャンクションストランドの複雑な網目状ネットワークの構築を通じてバリア機能を強化する働きがあると報告されている[9]。
オクルディンは、先天性の小頭症や頭蓋内の石灰沈着、発育遅滞などの症状を呈するヒト偽TORCH症候群(英語: pseudo-TORCH syndrome)の原因遺伝子である[10]。
オクルディンノックアウトマウスは正常なタイトジャンクション構造を有する[8]が、発育遅滞、雄性不妊、哺育不全、胃上皮の慢性炎症と過形成、脳の石灰化、精巣の萎縮、唾液腺線条部の顆粒の喪失、緻密骨の菲薄化[8]、先天性難聴[11]などの表現型を呈する。
また、クローディン1とともにC型肝炎ウイルスの受容体として知られる[12]。
発見の経緯
オクルディンは1993年に京都大学の月田承一郎らのグループによって報告された[5]。
脚注
- ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000197822、ENSG00000273814 - Ensembl, May 2017
- ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000021638 - Ensembl, May 2017
- ^ Human PubMed Reference:
- ^ Mouse PubMed Reference:
- ^ a b Furuse M, Hirase T, Itoh M, Nagafuchi A, Yonemura S, Tsukita Sa, Tsukita Sh.: Occludin: a novel integral membrane protein localizing at tight junctions. J Cell Biol. 1993 Dec;123(6 Pt 2):1777-88 PMID 8276896
- ^ Furuse M, Itoh M, Hirase T, Nagafuchi A, Yonemura S, Tsukita Sa, Tsukita Sh. Direct association of occludin with ZO-1 and its possible involvement in the localization of occludin at tight junctions. J Cell Biol, 127(6 Pt 1): 1617-26, 1994. PMID 7798316
- ^ Saitou M, Fujimoto K, Doi Y, Itoh M, Fumimoto T, Furuse M, Takano H, Noda T, Tsukita Sh. Occludin-deficient embryonic stem cells can differentiate into polarized epithelial cells bearing tight junctions. J Cell Biol, 141(2): 397-408, 1998. PMID 9548718
- ^ a b c Saitou M, Furuse M, Sasaki H, Schulzke JD, Fromm M, Takano H, Noda T, Tsukita Sh. Complex phenotype of mice lacking occludin, a component of tight junction strands. Mol Biol Cell, 11(12): 4131-42, 2000. PMID 11102513
- ^ Saito AC, Higashi T, Fukazawa Y, Otani T, Tauchi M, Higashi AY, Furuse M et al., Occludin and tricellulin facilitate formation of anastomosing tight-junction strand network to improve barrier function. Mol Biol Cell, 32(8): 722-738, 2021. PMID 33566640
- ^ O'Driscoll MC, Daly SB, Urquhart JE, Black GCM, Pilz D, Brockmann K, McEntagart M, Abdel-Salam G, Zaki M, Wolf NI, Ladda RL, Sell S, D'Arrigo S, Squier W, Dobyns WB, Livingston JH, Crow YJ. Recessive mutations in the gene encoding the tight junction protein occludin cause band-like calcification with simplified gyration and polymicrogyria. Am J Hum Genet, 87(3);354-64, 2010.PMID 20727516
- ^ Kitajiri S, Katsuno T, Sasaki H, Ito J, Furuse M, Tsukita Sh. Deafness in occludin-deficient mice with dislocation of tricellulin and progressive apoptosis of the hair cells. Biol Open, 3(8): 759-66, 2014 PMID 25063198
- ^ Ploss A, Evans MJ, Gaysinskaya VA, Panis M, You H, de Jong YP, Rice CM. Human occludin is a hepatitis C virus entry factor required for infection of mouse cells. Nature, 457(7231):882-6, 2009 PMID 19182773
オクルディン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 08:33 UTC 版)
最初に発見されたタイトジャンクションを構成する膜貫通蛋白質である。ノックアウトマウスでもタイトジャンクションが形成されるため、タイトジャンクションにおける正確な役割は不明な点が多い。クローディンファミリーと相互作用することでクローディンファミリー単独で形成するタイトジャンクションストランドよりも複雑なタイトジャンクションストランドを形成するという研究内容もある。オクルディンノックアウトマウスはタイトジャンクションを構成でき、生存可能である。しかし成長遅延となり胃の壁壁細胞は消失する。また緻密骨の薄化、脳内石灰化、精巣萎縮、唾液腺の線条導管細胞質顆粒の消失、コルチ器の有毛細胞のアポトーシスが認められる。オクルディンノックアウトマウスがしめす脳内血管内皮細胞周辺のカルシウムの沈着は金属イオンの透過亢進が血液脳関門で生じていると考えられている。コルチ器の有毛細胞のアポトーシスはクローディン14欠損によるDFNB29やトリセルリン変異によるDFNB49、アンギュリン2変異によるDFNB42に類似する。コルチ器の有毛細胞のアポトーシスはオクルディンの欠損のためトリセルリンがバイセルラータイトジャンクションに導入された結果である。 分子量は65kDで短いN末端細胞質尾部、2つの細胞外ループおよび長いC末端細胞細胞質尾部をもつ4回膜貫通型蛋白質である。オクルディンとトリセルリンとmarvelD3が相同性がありMARVELファミリー(またはTAMPファミリー)とよばれる。C末端細胞質尾部にはZO-1やアクチンと相互作用をするのに必要なOCELドメインとよばれる構造がある。オクルディンはbTJのリーク経路におけるmacromoleculeの透過とカベオリンエンドサイトーシスに関与している。培養細胞でオクルディンをノックダウンすると6.25nmほどの分子の透過性が著しく亢進した。3.6nm、70kDの分子の透過性を亢進させた別の報告も存在する。TNFは上皮細胞の透過性を更新させることが知られているが、その作用はオクルディンを介していると考えられている。オクルディンをノックダウンするとTNFを投与してもmacromoleculeの透過性が亢進しない。TNFによっておこるmacromoleculeの透過性の亢進はOCELドメインのアクチンやZO-1との相互作用が関与する。オクルディンとトリセルリンのダブルノックアウト細胞の解析から、オクルディンとトリセルリンが、クローディンが作るストランドの分岐点を安定化し網目構造の複雑性を維持する役割を持つ事が示唆されている。 大腸菌、デングウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、緑膿菌は感染時にオクルディンの発現を抑制、病原生物の侵入を容易にする。オクルディンは多くの病原微生物のターゲットとなっている。クローディン1とともにC型肝炎ウイルスの受容体である。培養細胞でオクルディンをノックダウンするとバイセルラータイトジャンクション内のトリセルリンが増加する。これはオクルディンがバイセルラータイトジャンクションからトリセルリンを排除していることを意味する。
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